GOLF

2020.01.17

なぜ、どの理論でもゴルフクラブを握る力を柔らかくするように教えるのか?

世界No.1のゴルフコーチ、デビッド・レッドベターの愛弟子・吉田洋一郎による、最新ゴルフレッスンコラム78回目。多くのアマチュアゴルファーを指導する吉田洋一郎コーチが、スコアも所作も洗練させるための技術と知識を伝授する。

吉田洋一郎

ボールを打つのはクラブ

ゴルフスイングには数多の理論が存在するが、共通しているのが「グリップは強く握らず、柔らかく握る」という点だ。それはスイングの主役が体ではなく、クラブだからである。

私がスイングで大事にしているのは、形よりも動きだ。何度か紹介をしているが、テークバックやインパクトでどんなポジションに収めるかより、クラブの振りやすさや体全体が連動して動くことの方が重要だ。ある1点のポジションを正しくしても、それをつなぎ合わせて一連の動きにすることはできない。始動からフィニッシュまで3秒にも満たない動きの中で、体のポジションを意図的に作りながらスイング構築するためにはかなり専門的な知識が必要になる。

では、正しい動きはどのように身につけるか。語弊を恐れずに言えば、最初のうちは形なんてどうでもいい。それくらい、気持ちよく振ることを大切にしてほしい。なぜならボールを打つときに重要なのは、クラブヘッドを高速で動かすことだからだ(速くなければ遠くに飛ばないし、スピンがかからず高さも出ない)。形ばかりを気にしているとそれっぽい動きになるかもしれないが、ヘッドスピードを速くすることはできない。だからポジションの形で悩んでいる人は、その時間を「どうやったらクラブが速く動くか」ということに使って欲しい。主役であるクラブを動かすために、体をどう使うと良いか逆算して考えるといいだろう。

どこで遠心力が大きくなるかを把握する

クラブが主役のため、そのクラブが動きたがっている動きを妨げてはいけない。その力こそが最速のヘッドスピードを作り出す。スイングの前半部分は体がエネルギーを生み出すが、ダウンスイングの後半から体の動きはクラブを支えるだけだ。方向性を決める程度のハンドル的な要素が強い。

エンジンとなるエネルギーの源泉はいくつかあるが、外力(自分の筋力以外の力)である遠心力を効率よく使うことをおすすめする。クラブヘッドはトップからフォローにかけて、プレーヤーを中心に円弧を描く。重たいヘッド側に遠心力がかかって力のベクトルは外に外に向かおうとする。その力を逃さずに使えればヘッドスピードに置換することができる。

遠心力を生かすためには、クラブがより動くようグリップの握る力をソフトにしたり、手首やひじなどの関節を柔らかく使う必要がある。強く握ったり、関節を固めてしまうと動員する関節が減りヘッドスピードが出ないだけではなく、それがブレーキとなりクラブにかかった力が弱くなってしまうからだ。

一度利き手の親指と人差し指を離してスイングをしてみてほしい。多くのアマチュアは必要以上に利き手に力が入っている。特に利き手の親指と人差し指に力が入ることで、飛距離ロスやミスショットの原因となる。まずは素振りでクラブヘッドの重みやヘッドが走る感覚をつかんでほしい。今までに比べると力感が感じられず物足りなかったり、クラブが飛んでいきそうな不安を感じるかもしれない。しかし、その感覚こそがクラブが効率よく仕事をしている状態なのだ。慣れてきたらその感覚のまま実際にボールを打ってみるといいだろう。

スイング理論によって体の動かし方や力の伝え方に違いはあれど、クラブヘッドを効率よく動かすということは共通している。クラブに効率的な仕事をさせれば、楽に飛距離を出すことができるだろう。

TEXT=吉田洋一郎

PHOTOGRAPH=松川 忍

COOPERATION=取手桜が丘ゴルフクラブ

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