精力的に、ときに無我夢中に仕事を楽しんでいる男たちは、クルマとファッション、時計も愛で愉しんでいるもの。ブリキ玩具、骨董品や現代アート作品のコレクターとして世界的にも有名な「ブリキのおもちゃ博物館」館長の北原照久氏のスーパーカーライフを直撃!
北原照久氏「アストンマーティン DB11」
「高いものには物語や歴史があると実感します」
それは運命的な出合いだった。69歳の誕生日の1ヵ月ほど前。メルセデス SL55 AMGに乗っていた北原照久さんは、東京・赤坂にあったショールームでDB11を間近で見て「次乗るならこれだ!」と身体に電流が走る。
在庫なしで半年待ち、との答えにも「ないと言われると余計に欲しくなるのがコレクターの性」と情報網を張る。偶然、北原さんの佐島の別荘に来ていた友人N氏がアストン販売店の社長であることが判明するや即、お店へ。N氏が自分用に発注し登録寸前だった個体を「ディーラーが客にクルマを売らないのはおかしい」と、口説き落とした。2018年1月31日、69(ロック)歳の誕生日に納車。
横浜・山手の「ブリキのおもちゃ博物館」の館長であり、テレビ番組の『開運! なんでも鑑定団』で鑑定士を務める北原さん。古きよきもののコレクターとして「モノには所有することによって持ち主の思考や行動を変え、人間性や品格を上げる力がある」と考えている。
「アストンマーティンは美しく、上品なクルマ。運転していて、今までで一番楽しい。クルマの全方位から“余裕”が伝わってきて、ゆったりとした気持ちで走れます。スピードもものすごく出るけれど、アクセルを無駄に踏みこむことがなくなりました。生まれて初めて昨年“ゴールド免許”ホルダーに(笑)」
現在、ブリキのおもちゃ博物館ほか全国5ヵ所でコレクションの常設展示を行っている。しかし、公開しているのは所蔵品全体の約2割。膨大な数のブリキ玩具、モーションディスプレイ、ポスター、ラジオ、レコード、時計、万年筆……。その8割は広大な倉庫で眠っている。
夢は北原コレクションのすべてが一堂に会する“メガ・ミュージアム”を造ること。
「安いものには理由がある。高いものには物語や歴史がある。集めたものの数だけドキドキがある。そう信じての、53年間集めっぱなし人生です」
アストンマーティンつながりで新たな人脈も開拓できており、夢の実現に向けてDB11と駆けぬけていく。
Teruhisa Kitahara
1948年生まれ。ブリキ玩具のコレクターとして世界中に知られる。大学時代にスキー留学した欧州で古き佳きものを大切にする人たちの文化に触れ、蒐集を始める。’86年にブリキのおもちゃ博物館を開館。