世界No.1のゴルフコーチ、デビッド・レッドベターの愛弟子・吉田洋一郎による、最新ゴルフレッスンコラム89回目。多くのアマチュアゴルファーを指導する吉田洋一郎コーチが、スコアも所作も洗練させるための技術と知識を伝授する。
外出自粛は脱・手打ちパッティングの好機
新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、東京をはじめとした各都市で不要不急の外出自粛要請が続いている。週末に予定していたゴルフのコンペやレッスンを中止した人も多いだろう。こんなときは、政府や都道府県の指示に従って、不要不急の外出はやめて家にいるのが一番だ。
しかし、ただ家にいるだけでは退屈するし、運動不足にもなる。気分転換をかねて庭やベランダなどでゴルフの練習をしてはどうだろうか。さすがにドライバーを振り回すスペースのある人はそう多くないだろうから、パターがちょうどいいだろう。パッティングが苦手だという人は、この機会にぜひパッティングのコツをつかんでほしい。
パッティングが苦手な人の多くは、手首や手などの末端部分を使って打っているため、インパクトの強さやフェースの向きが不安定になってしまう。特に利き手である右手を使いすぎる、手打ちパッティングになっている。
こうした器用すぎる利き手に悩んでいるのは、何もアマチュアだけではない。よりデリケートなタッチが要求されるプロゴルファーは、アマチュア以上に利き手の動きを抑えるのに苦労している。パターにはさまざまな握り方があり、ユニークな握りをするプロもいるが、多くの場合、それは右手の動きを抑えるために編み出した握り方なのだ。
片手打ちで体を使ったストロークをマスター
手打ちパッティングを克服するために、片手打ちの練習をお勧めする。手打ちを撲滅するのに片手? と思われた人もいると思うが、手を器用に使えるようにするために片手で練習をするわけではない。片手だと手先だけでパターを毎回正確に動かすのは難しいので、上半身の動きを使ったストロークが身につきやすい。手はパターを持っているだけで、体を使ってストロークするという回路を作ることが目的となる。体を「主」、手は「従」として、再教育するのだ。
パッティングストロークには、胸のあたりを支点にする「振り子型」と、左肩を支点にする「直線型」の2種類のストロークがある。それぞれの打ち方によって支点や体の使い方が異なるが、どちらの打ち方でも腕とクラブを一体化させて、体主導でクラブを動かすことが大切だ。
まずは、左手―本でパッティングの素振りをしてみよう。普段使いなれていない左手では、パターをうまく操ることが難しく感じるだろう。この時、左手を動かしてストロークをするのではなく、上半身の動きに合わせて左手が動くようにしたい。最初はかなり上半身をゆするように感じるかもしれないが、体の運動量を多くすることを意識して、どのように体を動かすと左手とパターが適切に動くのかを確認してほしい。慣れてきたら左手一本でボールを転がしてみよう。ここでもボールをカップに入れることは二の次で、手を動かさずに上半身の動きでパターをコントロールすることに意識を向けてほしい。
左手一本でパッティングを行い、体を使ったストロークのイメージができたら、今度は右手で練習をしてみよう。左手同様に、右手はクラブを持っているだけで動かさない意識で行う。右手を能動的に使わなくても、上半身が回転すれば勝手に手とクラブは動くことを確認してほしい。上半身の動きが9割、右手が1割くらいの意識を持つことで「パターを持っているだけ」の感覚でストロークできるようになるだろう。
手先でストロークをする動きが染みついている人は、最初は意図せず手が動いてしまったり、体がうまく動かないかもしれない。そのような人は、右手が自由に動かないように左手で右手首をつかんで片手打ちを行ってみるといいだろう。手先の動きを抑えながら体が動く感覚がつかめるようになったら、片手打ちに移行すればよい。
片手のパッティング練習によって、体を使ったストロークのシステムと感覚を身につけることができれば、3パットも確実に減るだろう。