世界No.1のゴルフコーチ、デビッド・レッドベターの愛弟子・吉田洋一郎による、最新ゴルフレッスンコラム58回目。多くのアマチュアゴルファーを指導する吉田洋一郎コーチが、スコアも所作も洗練させるための技術と知識を伝授する。
パッティングは「動かさないところ」が大事
ゴルフは再現性のスポーツと言われるが、パッティングは特にその要素が強い。打つ距離は違えど、毎回ほぼ平らなライで打ち出す球を曲げる必要もないからだ。
同じ動きを追い求めるパッティングのストロークでは、動く部位を極力少なくしたい。動く部位が多いほど、ばらつきが出る可能性が高くなってしまう。そのため多くのツアープロが手首を固定し、下半身や頭を動かさないストロークを行っている。では必要最低限、動かすべき部位はどこなのか。それは肋骨部分にあたる胸郭だ。
イントゥインのヘッド軌道をイメージする振り子型ストロークの場合、胸や首の付け根を中心にシーソーのように肩を上下させるような動作を行う。一般的に「ショルダーストローク」と言われる動かし方だ。しかし実際にパターを持って「肩を上下させよう」とすると、肩以外の頭や上半身も動いてしまう。
そこで意識してほしいのが、支点だ。ショルダーストロークであれば、胸の中心部分がそれにあたる。体の前面側が意識しやすければみぞおち周辺を、背中側が意識しやすければみぞおちの反対側の背骨部分を支点として振り子の動きを行うとよい。
この支点と土台となる下半身さえ動かさなければ、後はリズムやヘッドのスピードのみに意識を集中しストロークをする。結果、胸郭だけが動くショルダーストロークを身につけることができるだろう
ショットは「動かす」部位を意識する
ショットの場合、「動かさない部位を意識する」のは逆効果となる場合が多い。ショットの場合は全身運動のため、下半身も頭も固定をして動きが小さくなるよりは、積極的に動いたほうが良い。形を気にして動きが小さくなったり、ボールに当てることに注力しがちなアマチュアは特にそうだ。
フルスイングではパッティングと違って多くの関節が動員され、様々な力が加わっている。そのためスイング中に最初から最後まで動かずにその場に留まる部位はない。また、垂直軸、前後軸、飛球線方向軸の3つの軸が組み合わさっているため、軸=背骨というようなシンプルな発想では対応しきれない。
そのため、スイングでは軸や支点などの「動かない部位を意識する」よりも、「動かす部位を意識する」とよいだろう。
アマチュアは手や腕などの上半身に力が入る傾向があるので、下半身に意識を持つことで力が抜け、スイング動作やリズムが良くなるだろう。また、下半身の使い方が改善されることで地面反力を効果的に使い飛距離を伸ばすこともできる。
自分の体以外に意識を向けることも試してみるといいだろう。特にオススメなのがクラブヘッドを意識することだ。クラブヘッドの重みやフェースの向きは、手に力が入っていては感じることができないので、クラブヘッドに意識を向けることで自然と余計な力を抜くことができる。更にクラブヘッドの動きに遠心力などの外力を感じることができればヘッドスピードが上がるだろう。
ショット練習の際には球筋に意識が向きがちなので、動きを意識する練習は素振りで行ったほうがよい。自分の体の内面やクラブに意識を集中して体を動かしたほうが、動きが身に付きやすくなる。
絶対に動かさない部位を意識するパッティングと、動かす部位を意識するフルスイング。練習によってそれぞれの意識を使い分ければ、技術の定着が早くなるだろう。