世界No.1のゴルフコーチ、デビッド・レッドベターの愛弟子・吉田洋一郎による、最新ゴルフレッスンコラム128回目。多くのアマチュアゴルファーを指導する吉田洋一郎コーチが、スコアも所作も洗練させるための技術と知識を伝授する。
プロでも難しい手の脱力
アマチュアゴルファーは、「力を入れずに柔らかくクラブを握る」ように注意されるものだが、わかっていても脱力することは難しいものだ。クラブを速く振ろうとか、ボールを飛ばそうと思えば余計に手先に力が入ってしまう。ゴルフという競技では、手は意識しないと自然と力が入ってしまうもので、フルスイングだけではなくパッティングでも同様の傾向がある。特にパッティングの距離感が合わないという人は、手を使いすぎていることが多い。「このパットを絶対に入れたい」と思えば思うほど手に力が入って、強く打ってしまったり、逆にブレーキをかけてしまうことがある。これはアマチュアだけではなく、プロゴルファーでも同じだ。プロゴルファーの中には、手を使いづらいクロスハンドやクローグリップを採用したり、手を使う度合いが少ない長尺パターを使用するなど、緊張する場面でいかに手を使わないようにするか腐心している。
今回は手の使い過ぎを抑えることができる、自宅でもできるパター練習の方法をご紹介したい。パターの練習は、室内でも平らな場所があれば広いスペースは必要ないので、時間をつくってまめに取り組んでみてほしい。練習にはパターマットがあるといいが、なければカーペットの上でも、バスタオルの上でも構わない。パターで床を傷つけず、適度な速さでボールを転がすことができれば十分だ。
拝みグリップで手を使えなくする
手先を使わないパッティングストロークを習得するために、パターグリップを両手で挟むように持つ「拝みグリップ」で練習をしてみてほしい。ちょうど拝むときとは反対に、指先を下にして手のひらを合わせ、その間にグリップを挟み込む。両手の手のひらと、中指・薬指でグリップを挟むようにしてみると、より手先が使えなくなる。このグリップはパターを両手で挟んで支えているだけなので、手を使って打つことが難しくなる。手はパターが落ちないように支えているだけで精一杯な状態になっているはずだ。
このようにしてパターを持つと、手や腕だけではパターを左右に動かすことができず、上半身ごと腕を動かさないとしっかりストロークことができない。この練習をすることで、パッティングはもちろん、体を使うことを覚えることができるのでショットにもいい影響がある。
ストロークのポイントは胸や背骨を意識して、上半身の動きにつられて腕が動くイメージを持つことだ。上半身だけを独立して回転させ、振り子のように腕とパターをコントロールできるようにしたい。このような動きができれば、手はグリップを挟んでその場に留めておくだけでもパッティングストロークができることがわかるはずだ。
拝みグリップでの練習は、まずは素振りで感触を確かめることから始めてほしい。いきなりボールを打つよりも、まずは体の動きや手を使わないことを意識することから始めたい。いまいち体の感覚がわからない人は、ペットボトルや棒状のものなどを両手で挟んで、体の動きを意識してみることから始めてもいいだろう。
拝みグリップでの素振りに慣れてきたら、次は実際にパターでボールを転がしてみよう。素振りで行ったように、両手はグリップを挟むだけで動かす意識は持たず、上半身を回転させることでストロークを行う。この時、ボールを打つ意識は持たず、上半身の回転でパターを動かすことに集中して行ってほしい。今まで手先でボールを打ちにいっていた人は、パターがボールに当たった感触が物足りないかもしれないが、この感覚こそが手先を使わないストロークの打感だ。今までよりもインパクトの感触が弱く、ボールがゆっくりと転がっていく感覚が得られるだろう。この手先を使わない感覚をつかんだら、いつもと同じグリップでボールを転がしてほしい。拝みグリップと同じイメージでストロークをすることで、手先を使わず体でパターを動かしている感覚がつかめるようになる。
手先でクラブをコントロールしなくなれば、ボールを打ちにいくことがなくなり、ストローク軌道の中でボールを打てるようになる。そうすれば、ガツンとボールを叩いてしまったり、途中でスピードが緩んでしまったりすることがなくなり、いつも同じ強さでボールが打てるようになる。ボールが転がる速さや距離も一定になるはずだ。
この感覚が身につけば、あとは振り幅によって転がる距離を確認するだけ。振り幅で距離感を調整できるようになれば、ジャストタッチのパットが打てるようになるだろう。