世界No.1のゴルフコーチ、デビッド・レッドベターの愛弟子・吉田洋一郎による、最新ゴルフレッスンコラム11回目。顧客の多くが国内外のエグゼクティブ、有名企業の経営者という吉田コーチが、スコアも所作も洗練させるための“技術”と“知識”を伝授する。
上手くなりたい? 上手くなった気になりたい?
以前、私のところに「毎日欠かさず100球打っているが、70台が一向に出せない」というアマチュアが相談に来た。聞けばプロに習うことはせず、自己流で練習をしているという。その人とは縁があり私のレッスンを受けた後、3か月で70台を出すことができた。
毎日練習をすることはとても大事だが、1人でやっていては上手くなる可能性は低い。70台を出すレベルを目指すなら尚更だ。「今日も練習したな。着実に成長しているぞ」という満足感は得られるが、それは上手くなった気でいるだけだ。
なぜ自己流ではうまくなる可能性が低いのか。自分でスイングを変えることは、医師免許を持たない素人が手術をしているのと同じだからだ。しかも自らの体にメスを入れて。
一般のアマチュアはゴルフスイングの専門家ではないため、知識は乏しく経験もない。知識も点によるもので体系的には理解ができていない。例えば握り方をストロンググリップに変えたとしよう。フック系のボールが出やすいとされているが、ストロングに握ることでスイング軌道やリリースのタイミングが変わり、体の使い方まで変えなければいけない場合もある。ゴルフスイングはさまざまな部分が連動しているため、変化する場所が1カ所に留まることは考えにくい。私はクライアントにはスイングを変える場合「1つ変えると3つズレる」可能性があると事前に説明し、どのような副作用が出るかを明らかにしている。
もともとのスイングによってどんな効果や副作用が出るかは人それぞれで、この辺の見極めをしてクライアントに負担をかけずにスイングを修正するのはコーチの腕の見せ所だったりする。
ゴルフクラブも専門家が必要
練習で同じ動きを繰り返すことで再現性は上がるため、スコアがよくなることもあるだろう。ただあるレベルまで達した時にスコアの壁にぶつかる可能性が高いし、調子が悪くなった時にどのように調整や変更をしてよいか、アマチュアでは分からない。
だから目標達成のために不確実性が高い「自己練習」はおすすめできない。計画を設計して進捗を確認し、時に軌道修正をしてくれるコーチに伴走してもらうほうがよっぽどリスクが低い。コストの問題もあると思うが、長期にわたって上手くなるかどうかわからない練習に時間とお金を投資するほうが非合理的だ。
これはスイングだけでなくクラブ選びにも言えることだ。ドライバーだけでも毎年数十のニューモデルが発売され、それにシャフトを掛け合わせると数百の組み合わせになる(これまでのクラブを合わせれば数万通りは下らないはずだ)。人それぞれスイングや、フィジカルの能力は違うし、加齢によっても変わってくる。「新しいから」「有名なプロが使っているから」という理由で選んだとしても、まず自分に合ったクラブを手にすることはできないだろう。クラブもスイングも両方の知識を兼ね備えていて、総合的に判断してくれるコーチは数えるほどしかいない。それほどどちらも専門的な知識を有する能力なのだ。まずは上達のマイルストーンを引いてくれるコーチを見つけ、それからクラブフィッターにスイングを見せてフィッティングをするとよいだろう。その時、両者に自分がやっている取り組みを共有しておけば、未来のことも考慮したアドバイスを受けられるはずだ。
せっかく練習をしたり高いクラブを買ったりするのだから、上手くなった気で終わらず是非上手くなったという結果を手にしてほしい。