世界No.1のゴルフコーチ、デビッド・レッドベターの愛弟子・吉田洋一郎による、最新ゴルフレッスンコラム。顧客の多くが国内外のエグゼクティブ、有名企業の経営者という彼が、スコアも所作も洗練させるための“技術”と“知識”を伝授する。リーダーに欠かせない“周りから慕われる”ゴルファーになる方法とは?
スイングがあなたの印象を決める
なぜタイガー・ウッズは今でも米国で圧倒的な人気があるのか。
信じられないミラクルショットを放ったからだろうか。数々のメジャータイトルを手に入れたからだろうか。私はアメリカでコーチングを学んでいた時に、現地で何度もタイガーのプレーを目の当たりにして、彼が人々を魅了する理由を理解することができた。タイガーが人々に好まれるゴルファーである一番の理由はスイングが美しいからだ。もし、タイガーがジム・フューリック(変則の8の字スイングのアメリカ人ゴルファー)のスイングをしていたら、スーパースターにはなれなかったはずだ。
アマチュアの場合も同様に美しいスイングのゴルファーは周囲に良い印象を与える。例えスコアが悪くても、その日はたまたま調子が良くなかっただけと思われることもあるだろう。しかし、それとは逆に残念なスイングだと、いくらスコアが良くても「偶然スコアが良かったのだろう」と疑念を持たれてしまうこともあるかもしれない。
ゴルフにおいては、どのようなスイングを身に付けているかが、クルマや時計、スーツと同様に、あなたを印象付ける評価基準となる。常に周囲から注目されるエグゼクティブにとって美しいゴルフスイングは必須なのだ。
美しいスイングを身に付けるためには付け焼刃のワンポイントレッスンでは不十分だ。スイングを構築するための「スイング技術の知識」と「スイング構築のための考え方」という両輪が必要となる。さて、前置きが長くなってしまったが、この連載ではこの両輪をバランスよくお伝えし、一目置かれる“慕われゴルファー”になるための道を示す。ミシェル・ウィーらを指導し世界4大メジャータイトル21勝に貢献した世界No.1のゴルフコーチ、デビッド・レッドベターをはじめとする、世界のトップコーチから学んだことや私の経験を踏まえて導き出した、吉田流ゴルフ論をわかりやすく伝授したい。
美しいスイングは「静」の部分を整えることから始まる
美しいスイングを身に付けるための第一歩として、お気に入りのプロゴルファーのスイングをマネしてみることをお薦めする。その時に着目してほしいのがスイングの「止まっている部分」だ。
ゴルフスイングではアドレスの「静」の状態から、スイング動作の「動」の状態となり、最終的にフィニッシュの「静」の状態となる。一般のアマチュアは高速で動くスイングを肉眼で認識することは困難なため、止まっている「アドレス」と「フィニッシュ」を改善するだけでスイングの印象は大きく変わる。
プロとアマチュアの静止ポジションで一番違う点は「姿勢」だ。特に「骨盤の角度」に注目して見てみるといいだろう。日本人は骨盤が後傾しやすく、アマチュアの多くはお尻の位置が落ちて膝が深く折れ曲がったアドレスをしてしまう傾向にある。それに対してプロのアドレスは骨盤が前傾し、お尻の位置が高く膝の曲がりは少ない。
実際に鏡を見ながらプロのアドレスを再現してみるとその違いを認識できる。直立した状態から、膝を伸ばしたまま骨盤からお辞儀をするように前傾をし、最後に膝を軽く緩める。この動作だけで膝を曲げる意識がなくても骨盤と膝の間に角度が生まれ、プロと同じような適切な姿勢のアドレスができていることがわかるはずだ。
この骨盤から前傾した姿勢をアドレスからフィニッシュまで保つだけで、前傾角度の維持が行いやすくなるため、体の回転がスムーズになりクラブ軌道などにも良い影響を与える。
その結果、フィニッシュでもバランスよく立てるようになり、スイング全体の印象はガラリと変わる。
実際にクラブを持って、あなたのお気に入りのプロゴルファーのアドレス後方からの静止画と、鏡に映った自分のアドレスを見比べてチェックしてほしい。クラブを持つと今までよりも後ろに体重がかかっているように感じたり、前傾角度が起きているように感じるなど違和感があるかもしれない。しかし、その違和感よりも鏡に「プロっぽい」アドレスが映っているかどうかを基準にチェックをしてほしい。コースでも同様のアドレスができるようになると、見た目だけではなく飛距離や方向性も向上するだろう。