GOLF

2019.11.01

ゴルフ練習時間に制約のあるアマチュアが効率よく上達する「体と頭」の使い方

世界No.1のゴルフコーチ、デビッド・レッドベターの愛弟子・吉田洋一郎による、最新ゴルフレッスンコラム68回目。多くのアマチュアゴルファーを指導する吉田洋一郎コーチが、スコアも所作も洗練させるための技術と知識を伝授する。

吉田洋一郎

プロでも迷宮入りする理由

私は初めてレッスンを受けに来たゴルファーが上達するかすぐにわかる。上手くなるゴルファーは目的や目標が明確だ。長期的な視野を持ち、適切な考え方を持ってゴルフに取り組んでいる。皆さんが普段の仕事で行っているように、ゴルフでも上手くなるためにはゴールとプロセスを明確にして計画を立てる必要がある。行き当たりばったりの旅は思わぬ幸運に恵まれ面白いかもしれないが、ゴルフの場合は迷宮に彷徨って出られなくなる可能性が高い。

長期プランを立てる前にどのようなルートで上達するのかを決める必要がある。スイング構築の方法には大きく分けて「体験的学習から答えを導き出す方法」と「理論や法則に基づいて答えを導き出す方法」がある。

前者は帰納法「個別的・特殊的な事例から出発して、一般的・普遍的な法則を導く推論」、後者は演繹法「1つあるいは複数の前提から、論理法則や計算に基づいて、必然的な結論を導く推理」と呼ばれる。

シンプルに言うと「球を打って体で成功法則を見つける」か「頭を使って理論を学ぶか」とも言える。上達するためには片方に偏るのではなく、両方の順番やバランスが必要になる。

特に体験的学習のみで理論や法則を理解していない場合、深刻な不調に陥る場合がある。若くして成功したものの輝きを失い表舞台から消えるプロゴルファーが多いのはそのためである。多くの時間をゴルフに費やし小さいころから体験的学習を積み重ねているプロゴルファーは、一度歯車が狂うと元に戻ること難しくなる。新たな問題が出てきたときに今まで積み上げてきた体験的学習による成功法則だけでは問題解決をすることが難しくなるからだ。

病に侵されたスイングをなおす方法

練習時間に制約のあるアマチュアが効率よく上達するためにはどのような方法が有効なのだろうか。

「理論や法則を理解した後に、体験的学習によって個別の成功法則を見つける」ことが一番無駄がないように思う。

世の中には既にスイング構築の方程式や答えが存在する。それらを専門家から学び、理解したうえで自分のスイング構築に取り組むといいだろう。

あまり現実になってほしいことではないが、病気になった時あなたはどうするだろうか。まずは病院へ行き自分がどのような状態にあるか現状を把握してもらい、ゴールを決めて治療プランを立ててもらう。そして地道な療養生活を行って回復への道を一歩ずつ進むことだろう。自分で医学や手術の方法を学ぼうとしたり、薬を開発しようとは思わないはずだ。

長期ビジョンに基づいて上達するためには知識と経験が必要になる。一から手探りでトライ&エラーを繰り返すことは時間と労力を無駄にするだけだ。

長期プランは専門家と一緒に立てるべきだ。人間は自分のことになると冷静に分析できなくなるし、効率的な選択肢も限られてしまう。自分で病気を治すより優秀な医師を見つけることに労力を割くことが大事なのだ。

日本人は努力や根性が好きだし、とにかく頑張ることが求められる場面が多い。しかし、まずは進むべき道を明確にしてから試行錯誤の取り組みを行うべきではないだろうか。

TEXT=吉田洋一郎

PHOTOGRAPH=小林 司

COOPERATION=取手桜が丘ゴルフクラブ

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