『天空の城 ラピュタ』レビュー
先日、友人たちと鶯谷で肉を焼いて食べていた時のことでした。私がいかに『もののけ姫』が面白いかについて熱く……なんなら目の前の鉄板よりも熱を込めて語っていると、友人の一人であるアニメ監督のS君に「ってか、もうジブリ"童貞"じゃなくない?」と言われてしまいました。
……確かに。私は一瞬頭が真っ白になって、手に持っていたサンチュを肉も何も乗せずにそのまま食べていました、ウサギかよっていうね。
確かに今回のラピュタで6作品目、実際に6人の女性と関係を持っていたらそれはある程度のことは知り尽くしたそこそこのプレイヤーですよね。……ま、私はこれまでに一億万人は抱いているのでそれに比べたら大したことない数ですが〜ハハハ……。
……でも、ですよ。女性とジブリは違います。十ジブリ十ジブリ色、ジブリ10作品あれば10通りのジブリがある。私はそれを今回の「天空の城ラピュタ」で思い知らされました。まだまだ未熟なジブリ童貞による拙いジブリレビューですが……どうぞ読んでやってください。
これはおっさんになってから観るものではない気がする
正直に書くしかないのですが、自分みたいな40のおっさんにはこれ、なかなか観るのしんどかったですね……。とにかく長く感じたんですよ、校長先生の話より絶対面白い冒険活劇のはずなのに。初の”ジブリ眠気”まで感じてしまう始末。なぜなんでしょう……?
これまでの作品は好みは別れても、どれも見終わった後に自分の生活に触れてくる要素、日常とリンクする部分があったんですよ。紅の豚の各キャラクターの生き様とか、トトロのノスタルジックな子供の目線のアングルとか。作品を観終わってから数日間、生活の中にそういった自分の人生とリンクする要素に気づいて、それがその作品の余韻を生むと思うのですが、「ラピュタ」にはそういう体験があまり……というか、ほぼゼロだったんです。もちろん探そうとしました。ジョナサンのモーニングセットを食べる時、いつもは一番安いシラス丼セットを注文するところを、百円高いトーストと目玉焼きのセットを選んでラピュタパンを再現してみたりもしました。……でもダメ、普通に美味しいだけ。スープバーで底に沈んだコーンを取りすぎるだけ。全然映画が自分の血肉になる感じがしないんです。
正直悔しいです。「ラピュタ」はジブリファンの間でも人気No. 1だと聞いたことがあるし、Blu-rayに6,000円近く払ってるし、本当はもっと「カメラを止めるな!」ブームの時のような、全方位絶賛レビューを書きたかったのです。悔しくて3回続けて観たのですが、最後まで40のおっさんの心の琴線に触れることはありませんでした。
後学のためと、Blu-rayに6,000円近く払ってるというのもあるので、今回長く感じた理由等を自分なりに考えてみました。的外れだったらごめんなさい。
ラピュタに影響を受けた作品を見て育ってきたから?
空から(観月ありさ以外の)伝説の少女が降って来て、主人公顔の男の子が偶然居合わせ少女をキャッチする……まるでロールプレイングゲームのような始まり方のファンタジー。……そうなんですよ、ラピュタってたぶん、こういうロールプレイングゲームやファンタジーアニメの源流なんですよね、きっと。天空の城の佇まいとか中学の頃にスーファミでやった「聖剣伝説」を思い出したし、主人公パズーが海賊に乗せてもらってたハエみたいな乗り物と、それに乗ってのシータ救出劇とかはAKIRAでまんま見たことがある、もちろんラピュタが先。観たことないのに、個々のシーンはなんとなくラピュタインスパイア作品で知っている(知った気になっている)わけです。
すると自分の細胞のひとつひとつが体内で語りかけてくるんですよ。「元ネタとかはもうエエから、はよ最先端のを見ろ! 時間ないぞ! 死ぬぞ!」と。つまりラピュタは別に悪くないんです、むしろ偉大。悪いのは幼少期にラピュタを見せてくれなかった私の兄なんです。もしくはそんな捻じ曲がった兄を作り上げた資本主義社会。……資本主義社会め〜ッ!(資本主義は関係ない)
クライマックス級の見せ場が半分ぐらいのとこにあるという構成のせい?
ムスカ率いる軍の囚われの身となったシータ。シータの呪文で起動したロボット兵と、軍の攻防。炎上する軍の要塞。その炎上する要塞の塔の先に取り残されるシータと、ハエみたいな乗り物で駆けつけたパズーの救出劇。これぞ、ザ! クライマックス! 私は一回「停止ボタン」を押して、おしっこしてこようかと思ったんですよ。そしてデッキに表示されたタイマーを見て驚いたんです……やだなー怖いな怖いなーおかしいなー……だってまだ半分なんですよ……60分/120分。えっ! これ、多分絶対クライマックスじゃない……。稲川淳二さん風に言えば、こんな感じでしょうか。
で、このヒロインが囚われの身となるクライマックス展開が、後半の天空城にたどり着いてからももう一回あるんですね。(シータ、ヒロインとしてあまりキャラが立ってないわりに、勝気に飛び出すところもあってよく捕まるんですよ)この構成のせいなのか、2本分の映画を観ているような感覚に陥ったんですね。だから長く感じたのかなと。
単純に私がもうおじいさんだから?
