「キャリアの原点のジャズが作品を情緒的に色づける」
スティングが異色のアルバムをリリースした。ロッスク、ジャズ、ラテンなど、18人とのこれまでのコラボレーション曲を集めた『デュエッツ』だ。
ジャズのレジェンド、ハービー・ハンコックといえば「マイ・ファニー・ヴァレンタイン」。スティングが歌う物語に、ハービーのピアノ、ドラマーのスティーヴ・ジョーダンによるブラシの演奏が鮮やかに色づけする。
ハービーのピアノは音と音の“間”が官能的だ。ベースはジョン・パティトゥッチ。スティングはシンガーに徹している。
スティングはポリスの前、ラスト・イグジットというジャズ・フュージョンのバンドでベースを弾いていた。
ソロデビューの時もジャズの腕利きでバンドを組んだ。そんな原点が感じられる。
エリック・クラプトンとの「イッツ・プロバブリー・ミー」でのスティングは歌とベース。
ギタリストに徹するクラプトンと、ドミニク・ミラーのブルース色の濃い演奏に哀愁を感じる。
そこに寄り添うのは、デヴィッド・サンボーンのアルト。ジャズシーンで“泣きのサックス”と言われている切なくはかない響きが、曲を情緒的にしている。
『デュエッツ』では特に、スティングのジャズへの思いを再認識させられた。
Kazunori Koudate
1962年東京都生まれ。音楽ライター。『ジャズの鉄板50+α』(新潮新書)、『25人の偉大なジャズメンが語る名盤・名言・名演奏』(幻冬舎新書)など著書多数。