世界No.1のゴルフコーチ、デビッド・レッドベターの愛弟子・吉田洋一郎による、最新ゴルフレッスンコラム159回目。多くのアマチュアゴルファーを指導する吉田洋一郎コーチが、スコアも所作も洗練させるための技術と知識を伝授する。
ボールを凝視するのは正しいのか?
グリーン周りでダフったりトップしたりしてしまい、短い距離のアプローチに苦手意識を持つアマチュアは多い。そんな人は「ボールをよく見たほうがいい」「頭を残したほうがいい」というアドバイスを一度は受けたことがあるのではないだろうか。確かにボールを打つ前に体が起き上がったり、目標方向を見てしまうのなら「ボールをよく見なさい」というアドバイスも有効だ。しかし、そこまで極端な動きになっている人はごく少数だ。
「インパクトの瞬間までボールをよく見て、そのまま頭を残しなさい」などと、ボールを凝視して、打った後も頭を上げず前傾姿勢を保つようにアドバイスをすると、体の回転が止まり、かえってミスをしやすくなることがある。
プロのアプローチをよく思い出してほしい。ボールがあった場所を見続けて、前傾姿勢を保っている選手がいるだろうか。ほとんどと言っていいほど、体を起こして顔は目標に向かっているはずだ。2018年の全英オープンチャンピオン、フランチェスコ・モリナリを指導するショートゲームコーチ、ジェームス・リドヤードは「アプローチショットでは打ち終わった時に、顔と胴体が目標に正対するように打つ」と語っている。
頭を残す打ち方ではボールを打つことに意識がいってしまい、体の回転が止まって手先を使ってクラブをボールに当てに行きやすくなる。ドライバーであれ、アプローチであれ、ボールはスイング軌道の中でとらえることが大切だ。つまり、適切なスイング軌道を描いていれば、ボールを見ていなくてもゾーン軌道の中できちんとボールをとらえることができる。体と腕を同調させて体を回転させれば、自然と体も起き上がり、頭も上がる。頭を残そうとすることは、かえって体の回転を妨げ、スイング軌道を乱してしまうことになるのだ。
適切な軌道なら、ボールを見なくても打てる
体の回転をメインとしたアプローチを習得するための練習では、腰から腰の高さの振り幅でアプローチを打つ練習をしてみよう。サンドウェッジなど普段アプローチショットで使うクラブを使用し、アドレスは左足体重で構え、ボールポジションはセンターよりも左に置いて、ハンドファーストになりすぎないようにする。バックスイングでクラブが地面と平行になるあたりまで上げたら、左足を中心として体の回転でクラブを振る。肩から腰までの胴体部分を目標方向へ回転させ、頭もその動きにつられるようにして体全体を回転させる。フォローでは前傾角度をキープせず、体を直立させて目線も地面と平行にする。頭を残して前傾角度をキープしたときよりも、体を起こして回転したほうが体を回しやすく、楽にスイングできることがわかるはずだ。短い距離のアプローチショットでは、ボールを打つことではなく、体を回転させてクラブ軌道の中でボールをとらえることを意識すれば、ボールを見なくてもアプローチショットは成功する。
このアプローチ練習の際に気をつけてほしいのは、フィニッシュでおへそが目標を向くように体を回転させることだ。クラブヘッドも目標を向き、グリップの先が自分のおへそを指していたら、ほぼ満点をつけていい。
今までアプローチでボールをしっかり見ようと頑張っていた人は、少し意識を変えてみよう。ボールを見なくても、体を回転させて適切なスイング軌道を描けば、ダフりやトップなどのミスが減るようになる。手や腕ではなく、体の回転による再現性の高いアプローチショットをマスターしてほしい。