世界No.1のゴルフコーチ、デビッド・レッドベターの愛弟子・吉田洋一郎による、最新ゴルフレッスンコラム9回目。顧客の多くが国内外のエグゼクティブ、有名企業の経営者という吉田コーチが、スコアも所作も洗練させるための“技術”と“知識”を伝授する。
ゴルフスイングはトライ&エラーをしてはダメ?
私はアマチュアに個人のレッスンも行っている。ありがたいことにこうしてメディアで取り上げてもらえるためか、「吉田に習いたい」とご指名をいただくことも多い。そういった人たちからは、「これまでレッスンを受けてきたが上達につながらない」というフレーズをよく聞く。もっとも多い人でこれまで30人以上のコーチに習ってきたという人もいた。
「吉田なら何とかしてくれるだろう」という思いがあるようだ。
私も多くのコーチと同様にレッスン前にヒアリングを行う。そのなかで気になるのは、「いろいろ試している」かどうかということだ。
ビジネスをはじめ一般的には、トライ&エラーを繰り返すことで成長につながる。おそらく情報感度の高いビジネスマン諸兄は日常的に多くの情報をインプットし、筋のよさそうなものを「まずはやってみる」という事を繰り返しているはずだ。しかしことゴルフスイングに関してはこの「トライ&エラー→成長」という公式が当てはまらない。
吉田的「半年我慢の法則」
自分の上達のために情報を集めるのはとてもよいことだと思う。視野は圧倒的に広がり、意外な気づきも得られる。しかしそれを、すぐさま自分のスイングに取り入れるのは危険だ。なぜなら、スイングはやってみて合わなかったから元に戻してみようという原状回復ができない。新しい要素が入ったことで感覚が変わってくるし、元の動きを思い出したとしてもその通りに動きが戻るわけではない。
また、新しい動きを体に取り入れるためには量と時間が必要だ。前の動きと混在しないように体にしみこませるほどの素振りや打球練習を繰り返さなくてはならない。さらにはその動きに慣れるための時間も必要である。
私はわりと熱心に練習をするアマチュアでも、スイング改善の結果が出てくるには最低半年以上はかかると思っている。レベルや能力によっては年単位が必要な場合もある。例えばアプローチのちょっとした感覚を変えるのだって、ちゃんと打てるようになるまでには3ヵ月以上かかる。
複数人のコーチに習ったことがある人は、新しいことに取り組んだ後の結果の見切りが早い場合が多い。そもそも半年以上は必要なスイング改善の結果を、3ヵ月で判断してしまう。これでは取り組みの過程が上手くいっていたとしても失敗とみなされる可能性もあるし、仮に失敗だったとしても何がいけなかったのかの振り返りができない。そしてまた次のものを試してしまうので、前のトライ&エラーが活かされることもない(そもそもそれがエラーだったのかもわからない)。
追いかける理論は一つに絞るべき
だから大前提として飛距離を伸ばしたり、スコアをアップするのは中長期的なプロジェクトであることを認識してほしい。最初の数ヵ月でなかなかうまくいかなくても、すぐに新しい理論を試したりコーチを変えるのではなく、「今は一時的に悪化する我慢の時だ」と思うとよい。半年から1年経った時に結果が出ない、もしくは手ごたえを感じることができなければ、それは新しいことを試してみる時期と判断してもよいだろう。
しかしその際も振り返りは必ずしてほしい。それが次の取り組みの糧となるからだ。トライ&エラーが絶対にダメだというわけではない。だがそのサイクルを長く見たほうがよい。ゴルフの上達は急がば回れなのだ。