今回は、右足を高く跳ね上げるチェ・ホソンに学ぶ、飛距離を伸ばすテクニックについて。連載【吉田洋一郎の最新ゴルフレッスン】とは……
【右足を使えば飛距離は伸びる】
2022年8月18日~21日に開催された「長嶋茂雄招待セガサミーカップゴルフトーナメント(北海道)」から、チェ・ホソン(崔虎星)が日本ツアーに復帰した。コロナ禍でビザが下りなかったため復帰が遅れたが、フォロースルーで右足が大きく上がり、左足を軸にして体がくるりと回転するスイングは健在だ。マンガに出てきそうな変則スイングだが、加齢によって飛距離が落ち始めた時期に、現在のスイングを身に付けたことで飛距離を大きく伸ばしたという。
チェ・ホソンのスイングには、飛距離を伸ばしたい人にとって重要なヒントがある。それは右足によって生まれる地面反力を使ってスイングをしていることだ。以前、大学の研究施設でチェ・ホソンの地面反力を計測する機会があったが、ダウンスイングの右足の踏み込みによって大きな地面反力を生みだしていた。簡単に真似できるスイングではないが、右足の使い方に関しては理に適っているといえる。
右足の踏みこみといっても、右足に力を入れて地面を踏めばいいというものではなく、踏みこみのタイミングや力を加える方向も重要になる。変則スイングに見えるが、適切なタイミングと使い方で右足を使っているため、しっかりボールをとらえて遠くに飛ばすことができるのだ。
アマチュアゴルファーのなかにはレッスンで「右足で地面を蹴ってください」という指導を受けたことがあるかもしれないが、右足の使い方は難しく、勘違いが生まれやすい。例えば、右足を蹴ろうとして体の正面に向かって右膝を突き出してしまうと、体が起き上がってしまい、体が回転せず手打ちになりやすい。また、ダウンスイングで目標方向に向かって地面を蹴ってしまうと、体が流れて振り遅れの原因となる。
一方で、体が動きすぎてしまう人には「右足を動かさずにベタ足にしてください」という指導をする場面もあるが、右足を動かさないことに意識が行き過ぎると、体を回転させにくくなり上半身や腕だけを使ったスイングになりやすい。
【右足親指を押し付けながら回す】
右足を使って飛距離を伸ばすために「親指を地面に押し付けながら回す」イメージを持つといい。右足の親指を地面に押しつけながら内側にねじるようにすると、右のかかとが上がり、右ひざが内側に曲がる。インパクト手前で自分から見て右ひざが「く」の字に折れ曲がっていれば、右足で適切に地面を押している状態だ。
上記の右足の使い方を身に付けるためのドリルを紹介しよう。ダウンスイングで右足を踏みこみ、踏みこんだ反動で右足を浮かせながらクラブを振り抜くという練習だ。チェ・ホソンのように右足を高く跳ね上げる必要はないが、フォロースルーで右足を浮かせながら、半歩ほど目標方向に踏み出してみよう。
このドリルに似た練習を6月の全米シニアオープンで優勝した、メジャー通算3勝のパドレイグ・ハリントンが行っている。彼の場合、フォロースルーで右足を大きく目標方向に踏み出しながらドライバーショットの練習をしている。この練習ドリルの成果で現在は米シニアツアーでドライバーの平均飛距離308.8ヤード(1位)を記録し、3年前よりも15ヤードほど飛距離を伸ばしてPGAツアー選手と遜色のないドライバーショットを放っている。
この練習では大振りはせず、スイングの振り幅は7割程度に抑えてほしい。バックスイングを上げたら、ダウンスイングで左腕が地面と平行になるあたりで右足を押しこみ、インパクトの前には右足を浮かせる。いきなり大きく右足を浮かせることは難しいので、最初は軽く浮かせるようにしてみよう。
簡単そうに思えるかもしれないが、右足を浮かすことはなかなか難しい。インパンクトまでずっと右足を踏みこみ続けていたり、踏みこむタイミングが遅れると右足は上がらない。ダウンスイング前半で一瞬だけ右足で地面を押し、地面反力によって自然に右足が上がるようになるまで練習場でドリルを続けてほしい。
下半身を使えず、飛距離をロスしているアマチュアゴルファーは多い。右足の踏みこみによって、体を速く回転させる感覚を身に付ければ飛距離は格段に伸びるはずだ。
連載【吉田洋一郎の最新ゴルフレッスン】とは……
世界No.1のゴルフコーチ、デビッド・レッドベターの愛弟子によるゴルフレッスン。多くのアマチュアゴルファーを指導する吉田洋一郎コーチが、スコアも所作も洗練させるための技術と知識を伝授する。