FASHION

2021.10.09

スタイリスト界のレジェンド大久保篤志による経営者変身術

社名どおり、次世代事業を次々と展開する企業、ネクスト ワンを率いる斉藤 徹社長。多くの芸能人や経営者のスタイリングを手がける、日本のスタイリスト界の草分け的存在である大久保篤志氏はその長所を見抜き、新たな存在感を引きだした。

NEXT ONE 斉藤 徹✕スタイリスト 大久保 篤志

固定観念にとらわれていた新しい自分との出会い

「鍛えられた素晴らしい体型です。事前に写真で拝見し、日焼けした肌や爽やかな印象から今回はラルフ ローレン パープルレーベルに決めさせてもらったのですが、体型的にも正解だったと思います」(大久保氏)

着せ付けを始めた大久保氏は、日頃からジムで鍛える斉藤氏の肉体を目にしてこう語った。アメリカのブランドらしい、絞りすぎない健康的で堂々としたシルエットを備えるラルフ ローレン。その最高峰ラインであるパープル レーベルの服は、極上の素材を駆使したエレガントでラグジュアリーな雰囲気が経営者にふさわしい。体型の面も含め、大久保氏のブランドの見立ては見事に的を射ていたといえるだろう。だが、大久保氏が店頭からチョイスしたストライプスーツに袖を通しながら、斉藤氏は体型と服選びについて、こんな葛藤を打ち明ける。

「ラルフ ローレン 表参道」で対面した斉藤氏と大久保氏。

「僕は身長が高く体型も大柄なので、否応なしに存在感が際立ってしまいます。だから、とくにビジネススーツなどは控えめで地味なものを選んでしまいがちなんです。経営者としては主張が強すぎるのも、やはりどうかと思うので。そういった控えめな服選びは、普段のカジュアルな服にも影響しているかもしれないですね」(斉藤氏)

強い存在感を発揮することは、確かに経営者としてはプラス面ばかりではない。そんな斉藤氏のために、大久保氏がラックから取りだしたのは、なんとパープルのヴェルヴェットスーツ。艶やかな存在感を漂わせるそのジャケットを斉藤氏の逞しい肩にかけながら、大久保氏はこうアドバイスを贈る。

「斉藤さんほどの体型なら、特にラルフ ローレンのようなテーラードウェアはとても着映えするし、活かさねばもったいない。こんなヴェルヴェットスーツを着こなせる人は、なかなかいませんから。常に見られている経営者の方々にとって身嗜みは必須ですが、さらに重要なのはTPOをきちんとわきまえ、場面に合った服を選ぶことです。そうすれば、経営者だからといつもスーツを着なくてもいいし、地味な服ばかり選ぶ必要もないのです」(大久保氏)

「大御所スタイリストに服を見立てていただくとは、光栄です」と恐縮しきりの斉藤氏だが、ウィットのきいた会話と柔らかな物腰で相手を緊張させず、またブーツの紐まで自身で結ぶ大久保氏の丁寧な仕事ぶりに感嘆。その熟練の服装術に耳を傾けていた。

日本の経営者=地味という固定観念。まずはそこからの脱却が未来を拓く鍵かもしれない。

「普段の自分ならまず選ばない華やかな服も、着ると案外派手にならず、お洒落に着れてしまう。知らなかった自分と出会えた気がしますね」(斉藤氏)

 

意思を感じつつ控えめな人前での在り方を体現

意思を感じつつ控えめな人前での在り方を体現
「私はプロ野球選手の田中将大(まさひろ)さんのスタイリングを担当しています。彼は恩師の故野村克也監督の“人前に出る際は必ずスーツにネクタイを締めろ”という教えを今でも守っている。その言葉どおり、経営者も人前ではやはりタイドアップが基本。ストライプ柄もダブルやピークドラペルでなければ強面(こわもて)にならず、色調をブルー系に絞れば控えめで、目上の人にも失礼になりません。ブルーのシャツは日焼けした肌にも似合います」(大久保氏)
スーツ¥259,600、シャツ¥59,400、タイ¥25,300、チーフ¥9,900、靴参考商品(すべてラルフ ローレン パープル レーベル/ラルフ ローレン 表参道 TEL:03-6438-5800)

男らしさだけを強調しないラグジュアリーな遊び着

男らしさだけを強調しないラグジュアリーな遊び着
編集部から大久保氏へのリクエストのひとつが、冬のリゾートスタイル。「遠出する際は長時間着ても疲れにくい服がベター。柔軟なスエードジャケットやカシミアニットのパンツなら申し分なし。メインカラーのオリーブは、斉藤さんのような鍛えた身体にこそ似合います。ソファに合わせたゼブラ柄チーフで遊び心も添えました」(大久保氏)
ジャケット¥616,000、カーディガン¥209,000、シャツ¥62,700、チーフ参考商品、パンツ¥73,700、ブーツ参考商品(すべてラルフ ローレン パープル レーベル/ラルフ ローレン 表参道)

華やかな場にリラックス感をもたらすクズしのテク

華やかな場にリラックス感をもたらすクズしのテク
「例えばパートナーを連れだっての外出は、やはり華やかに着飾りたいところ。深いパープルのヴェルヴェットスーツは光沢が美しく、レストランやバーの照明にはとても映えます。ただし、インナーはグレーのタートルネックでクズしを入れるのがいい。スタイルにスキができて、自分もパートナーもリラックスできるのです」(大久保氏)
ジャケット¥308,000、パンツ¥73,700、セーター¥145,200、チーフ参考商品(すべてラルフ ローレン パープル レーベル/ラルフ ローレン 表参道)

出張を軽快かつ洒脱にこなす白×ネイビー

出張を軽快かつ洒脱にこなす白×ネイビー
リモートワークが普及したとはいえ、現場に直接赴く出張は、経営者にとっては時に不可欠だ。「スーツよりも動きやすく、カジュアルよりもきちんと見えるジャケパンが出張には最適。白を基調に動きやすいネイビージャケットを合わせた、ラルフ ローレンらしい爽やかなスタイルで組んでみました。斉藤さんは白パンに抵抗がないようですが、気恥ずかしい場合はホワイトデニムか色落ちしたジーンズでも軽快に着こなせます」(大久保氏)
ジャケット¥308,000、Tシャツ¥24,200、パンツ¥55,000、スニーカー参考商品(すべてラルフ ローレン パープル レーベル/ラルフ ローレン 表参道)

 

TORU SAITO

TORU SAITO
NEXT ONE 代表取締役社長。1982年千葉県生まれ。2003年に外資系通信関連サービス企業に入社し、1 年目でトップセールスを記録し札幌支店長に抜擢。’07年に独立してネクスト ワンを設立する。インターネット関連事業のほか、注目度が高まる自社の電力小売事業「新日本エネルギー」など多角的な事業を推進。

ATSUSHI OKUBO

ATSUSHI OKUBO
1955年北海道生まれ。’79年に男性誌『ポパイ』のファッションディレクター北村勝彦氏に師事し、’81年に独立。以降、数多の著名人を手がけるスタイリスト界のレジェンド。自身のブランド「スタイリスト ジャパン」も展開中。

DIRECTION=島田 明

TEXT=竹石安宏

PHOTOGRAPH=前田 晃

STYLING=大久保篤志

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