ENTERTAINMENT

2019.06.25

ジーン・グレイ「不死鳥のように蘇る史上最強のミュータント」【マーベル女性ヒーロー図鑑】

国籍や人種、宗教、性別を超えて、多種多様なヒーローが活躍するマーベルの世界。特に最近は、女性ヒーローの活躍が目覚ましい。そこで、この連載では映画でも活躍する人気キャラクターから知る人ぞ知るマイナーキャラまで、強くて美しいマーベルの女性ヒーローをマニアックに紹介していきます。第3回は、映画『X-MEN ダーク・フェニックス』の公開のジーン・グレイです。

ジーン・グレイ

突然変異によって超人的能力を身につけたミュータントたちの物語

映画『アベンジャーズ/エンドゲーム』公開から2ヵ月弱。マーベルファンは、再びそわそわとした気持ちで毎日を過ごしています。6月21日、映画『X-MEN ダーク・フェニックス』が公開されました。ついにダーク・フェニックスの登場! ファンは心躍るばかりですが、知らない人にとっては、「何、それ?」でしょうね。

まずはここで、「X-MENっていうのもマーベルなの?」というライトなファンのために、簡単に説明しておきます。マーベル・コミックスは1939年に設立されたタイムリーコミックス社で創刊したコミックで、DCコミックスとともに"二大アメコミ"と呼ばれています。マーベルはアイアンマン、キャプテン・アメリカ、スパイダーマン、デッドプール、X-MENらを擁立。ヒーローが一堂に会するクロスオーバー作品「アベンジャーズ」もよく知られています。一方、DCコミックスを代表するヒーローはスーパーマン、バットマン、アクアマンなどです。人気ヒーローを多数抱えるマーベル・コミックスの中でも、X-MENはトップクラスの支持を誇ります。

X-MENは、突然変異によって超人的能力を身につけたミュータントたちの物語。ミュータントはその特異な能力のせいで人間から疎まれ、差別や迫害を受けます。一方、ミュータントの中にも超人的能力を使って地球を支配しようとするグループも出てきます。そうした勢力に対抗し、人間を守り、共存を図っていくためにチャールズ・エグゼビア(プロフェッサーX)は学園を作り、ミュータントに正しい能力の使い方を指導。そして、教育を受けたミュータントのチーム「X-MEN」が結成されます。

1963年誕生のファーストファイブの一人

X-MEN のメンバーは、時代によって変わります。1963年発行の『X-MEN』#1で描かれたX-MEN第1期チームは、サイクロップス、ビースト、アイスマン、エンジェル、そして紅一点のジーン・グレイの5名。ジーンは当時、マーベルガールというコードネームを名乗っていました。この5名は「ファーストファイブ」と呼ばれ、今でも別格的な存在です。

ジーンに能力が現れたのは、親友の死がきっかけでした。彼女がまだ幼い少女だった頃、親友のアニー・リチャードソンが交通事故で亡くなってしまいます。その様子を間近で見ていたジーン。そのショックによってジーンにテレパシー能力が目覚め、親友アニーの死を自分自身に起きたことと感じてしまいます。ジーンは極度の心的外傷を受け、3年間の昏睡状態に陥りました。

ジーンの両親は、彼女をチャールズ・エグゼビアの元へ連れていきます。チャールズはジーンの回復に努め、やがて彼女はチャールズが開設した「恵まれし子らの学園」の生徒になります。一般的な人間にはない特殊な能力をもった仲間たちとの出会い。普通じゃないのは、自分ひとりだけではない! ジーンの心は救われるとともに、X-MENの仲間をかけがえのない存在と感じるようになります。

ジーンと同じくX-MENの創設メンバー「ファーストファイブ」のひとり、サイクロップスとの間には恋が芽生えます。彼もまた自分の能力を制御できずに、苦悩していました。2人が愛し合うようになったのも、ごく自然なことといえるかもしれません。2人の恋はやがて結婚にまで発展します。

