世界No.1のゴルフコーチ、デビッド・レッドベターの愛弟子・吉田洋一郎による、最新ゴルフレッスンコラム107回目。多くのアマチュアゴルファーを指導する吉田洋一郎コーチが、スコアも所作も洗練させるための技術と知識を伝授する。
上半身の力みはスイングとスコアの乱れの原因に
ゴルフでは緊張しながらプレーをする状況が多々ある。特に朝一番のティーショットはプロでも緊張して力が入るものだ。ラウンド中も池越えのショットや、左右にOBゾーンがあるような難易度の高いホールでは、ミスを恐れる気持ちから緊張感が高まる。コース上の外的な要因だけではなく、ドライバーショットで飛距離を出そうとして自ら緊張を高めて力んでしまうこともある。
適度な緊張感を持つことは大切だが、過度な緊張により腕や肩などの上半身に力が入ると普段通りのプレーをすることは難しくなる。このような状況では、今まで練習で培ってきた実力を発揮できないだけではなく、信じられないようなミスをする可能性がある。今回は緊張する状況に対処するための力の抜き方を紹介しよう。
下半身を意識することで上半身の力を抜く
力を抜くことは意外と難しいものだ。「力が入りすぎですよ。力を抜いてください」とアドバイスをされても、どのように力を抜いていいかわからない人も多いだろう。緊張している時は意図せず腕や肩に力が入ったり、呼吸が速くなるなど体が無意識に反応しているため、意図的に脱力を行う必要がある。
緊張した状況では上半身優位になっていることが多いので、まず下半身に意識を向けてみるといいだろう。簡単なのはその場で何度かジャンプしてみることだ。LPGAツアーで活躍する畑岡奈紗選手はショット前にジャンプすることがあるが、下半身を使ったジャンプによって重心が下がり、上半身の緊張をやわらげることができる。ラウンド中でもできることなので、緊張している自覚がある時はボールを打つ前に軽くジャンプをしてみるといいだろう。また、ちょっとした待ち時間に相撲のように股割りをしたり四股を踏んでみたり、下半身のストレッチをしてみてもいい。このような軽い運動を行うことで、下半身に意識を向けて上半身の力を抜くようにするといいだろう。
実際のスイング動作の中で力を抜くために大事なことは、下半身を動かすことだ。下半身が動かないと運動連鎖がスムーズに行われず、上半身で代償動作を行ってしまうことがある。特にダウンスイングで下半身が動かずに上半身が優位になると、手や腕でクラブを下すためアウトサイド・イン軌道になりやすくスライスの原因となる。
このような傾向がある人は足踏みをしながら素振りをしてみよう。アドレスでスタンスを狭くして構え、始動で右足を一歩後方へ踏み出してからバックスイングを行い、ダウンスイングでは左足を目標方向へ踏み出してスイングをする。この時、足踏みと腕の動きは同時ではなく、足を踏んでから腕が動き始める。足の踏み込みにつられるように、体と腕が連動して動くイメージだ。
足踏みでうまくリズムがとれなかったら、左足と右足を交互に前に出し、歩きながらスイングしてもいい。このような素振りを行うことで下半身に意識が向き、肩や腕の力が抜けるとともに、下半身主導でスイングすることで運動連鎖が改善されスイングリズムもよくなる。
下半身に意識が向くようになってきたら、更に上半身の力を抜いていきたい。グリッププレッシャーを弱め、ヘッドの重さを感じながらクラブを振ってみるといいだろう。緊張するといつの間にかグリッププレッシャーが強くなることがある。クラブの重さを感じないということは、腕や肩に力が入っている証拠。ヘッドの重さを感じながら軽く素振りをすることで、力を抜くとともにヘッドを意識してスイングする感覚を取り戻すことができる。
力が入る体の部位は人それぞれ異なる傾向がある。今回は紹介していないが、呼吸法などを用いて緊張状態を緩和する方法などもある。是非、自分なりに緊張を解く方法を身につけてほしい。それをラウンド中の習慣にすれば、緊張で朝一番のティーショットに失敗してしまうということも減るはずだ。