4月28日発売! ソロアルバム『VIOLET』
シンガーの杏子が8年半ぶりのソロアルバムをリリースした。タイトルは『VIOLET』。
「今度のアルバムではさまざまなテイストの曲を歌っていますけれど、リスナーの皆さんには、杏子は変らずロックだな、と感じていただきたい」
と、杏子は語る。今作のプロデューサーはSuperflyや木村拓哉のアルバムを手掛けてきた多保孝一。
「最初、多保さんは私のいろいろな面を引き出そうとしてくれました。『Why Boy』や『Love Like Thunder』はR&Bやレゲエのテイストです。こういう曲はレコーディングでは初めてなんじゃないかな。シンガーとしての私の新しい扉を開いていただきました。でもアルバムの半分くらいは、ずっと私が歌ってきたロック色を出したかった。それは制作が進む過程で率直に伝えました。多保さん、ロックもよろしくね! と。
最近のグラミー賞の顔ぶれを見ると、ロック色が薄まってきているでしょ。世界のミュージックシーンの大きな流れは理解しているつもりだけど、私自身はシンプルなコードを使ってのギターのリフで歌いたい。その思いは、キャリアを重ねても変わっていませんね」
『VIOLET』は全体的に楽器の数が少ない。だからこそ杏子の魅力が引き出されている。ロックナンバー「The Black Knight」「Welcome to the Nightmare」、そしてバラードナンバー「the days ~幸せをどうか~」ではとくに、ハスキーな声が際立つ。
「『the days』のデモは多保さんが英語詞で歌っていて。第一印象で、レクイエムという印象を持ちました。そこから発想を広げて、作詞家のAKIRAさんに“恋のレクイエム”のイメージで歌詞を書いていただきました。終わった恋愛を自分でしっかり葬る歌になっています。私自身、とても気に入っているラヴソングです。この曲をアルバムのどのあたりにするか、曲順は検討に検討を重ねました」
レコーディングはコロナ禍の2020年を通して行われた。
「制作に入る直前にBAEBBEE BOYSのライヴを国立代々木競技場と現LINE CUBE SHIBUYAでやったことも、ロックを貫くというマインドに火が付いた理由の1つかもしれません。その後は新型コロナウイルスの感染拡大で、ステイホームになり、でも、ライヴをやる体力が衰えないように、夜マスクをしてのジョギングやウォーキングをしていました。
そんな生活だから、多保さんとのやりとりもZoomを使ったり、最初はメールでやり取りしていましたが、文字だと、たとえば歌詞についての細かいニュアンスが伝わりづらくて。でも表情を見て話すと、おたがいより多くを分かり合えます。直接話す大切さを再認識しました」
オフィスオーガスタの結束の象徴的存在
制作期間中には所属する事務所、オフィスオーガスタが主催する夏恒例の「Augusta Camp 2020」も開催。このイベントは例年、富士急ハイランドや横浜赤レンガ倉庫前特設会場など、野外の大会場で開催されている。しかし、2020年は配信のイベントになった。
「2020年は山崎まさよし君のデビュー25周年だったので、彼が暮らしていた横浜でバーン! と花火をあげて祝福したかったけれど、配信ライヴでのお祝いになりました」
オフィスオーガスタ所属アーティストは結束が固い。先輩アーティストがつくった音楽制作の環境で、後輩たちがデビューし、さらに実績を築いていくからだ。その象徴の1つが、ベテランから新人まで所属アーティスト全員が出演するオーガスタキャンプ。ファンは自分の好きなミュージシャンを目当てに会場を訪れ、そこで新人の音楽と出合う。
山崎まさよしのファンが、スキマスイッチも好きになり、秦 基博やさかいゆうも好きになる。そんなオフィスオーガスタのスタート時から、杏子は歌っている。事務所名が“オーガスタ”になったのは、杏子が8月生まれであることも理由の1つだ。
「オーガスタキャンプでは、所属メンバーの周年も祝ってきました。2020年でデビュー25周年を迎えたヤマは、このコロナ禍での周年が、若手ではなく自分のときでよかった、なんて殊勝なことを言っていたけれど、やっぱりお祝いですから。みんなで山崎の顔のお面をつけてサプライズをやりました」
1年に1度、事務所の大イベントのオーガスタキャンプは、シンガーとしての杏子にとって刺激になるイベントだという。
「もっともっと歌がうまくなりたいと思うから。元ちとせ、スキマスイッチ、秦 基博、さかいゆう……。みんなすばらしいシンガーです。事務所のメンバーと同じステージに立つと、シンガーとしてのモチベーションが上がります」
オーガスタ所属アーティストによるコラボレーション『Augusta HAND×HAND』でも、同じ感覚になったという。
「スキマスイッチと秦が福耳の『夏はこれからだ!』のパロディ『冬はこれからだ!』のミュージックヴィデオ制作でやりたい放題に遊んでいて、3人ではんてんを着て炬燵を囲んで、団らんするシーンがあったと思いきや、歌のシーンになると雰囲気ががらりと変わったり。歌詞も見事に「夏」から「冬」に転換されていて。あれは「やられたなぁ!」って思いました。
シンタ君(常田真太郎)のラップパートがあって、たった16小節なのにタクヤ(大橋卓弥)も秦も本気で何時間もチャレンジしたとのこと! お見事」
コロナ禍によってライヴが自由に行えなくなり、だから音楽の届け方にも工夫がほどこされるようになった。同時に音楽の価値や役割も再認識した。
「ミュージシャンは、医療従事者の方々のように直接的に人の命を救うことはできません。音楽がなくても、人は生命を維持することはできます。でも音楽には、疲れた心に安らぎをもたらす力が間違いなくあると思います。私の兄は医師で、コロナ禍で大変な緊張感の中で働いています。
そして、夜自宅に帰り、静かに音楽を聴く。すると、気持ちがほどけるというか、落ち着きを取り戻すそうです。私自身、耳から入ってくる音で気持ちは安定するし、免疫力を上げてくれる気がしています」