『X-MEN』#1。

1963年発行の『X-MEN』#1に登場したジーン・グレイ。彼女を含む5人の創設メンバーは「ファーストファイブ」と呼ばれている。

当初、ジーンはテレキネシスを使うだけでしたが、徐々に最強の能力者へと成長していきます。70年代に発行された『X-MEN』では、ジーンが圧倒的なパワーを得ていく様子が描かれています。『X-MEN』#101~#108では「フェニックス・サーガ」のストーリーが展開。ジーンを含むX-MENは宇宙ステーションでのミッションを終え、破損したスペースシャトルに乗って地球へ帰還を試みますが、致死レベルの太陽フレア放射線によって絶体絶命の危機に陥ってしまいます。

そんな危機をジーンが命懸けで救います。彼女はテレキネシスで太陽嵐を防ぎながらシャトルを操縦し、大気圏へ突入。スペースシャトルはケネディ空港をオーバーランしてジャマイカ湾に不時着します。生命維持室にいたX-MENのメンバーは無事でしたが。コクピットにいたジーンは太陽フレア放射線にさらされ、肉体を失い、純粋な思念体になってしまいます。でも、ジーンは死にません。彼女は自らを再構成して蘇り、不死鳥を意味する「フェニックス」を名乗ります。

しかし、それで「めでたし」とはなりません。1980年の『X-MEN』#129~#138で展開されたストーリーライン「ダーク・フェニックス・サーガ」で、ジーンの運命は急変します。X-MENの宿敵ヘルファイア・クラブとの戦いの中で、ジーンの力は暴走。別人格ダーク・フェニックスが覚醒し、50億もの人々が住んでいた惑星を破壊してしまいます。ジーンは、全宇宙にとって危険な存在となってしまいました。

シーア帝国に連行され、虐殺の罪を問われるジーン。彼女は本来の人格を取り戻しますが、自らの犯した罪の大きさに慄くばかり。さらに、自分がフェニックスの力を制御できないことを実感します。そして、彼女は自死を決意したのです。

歴史的名作、『X-MEN』#137

彼女の死が描かれた『X-MEN』#137。アメコミ史上に燦然と輝く名作といわれ、いま読み返しても、その衝撃はまったく薄れません。死を決意し、涙を流し続けるジーン。恋人サイクロップス(スコット・サマーズ)に、“I LOVE YOU, SCOTT. A PART OF ME WILL ALWAYS BE WITH YOU.”の言葉を残し、自らビーム砲を浴びて、真っ白に燃え尽きていく……。そして、最愛の人ジーンを失い、うなだれるサイクロップス。「ダーク・フェニックス・サーガ」の物語は何度読んでも飽きないばかりか、毎回、必ず泣いてしまいます。

『X-MEN』#137。

アメコミ史上、屈指の名作のひとつ、『X-MEN』#137。主人公であるジーン・グレイの死は、社会的なニュースにもなったという。

こうして死を迎えたジーンですが、彼女はX-MENに欠かせない存在。復活を願うファンの声に応えてジーンは蘇ります。1985年に作られたストーリーでは、『X-MEN』#137で死んだジーンは、自らをジーン・グレイだと思い込んでしたフェニックスの化身で、本当のジーンはジャマイカ湾に沈んだシャトルの中で生き続けていたという設定が用いられました。救出されたジーンはX-MENの一員に戻り活躍しますが、2004年の『New X-MEN』#150で死亡してしまいます。

X-MENに欠かせない存在であるジーン・グレイは復活を果たした。

X-MENに欠かせない存在であるジーン・グレイは復活を果たした。

2012年に始まった『All-New X-MEN』では、ミュータントのビーストが過去の世界から若き日のジーン・グレイを連れてきます。彼女は徐々に能力を開花させ、X-MENの重要なメンバーへと成長していきます。

『All-New X-MEN』。

2012年スタートの『All-New X-MEN』。過去の世界から来たジーンがチームに加わった。

何度でも復活するジーン・グレイは、まさにフェニックス。物語だけでなく、マーベルファンの心の中でも、ジーンは永遠に生き続けています。

 

ジーン・グレイ
本名/ジーン・グレイ(のちにジーン・エレイン・グレイ-サマーズ)
出身/アメリカ、ニューヨーク州ニューヨーク市、アナンデール=オン=ハドソン
身長/168cm
体重/57kg
瞳/グリーン
髪/レッド
能力/テレパシー、テレキネシス、アストラル投射

※マーベル公式サイトはこちら

TEXT=川岸 徹

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