世界No.1のゴルフコーチ、デビッド・レッドベターの愛弟子・吉田洋一郎による、最新ゴルフレッスンコラム13回目。顧客の多くが国内外のエグゼクティブ、有名企業の経営者という吉田コーチが、スコアも所作も洗練させるための"技術"と"知識"を伝授する。
まずはオリエンをしてプレゼンを受ける
以前コーチをつけたほうが上達のためのお金と時間の節約になると説明した。
『時間と金の節約の無駄をなくす、非自己流のすゝめ』の記事はこちら。
では、いざコーチを探すとき、何を基準に人選をすれば良いのか。今回は失敗しないコーチの選び方をお教えしたい。
まずコーチを選ぶ際は必ず比較をしてほしい。気になる複数のコーチにオリエンをしてプレゼンを受ける。ビジネスでパートナーや代理店を決めるプロセスと同じだ。一人だけから話を聞いたのでは、その人が最適かどうか判断できないだろう。第一歩として体験レッスンなどでスイングを見せ、自分の目指していることなどを伝え、それについてコミュニケーションをとるべきだ。
見極める目と、解決の知識はあるか
コーチと話す際は3つのチェックポイントに絞って評価をすると良い。
まずはチェック能力があるか。スイングを見せた際に普段どんな傾向があって何が問題かをしっかりと指摘してくれるコーチはチェックする能力がある。漠然とした指摘だったり、「頭を動かすな」といった古くからある一般論を述べるようなら黄信号だ。
自分にとって思いもよらぬ指摘だったとしても、的外れではなく潜在的に隠れている部分を発見してくれている可能性もある。その場合は「なぜか?」としっかりと分析の理由まで聞き、深堀りをするようにしよう。その問いにロジカルに答えられれば問題ないが、浅い知識で指摘していれば明確な回答は難しいだろう。
そして、その見つけた課題を解決する方法を持っているかも重要だ。課題は見つけられたが、解決案を示せないのではお話しにならない。スイング理論を体系的に学んだ人であれば具体的な修正点を挙げ、そうすることでなぜ問題が解決するかをロジカルに説明してくれるだろう。
この時に修正点一つにつき修正方法を3パターン提案してもらうことをお薦めする。優れたコーチは一つの問題に対して10パターンは修正方法を持っている。自分自身の選択肢を増やすことはもちろん、コーチの知識と経験の度合いを計るためにも複数の選択肢を提案してもらうといいだろう。そしてそれに伴う効果と副作用の説明も受けたい。どのような効果と副作用があるかを見通さずに薬を処方する医師はいない。それと一緒でどのような症状がでるのかわからずにレッスンをするコーチに身をゆだねるのは非常に危険なことだ。
一つの理論に固執せず、複数のスイング理論を学んできた人はさらに良い。一つの問題に対していくつもの解決策を持っているため、プレーヤーに最善の方法を探しやすいからだ。
自らの体験ベースでレッスンをするコーチはあまりオススメできない。その人と自分とでは骨格や筋力が違うし、ゴルフのキャリアも異なる。「自分はこうやって成功したから」というものは、n数が1のデータでしかないためズバリ当てはまるとは考えにくいのだ。
コーチに今まで「どこで、誰に、どれくらいの期間、何を学び、いくら知識に投資したか」を聞いてみよう。寿司ネタやワインの産地がどこかと同じように、知識の仕入れ先を確認しておくといいだろう。動画やネットで学んだ程度ならアマチュアレベルだし、アメリカに行っていたと言っても半年間ミニツアーを転戦していた程度なら何も学んでないのと同じだ。
ここで紹介したことを全て実践すると少し嫌な客になるかもしれないが、一度スイングを変えると元に戻ることは難しいし、かなりの時間とお金を費やすことになる。病院で医師に手術を受けるのと同じくらいの慎重さでコーチ選びをすることをお薦めする。
最も重要なのは人となり
ここまで説明した「見極める目」と「解決の知識」はコーチにとって最低限の条件だ。この二つが欠けていたら、他のコーチを探したほうが良いだろう。
二つがそろっていた上で最も重要になってくるのは人となりだ。その人とウマが合うか、尊敬できそうか、円滑なコミュニケーションが可能かという部分だ。コーチとしていくら技術的な部分が備わっていても、横柄な態度だったりあなたを喜ばせ機嫌を取るだけのサービス業的な関係では上達への道は遠くなってしまうだろう。
スイングを変えて新しいことに取り組む場合、すぐには結果に結びつかない。最低でも半年以上の単位で、そのコーチと付き合っていくことになる。確かな技術を持ち、指導者として言いづらいことも口にできる、そんな関係を持てそうなコーチを探し当てたい。