世界No.1のゴルフコーチ、デビッド・レッドベターの愛弟子・吉田洋一郎による、最新ゴルフレッスンコラム157回目。多くのアマチュアゴルファーを指導する吉田洋一郎コーチが、スコアも所作も洗練させるための技術と知識を伝授する。
右ひじを絞る動きはNG
ゴルファーは様々な悩みを抱えているものだが、3年ほど前にアイアンショットで、必要以上にボールが高く上がってしまう悩みを抱えているシングルプレーヤーが訪れてきたことがある。特にショートアイアンでボールが高く上がりすぎてしまうため、250ヤード飛ぶドライバーショットに比べ、ピッチングウェッジは95ヤードと飛距離が出なかった。また、ボールが高いため風の影響を受けやすく、強風の日はスコアを崩していた。本人は「ボールが上がりすぎる原因が分からない」と困っていたが、その原因は「アーリーリリース」にあった。ダウンスイングでクラブと腕にできる角度である「タメ」が早く解けて、インパクト前にクラブと腕が「くの字」になってしまう状態をアーリーリリースという。その結果、すくい打ちのような状態となってクラブにロフトがつきすぎてしまい、ボールが必要以上に上がってしまう。ボールが上がりすぎるだけではなく、スイング軌道の最下点が手前になるので、ダフリやトップなどの打点のミスもでやすい。
このようにタメがほどけてしまうアーリーリリースの原因は主に右サイドにある。切り返しで右手でボールを打ちにいこうとしたり、右手でボールを上げようとする動きによってタメがほどけてしまうケースが多く、初級者だけでなく上級者にも少なくない。
アーリーリリースを解決するためには、トップでつくられた腕とクラブの角度の「タメ」をダウンスイングでキープする必要がある。ある程度ゴルフ経験がある人の中には、意識的タメを作ろうと思っている人がいるかもしれないが、タメを作ろうと間違った動きをしている人は結構多い。その中でも右肘を絞って体に近づけようとする人がいるが、そのような動きだと実際は肘の角度がキープされるだけで手首の角度は変わらないどころか解放されやすくなる。その結果、クラブが振り遅れてダフリやプッシュアウト、ヒッカケの原因となる。
グリップエンドを動かす方向がポイント
ツアープロはダウンスイングで深いタメを作っているが、意図的にタメを深くしようとはしていない。クラブを適切な方向に動かすことで自然にタメができているのだ。タメがほどけてアーリーリリースになっている人は、適切なクラブの動かし方と力の加え方を覚える必要がある。
タメを作るために、ダウインスイングのグリップエンドの動きを意識してほしい。
具体的には、切り返しの直後にボールが飛んでいく方向とは反対の方向(飛球線後方)にわずかにグリップエンドを動かす。実際のスイングでは10センチほどでいいのだが、この動きを行うことで、シャフトと腕の間隔が狭くなり深いタメをつくることができる。つまり、右肘を体に引きつけるのとは逆に、手元を体から遠ざける動きをするということだ。
この動きを身につけるには、クラブを肩に担いで、グリップエンドを飛球線方向に引いてシャフトをスライドさせながらダウンスイングを行う練習をするといい。この動きを行うことでクラブを動かす方向が体感でき、タメの深い切り返し動作のコツがつかめるはずだ。この時に気をつけてほしいのは、飛球線後方にグリップエンドを動かす度合いだ。いつまでもグリップエンドを飛球線後方に動かすと、ダウンスイング後半でクラブをリリースできなくなりミスショットの原因になる。この練習では、最初にグリップエンドを飛球線後方に20センチほど動かしたら、リリースに向けてクラブを方向転換させてほしい。実際のスイングではこぶし一個分を目安にクラブを飛球線後方に動かすといいだろう。
トップで作ったタメをキープして、腰の辺りを過ぎたあたりから手首の角度をリリースしていけばしっかりボールの高さは適切になり飛距離も出る。正しいタメの作り方を身に付けて、力強いスイングを手にしてほしい。