世界を支配したくて飛行石に夢中になっているムスカ。彼が「この聖なる光……古文書にあった通りだ! 」とか興奮している様を、私が優しいおじいさんのような目で見ていたと、横で一緒に観ていた妻が言ってました。なんでしょう、疲れているんですかね……私。ムスカのように世界を支配したいだなんて思ったことないですし、軍の将軍のように天空城の金銀財宝にも全然興味が湧かないんです。先月食べたパンチョのナポリタン、あれをもう一回食べることの方が全然興味あるぐらいで……。これは完全なる「老い」です。ラピュタは悪くない、悪いのは私の「老い」なんです。
ラピュタには、私がどれぐらい老いているのかを説明するのに、ちょうど良いキャラが登場します。それは飛行石に詳しいポムじいさんです。
ポムじいさんに共感してしまうぐらい老いている私
逃亡中のパズーとシータがその途中、地下で出会うちょっとアレなおじいさんがポムじいさんなんですが、唯一あの人にだけ共感できた気がします。ポムじいさんがシータに「その石(飛行石の結晶)をしまってくれんか、わしには眩しすぎる」と本当情けないこと言うんですが、あのなんとも切ない哀愁を帯びたセリフが、猛烈に耳にこびりついたんですね。
そんなことをそんなに歳の違わない妻にしたら、ちょっとわかんないという様子だったので、皆さんにもわかりやすく言うと……あれです、私にとっての飛行石の結晶は、ポカ●スエットのCMや最近のミュージックステーションでよく見かける「高校生の集団ダンス」、まさにあれ。眩しすぎるんです。高校生が制服着たまま踊るキレの良いダンス、未来ある高校生とパズー&シータの若さ、若い性(セックス)、それが眩しくて仕方ない。自分がポムじいさんだったら、自分の持ってる石の知識も教えてあげないし、あの若い二人を見かけた時点でササッと岩陰に隠れたと思います。
人生初バルス
……すいません、ちょっと悲しくなってしまって、せっかく描いた漫画を載せるのを忘れておりました。今回は40歳で初めて”バルス”を知った瞬間をそのまま漫画にしてみました。
試しに全部パズーの妄想話だと思って観てみた
2回連続で観ていまいちピンと来なかったので……ちょっと味チェン感覚で、「この話は全部パズーの妄想話なんだ」と思いこんで鑑賞してみました。というのもほら、この話って全部パズーに都合の良いように話が進んでいるように思いません?
炭鉱で働く退屈な日々、突如空から自分と年の近い女の子が降ってくる。ちょうど自分の職場に着地しそうだし、いい感じの足場があったから女の子を無事にお姫様キャッチ。女の子は可愛いし従順、さっき買った肉団子も楽しみだ。しかも首からぶら下げてた光る石が、ずっと行きたかったガンダーラへと通じる鍵だし! フワフワ飛べておもろいし! ガンダーラに辿り着いた時も、自分と彼女を結んだ命綱がほどけない、固く結んだのは彼女。やったぜ!どさくさに紛れて密着できるぜ!……って、これもう、彼の妄想だろうなと。
ただ自分も彼と同じぐらいの歳の頃、こういう妄想をしてた時期あったなぁとも思うんですよね。いや、パズーは別に妄想してないんだけど。ちょっと彼ぐらいの年齢だった頃の感覚が戻ってきたというか、クラスの子で苗字が似てるってだけで運命を感じてしまう時期ってあったじゃないですか、あれです。
そう思うと、パズーがムスカに手切れ金として渡された金貨を捨てようとして捨てられなかったシーンとか、人間臭さをより感じることもできたりして、少しパズーを近くに感じられた気がしたんですね。
結論:絶対小学生ぐらいの頃に見るべきだった!
たぶん子供の頃に観ていたら、もっと素直に手に汗握ってアクションシーンを楽しめただろうし、ドーラの”おばさんなのに男気ある”っていうギャップにヤラれたり、他にもたくさん良いところに気づけたはず。
さて、次回のジブリレビューは?
過去最高にしょっぱいレビューになってしまい、大変申し訳なく思っております……。これに懲りず、レビューは続けていきます。次回からも読者の皆さまのご意見を反映して作品を選んでいきたいと思っています、次に観るべきあなたのおすすめ作品を教えてください。ツイッターやfacebook、Instagramなどで「#ジブリ童貞」のハッシュタグをつけて投稿していただけたら嬉しいです。メジャー作品が続いたので、次あたりは箸休めジブリでも良いかもしれません。