役者・滝藤賢一が毎月、心震えた映画を紹介。超メジャー大作から知られざる名作まで、見逃してしまいそうなシーンにも、役者のそして映画のプロたちの仕事はある! 役者の目線で観れば、映画はもっと楽しい!!
御年68歳のスーパーヒーロー!
滝藤のようにミドルエイジになると、当然のことながら、仕事に対しての責任感が年々増していきます。キャリアの長さに対しての実力をちゃんと出さないと!とか、私がこの作品の牽引役だから、とか、自分にプレッシャーをかけるわけです。そして、ハードルを上げ続けていると燃え尽き症候群になり、廃人と化してしまいます。
そんな時に、『ロボット2.0』を観ました。演技も設定もかなりざっくりしていてCGもクオリティが高いのか雑なのかよくわからない。タイトルでは、いきなり主役を"スーパースター"ラジニカーントとクレジットする始末。衝撃の1作です!
ラジニカーントは御年68歳。アクションシーンで走っていても、背中に板を入れていますか、というくらい上半身が動かないし、手も足も上がってない。正義のヒーロー感がまったくない……。しかし、その動きが逆にロボットっぽくて、とてもキュート。年相応で動きに無理がない。なるほど、自分の身の丈にあったことをすればいいんだとメッセージを送ってくれます。
私の敬愛するチャウ・シンチーが監督した『人魚姫』と同じ匂いも(笑)。終始、おちゃらけているけれど、環境問題については真実をついていて、真剣。あからさまに環境問題をぶっこんでくるあたりも気持ちがいい。
また、鳥を愛する鳥博士が、電磁波による自然環境破壊に怒りを抱え、怨霊と化し、インド中の13億もの携帯電話を引き寄せ、携帯兵器ならぬ、携帯電話鳥としてインドを攻撃していく内容を90億円かけて撮っていますから。いろいろ、理解に苦しみます(笑)。
しかし、これが信じられない面白さ! 個々の携帯が集まり、アジの群れのように形を自由自在に変え、自然環境に無関心な一般人を襲いまくる。もはや、それに立ち向かうラジニカーント演じるロボットより敵役に共感してしまいます。
もちろんインド映画ですからミュージカルシーンも満載。エンドロールなんて本編よりお金がかかっているのではないかという凝りよう。日本でリメイクするなら……やはり主役は大和田伸也さんでしょうか。
ロボット2.0
バスの車掌からインドの大スターとなったラジニカーントが最強ロボット・チッティと天才博士・バシーガランの1人2役を演じる痛快SFアクションドラマ。特殊メイクとアニマトロニクスは『アベンジャーズ』を手がけた特殊効果制作スタジオのレガシーエフェクツが担当したことも話題になっている。
2018/インド
監督:シャンカル
出演:ラジニカーント、アクシャイ・クマール、エイミー・ジャクソンほか
配給:アンプラグド・KADOKAWA
新宿ピカデリーほか全国公開中