世界No.1のゴルフコーチ、デビッド・レッドベターの愛弟子・吉田洋一郎による、最新ゴルフレッスンコラム166回目。多くのアマチュアゴルファーを指導する吉田洋一郎コーチが、スコアも所作も洗練させるための技術と知識を伝授する。
【ゴルフスイングには3つの軸が存在する】
レッスンなどで「軸がぶれないように」と指導を受けたことがあるかもしれないが、ゴルフスイングには回転の軸が存在する。軸というと、背骨の軸をイメージしてコマのように回転するイメージを持つ人もいると思うが、ゴルフスイングには他にも軸が存在する。
バイオメカニクスの観点からゴルフスイングを分析すると、ゴルフスイングの軸には「垂直軸」「前後軸」「飛球線方向軸」の3つの軸がある。垂直軸はその名の通り地面に対して垂直な軸で、まっすぐ立ったときに頭から地面に貫く垂直な軸をイメージするとわかりやすい。多くの人はこの垂直軸や背骨を軸として考える傾向にあるが、垂直軸だけではスイングのメカニズムは説明しきれない。垂直軸に前後軸、飛球線方向軸という3つの軸が連動して、ゴルフスイングを構成しているのだ。
前後軸は体の正面から見たときにお腹側から背中側へ突き抜ける軸で、垂直軸とは直角に交わる。前後軸は縦の地面反力によって回転する軸で、前後軸の回転を速めることで肩の縦回転を促進し、飛距離を伸ばすことができる。
飛球線方向軸は両腰を結ぶ飛球線に平行な軸で、垂直軸や前後軸と直角に交わる。飛球線方向軸は前傾姿勢を保ったり、遠心力で引っ張られるクラブをコントロールする役割を持っている。
この3つの軸による回転がうまく噛み合わさることで、再現性が高く、飛距離の出るスイングを行うことができるのだ。
【両足を前後に動かして体を速く回転させる】
ゴルフスイングには3つの軸があることをお伝えしたが、特に重要なのが垂直軸と前後軸だ。どちらの軸をメインにするかで、スイングモデルが決まってくる。
前後軸をメインにしたスイングモデルは前傾角度をキープしたり、スクワット動作が入るなど、マスターするのに時間がかかる傾向があるが、垂直軸をメインにしたスイングモデルは難易度が低いのが特徴だ。垂直軸のスイングモデルは足裏の体重移動を行うことができれば可能な動作なので、歩くことができれば行うことが可能だ。体に負担をかけることなくスイングができるので、高齢で体が固くなった人や、筋力が弱い人でも速く体を回転させて飛距離を出すことができる。
この垂直軸を速く回転させることをイメージする際、竹とんぼをイメージすると分かりやすい。竹とんぼを飛ばすとき、軸となる棒を指先でつまんで直接回転させようとしても、軸を速く回転させることはできない。速く回転させるには手のひらで棒をはさんで、勢いよく手をこすり合わせるはずだ。
同じように、ゴルフスイングにおいて自分で腰や肩を一生懸命ねじっても、速く体を回転させられない。下半身を止め、上半身をねじって捻転差がつけば飛距離が出るというレッスンもあるが、人間はゴムではないのでねじり戻しで体が速く回転できるわけではない。むしろ、下半身が適切に使えないので非効率な動きになる。
このように、軸に対して両側から左右で異なる力を加えることで「トルク」が発生し、軸を速く回転させることができるのだ。
実際のスイングの垂直軸回転において、竹とんぼを飛ばす際の両手の役割をするのは両足だ。右足と左足をそれぞれ前後に動かせば、自然に体は回転する。具体的には、バックスイングでは右足のかかとと左足のつま先に体重をかけ、ダウンスイングでは逆に左足のかかとと右足のつまさきに体重をかける。このような動きを行えばトルクが発生し、無理に腰を動かさなくても自然に体が回転して効率的にスイングを行うことができる。
垂直軸回転を速める感覚を養うために、直立の状態で両足を使って体を回転させる感覚を身につけることから始めるといいだろう。まずは、まっすぐ立ち、腕を地面と平行に伸ばしてクラブを持って横振りのスイングを行う。両足を前後に体重移動させながら動かし、体が下半身から回転する動きをつかんでほしい。足と下半身から伝わった動きによって、自然と上半身とクラブが動くように連動させながらスイングを徐々に大きくしていく。慣れてきたら足裏の前後の体重移動を速め、体の回転速度を高めてスピードアップしてみよう。
垂直軸を使った回転はワンプレーンスイングやシャットフェースのスイングモデルの人にも必要な動きだ。足を使って体を速く回転させる感覚を身につけて飛距離アップを実現してほしい。