世界No.1のゴルフコーチ、デビッド・レッドベターの愛弟子・吉田洋一郎による、最新ゴルフレッスンコラム22回目。顧客の多くが国内外のエグゼクティブ、有名企業の経営者という吉田コーチが、スコアも所作も洗練させるための技術と知識を伝授する。
とにかく長いアマチュアのアドレス
ラウンドレッスンなどでアマチュアと一緒にプレーをすると、「さすがにプロはプレーが早いね」と言われる。「技術もあるし悩みが少ないから?」なんて言われることもあるが、とんでもない。上手い人はもっといるし、私だって思い通りにいかないときもある。ただアドレスに入ったら考えない。それだけだ。
プレーの遅い人のほとんどはアドレスの時間が長い。具体的にはスタンスやグリップを決めてアドレスに入った段階から5秒しても始動していない人は遅い部類に入るといってよいだろう。そういった人たちは、アドレスに入ってからも、体のポジションやスイングの動きについて考えている。思考すること自体は悪いことではないが、それはアドレスに入る前にやっておくべきことだ。プレゼンを始めた直後に、資料の出来不出来について考える人はいないだろう。プレゼンが始まれば内容を簡潔に思いを込めて伝えることに終始するはずだ。スイングもそれと同じにすべきだ。
体の動きや狙いに関してはセットアップする前に確認して、素振りの中で終わらせておこう。これだけでもアドレスの時間はかなり短くなるはずだ。
動き始めが最もエネルギーが必要
「アドレスが長いな」と思うプロでも、よく見ると完全に停止してはいない。細かな足ぶみをしていたり、小さくワッグルをしていたりする。完全に静止しないのは2つの理由がある。
1つ目は止まることで余計な力みが出てしまうためだ。ゴルフ雑誌の撮影などでアドレス、トップ、フィニッシュでまったく動かないで5秒以上キープするポーズを求められることがあるが体にとても負担がかかる。試しにアドレスでクラブを持って5秒以上じっとしてみてほしい。どんどん手や腕に力が入り、上半身の筋肉にも緊張感が走ってくるのがわかるだろう。このような状態からスイングをスタートしても良い結果は生まれないことは容易に想像ができる。
2つ目の理由は止まっているものを動かすときには、大きなエネルギーが必要になるためだ。完全に停止したアドレスから始動するのは、動きが小さく遅いためそれほどの力が必要ないよう見える。しかしダイナミックに動く切り返しやダウンスイングは、反動や遠心力といった自分の力以外のものを利用しているにすぎない。完全に停止をしてしまうと、そういった自分以外の力を利用することができなくなってしまう。動き出しで腕や手など意識的に動かしやすい部位から動かしてしまうため、再現性を低下させることにもつながる。
アマチュアも同じようにセットアップしたら静止をせずに、どこかしら動かしていたほうがよい。不慣れでどこを動かすべきかわからない人は、自ら簡単なルーティンを決めてそれ通りに動くようにしよう。お薦めは足などの下半身を足踏みするように動かすことだ。バックスイングのきっかけを下半身で行うことができるし、リズムもとることができる。
アドレスに入る前に考えておくべきことを決めておき、セットアップしてからは動作に徹する。この線引きができればアドレスの時間が短くなり、同伴者からも好かれるプレーヤーになるだろう。最初は不安かもしれないがアドレスでスタンス、グリップ、アライメントを整えたら3秒以内に打つように心がけることで意外とよい結果が出るだろう。