世界が認める伝説のギタリスト、ジェフ・ベックと、ハリウッド・ヴァンパイアーズのシンガー/ギタリストとしても活躍する俳優のジョニー・デップがタッグを組んだアルバム『18』が発売された。
ジェフ・ベックのストラトキャスターの音が美しいアルバム『18』の種子は、2016年の両国国技館でまかれていた。来日したジミー・ペイジが1曲も演奏せずに来場者を失望させたあの「THE CLASSIC ROCK AWARDS 2016」だ。ステージで現役感100%で演奏したジェフの楽屋をジョニー・デップが訪ねて、意気投合。約3年をかけてレコーディングされたのだ。
まず’20年、ジェフとジョニーは、ジョン・レノンのカバー曲「孤独」を発表した。ビートルズ末期のジョンが変人扱いされていた自分とオノ・ヨーコの孤独を歌った曲を新型コロナウイルスによるパンデミックで孤独に暮らす現在を時代背景にして演奏し歌った。
「僕はロックギタリストだけど、音楽表現はロックに縛られてはいない。ふだんは素晴らしいオペラを観ているよ」
かつてジェフにインタビューした時、「哀しみの恋人達」を指弾きしながらクラシックの影響を話してくれた。
実際’10年以降のジェフの音楽はスケールが大きく、物語性が感じられる。『18』でもジェフのストラトはオーケストラで風景を描くように響く。そしてジョニーは物語の語り部のように歌っている。
Kazunori Kodate
音楽ライター。『新書で入門 ジャズの鉄板50枚+α』『音楽ライターが、書けなかった話』(ともに新潮新書)、『25人の偉大なジャズメンが語る名言・名盤・名演奏』(幻冬舎新書)など著書多数。