幼少期に兄から「ジブリを見るな」といわれた漫画家・宮川サトシは、40歳にしてなお、頑なにジブリ童貞を貫き通してきた。ジブリを見ていないというだけで会話についていくことができず、飲み会の席で笑い者にされることもしばしば。そんな漫画家にも娘が生まれ、「自分のような苦労をさせたくない」と心境の変化が……。ついにジブリ童貞を卒業することを決意した漫画家が、数々のジブリ作品を鑑賞後、その感想を漫画とエッセイで綴った連載をまとめて振り返る。
『崖の上のポニョ』
私がジブリ作品のなかでも最も避けてきた作品『崖の上のポニョ』を40歳になって初めて鑑賞してレビュー書きました、読んでやってくださいませ。
冒頭から色という色が流れるように飛び交う映像美、海の中を描いているのにどんだけ色を使うんだよっていうぐらい、カラフルでサイケデリックなオープニング。
そんななかで、これといって何の説明もなく唐突におじさんの寝言(前衛的なファンタジー)が始まるんですが、このパターンに私もももう慣れてきたのか、いちいち意味を考えたり疑問を抱いたりすることなく、感覚で何が起きているのかを受け入れ続けた、そんな100分間でした。
マジックマッシュルームをかじりながら「となりのトトロ」を見たらこんな感じなんでしょうか……? マジックマッシュルームをたしなんだことがないので、かじるものなのかチュウチュウ吸うものなのかは知らないですが、巻き戻し再生することなくノーストレスで、色彩豊かな動く絵物語の情報がスルスルと頭の中に入っていく感じは、ちょっと気持ち良かったというか。
野外フェスで音楽を聴いては脊髄反射的にとりあえず「気持ちいい」って言っとけ的な人が若干苦手だったりするんですが……ポニョは繰り返し見れば見るほど、その気持ちイイ要素みたいなものが多く含まれている気がします。
続きはこちら
『耳をすませば』
今月はなんとなくパッケージから爽やかな夏を感じられそうな『耳をすませば』(以下「耳すま」)でジブってみました。
まず、カントリーロードに乗せて現代の東京の街並みの風景から始まるオープニングを見て、高さんっぽいなぁ……と私のジブリレーダーが感じました。あ、高さんというのは石橋貴明さんのことではなく高畑勲監督のことで、誰もそう呼んでないみたいなので自分は勝手に呼んでいこうと思っているのですが、宮さんが関わっている作品(監督は近藤喜文監督)にしては、いつものファンタジー感がなく、「おもひでぽろぽろ」とか「たぬき合戦」の時の高さんっぽいなと。もしくは洋楽の懐メロを使っているからか、野島伸司脚本の金曜ドラマを見ているような感じがしました。「未成年」とか好きでしたね…。
主人公・雫(しずく)たちが住む団地の描き込みが凄まじく、人々の生活が詰まってる感じというか、蟻の巣の観察キットで人の巣を輪切りして見ているような感じがして、これが四半世紀前のアニメなのか…とドキッとしました。
続きはこちら
『ホーホケキョ となりの山田くん』
新宿駅の西口と東口を繋ぐ連絡通路、その壁に貼られている高畑勲展のポスターを見るたび、あぁ行かなきゃ行かなきゃと焦っています。本当にジブリが好きだったらもうとっくに行ってますよね……私のジブリ熱、高畑熱はファッションジブリやビジネスジブリの類いなんでしょうか……。
高畑勲展は10月までやってるそうなので、必ず行ってここで報告させていただこうと思います。
今月はそんな高畑監督の作品の中でも、これまでずっと避けてきた「ホーホケキョ となりの山田くん」でジブりました。
私ぐらいジブリ漬けの生活を送っていると、パッケージを見ただけでだいたいの面白ジブリ指数がわかります。これは本当…正直言いますが、全然観る気がおきませんでした……。タイトルの「ホーホケキョ」の部分に、なんとも言えない地雷感が漂ってると言いますか…レビュー描くのがめちゃくちゃ不安です。
続きはこちら