映画とファッションは深いつながりで結ばれてきた。今回は編集部が厳選した6作品をもとに、服の存在感が欠かせない映画を語る。【シン・男の流儀】
絶対的なこだわりは予算を超える
文無しギャンブラーのウィリーとエディが、壊れかけのクルマで旅へ。シナリオも派手ではなく、製作も超低予算で、ジム・ジャームッシュが使えたレンズはわずか2本。それでも、最もスタイリッシュな作品のひとつとなった。完璧な画さえあれば、映画はソフィスティケートされる。洋服も同じだ。このモヘアカーディガンは、一見みすぼらしくもあるが、完璧に構成されたスタイリングにより、モードにも劣らない存在に変わるのだ。
人も服もエイジング次第
絢爛(けんらん)なハリウッドの’60年代をタランティーノが再現した世界の中で、どの登場人物よりも不思議と、色落ちしたデニムを着たブラッド・ピット演じるスタントマンが最も輝く。アメリカン・ドリームが偶像とワーキングクラスの両輪で築かれることをその身で語る。ピットといえば’90年代にデニムのCMに引っ張りだこだったが、その頃よりもクールなのが恐ろしい。これこそが魅力ある男のエイジング。
男心はタイに表れる
〝黒〞を代表するデザイナー、エディ・スリマンとタランティーノは奇妙に符合する。アーカイブを昇華する創作が認められ、ともに専門教育を経ずに大きな仕事に抜擢。そして、ふたりは黒スーツに黒タイの魅せ方の天才だ。トラボルタ演じるヴィンセントは、殺し屋としてオンの時には、常にこのスタイリング。しかし、ボスの若妻を口説く夜は、ループタイを結びスリルが好きな〝カウボーイ〞に変身。男の心情はタイに表れるのだ。
先鋭的なデザインを残す
映画の中で不良を描くには、ファッションの存在が不可欠だ。『ゴッドファーザー』の巨匠・コッポラも例外ではなかった。モノクロで撮られた『ランブルフィッシュ』は、彼が思春期に熱中した不良映画をなぞる。しかし、ファッションだけは例外だ。今見ても古臭くないタイトなライダースに、ワンポイントのパッチ。先鋭的なファッションを着こなしたことで、マット・ディロンは不良のアイコンとなったのだ。
ただマスキュリンはもう古い
西島秀俊ほどシャツを着ている役者はいない……ような気がする。そんな彼は料理をする時もシャツ。仕事を定時にあがり、スーパーで食材を揃え、エプロンをつけ即料理。パリッとクリーニングされたシャツを、袖まくりでタックアウトした佇まいは、こなれた印象を与える。いわゆるダンディズムではない、ジェンダーを超えた現代的な価値観。この作品の西島秀俊は、新しい格好よさを提唱する。
llustration=うえむらのぶこ