スニーカーの価値は、もはやアート作品の領域にまで上昇。絵画などと同様に、老舗のオークションに出品されているのだ。そして、2次流通市場では、〝プレ値〞がすごいことになっている。

サンフランシスコで開催されたスニーカーオークションの下見会の様子。中央で白いキャップを被るのがサザビーズのブラーム・ウオッチャー氏。落札者はほかのアート部門に比べて若年層が多く、ほとんどが30代だとか。
今やスニーカーは絵画と並び、老舗オークションハウスのオークションに出品されている。現在の最高落札額は、日本円で約1億9800万円。今年4月に記録されたもので、価格も名画並みとなっている。
サザビーズがスニーカーに特化したオークションを初めて開催したのは、2019年の夏。ストリートウェアを扱うスタジアム グッズ社と連携し、これまでに製造されたスニーカーのなかから希少な100足を厳選して行った。なかでも、1972年製造のナイキの「ムーンシュー」は、当時のスニーカーオークション世界記録となる43万7500ドル(およそ4900万円)で競り落とされた。
サザビーズでスニーカーのオークションを主導してきたブラーム・ウオッチャー氏は、スニーカーを扱い始めた理由についてこう話す。
「時を重ねるにつれてかつてのモデルに対する需要が高まり、注目するようになりました。非常に可能性を秘めた市場で、まだ他のオークションハウスが未開拓な分野であることにも気づき、力を入れ始めたんです」
実際、今年9月だけでもサザビーズはサンフランシスコ、ニューヨーク、ロンドン、パリ、香港でスニーカーの下見会を開催。さらに年末までにはライブオークション、オンラインオークションを8回以上も開催する予定だ。実は今、スニーカーはサザビーズのなかで最も勢いのある部門のひとつであり、開催されるごとに平均55%の新規顧客を獲得しているのだ。
スニーカーの魅力について、ウオッチャー氏はデザインそのものがアート作品だと指摘する。
「特定の時代の勢いを取り入れていたり、時を超えて愛されるスニーカーのデザインは、文化的にも非常に重要なものであると位置づけています」
それを裏づけるかのようにロンドン・デザイン・ミュージアムでは、今年、世界的なスニーカーブームを紹介する展覧会「Sneakers Unboxed:Studio to Street」が開催されている。
今後はますます新規参入者が増えることで、価格は上昇し続けると語るウオッチャー氏。
「すべてのスニーカーは時の試練に耐えることを想定して作られてはいないので、特に昔のモデルの復刻スニーカーは引き続きトレンドになると思います」
アートとしてのスニーカーの価値はどこまで上昇するのだろうか?今後のオークションに注目したい。

Nike Air Jordan 1
Michael Jordan
Game Worn & Signed
$560,000(約¥63,000,000)
エア ジョーダン1は、最も文化的に重要なスニーカーのひとつであり、このモデルはマイケル・ジョーダンが1年目と2年目のシーズンに愛用したもの。実際に着用したものでサインが入っている。ドキュメンタリー『マイケル・ジョーダン:ラストダンス』が公開されたタイミングで落札された。

Nike Air Yeezy
Kanye West 〝Grammy Worn〞 Prototype
$1,800,000(約¥198,000,000)
2021年9月現在でスニーカーオークション史上最高落札額となる180万ドルを記録した、ナイキ エア イージー1のプロトタイプ。'08年2月10日の夜、カニエ・ウェストが第50回グラミー賞でのパフォーマンスの際に着用したものだ。

1972 Nike
〝Moon Shoe〞
in Deadstock Condition
$437,500(約¥49,000,000)
ナイキが1972年のオリンピックのトライアルに参加する選手のためにデザインした12足のうちの1足であり、唯一のデッドストック。'69年に宇宙飛行士が月に残した足跡とこのシューズの足跡が似ているため、ムーンシューと名付けられた。
【関連記事】
約400億円で会社を売却したスニーカードリーマー、アトモス社長のお気に入りスニーカーとは【アトモス本明秀文】