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2022.04.19

現代アートコレクター・桶田夫妻が誰よりも積極的に展覧会を開くワケ──鈴木芳雄 連載「アートというお買い物」Vol.3

美術ジャーナリスト・鈴木芳雄が、”買う”という視点でアートに切り込む連載第3回。この十数年で日本有数の現代アートコレクションを築き上げた桶田俊二・聖子(あさこ)夫妻。彼らは展覧会を開いて集めた美術品を積極的に見せてくれる。そこには日本の現代アートシーンをもっと盛り上げたいという狙いがあった。最新の展覧会は骨董と現代アートの組み合わせを楽しむちょっと粋で企みを込めたものになる。連載【アートというお買い物】

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コレクターが現代アートシーンのなかでできること

コレクターには大きく2種類のタイプがいると言っていい。集めた作品を積極的に公開して多くの人に見てもらったり、研究に役立ててもらったりしようというタイプ。もう一つはコレクションは公開せず、自身で楽しむタイプ。限られた友人・知人にだけ見せるという場合もこちらに入る。

桶田夫妻はもちろん前者。どんどん見てもらおうというポリシーだ。現在、南青山のスパイラルビル1階のスパイラルガーデンを借り切って(2022年4月時点)、入場無料でコレクションを公開しているが、この展覧会は2019年から始まり、シリーズとなって今年で4回目となった。2020年には金沢21世紀美術館でも「The World:From The OKETA COLLECTION 世界は今:アートとつながる」というコレクション展を開催した。

ここまで積極的にコレクションをお披露目するのはどうしてだろう。

桶田俊二(以下、俊二) 最初の展覧会が2019年4月だったんですが、そのころの現代アートの国別の売上を見てみると、アメリカがトップで、中国が2位、そして英国と続いていくのですが、日本はどうかと見てみると、あまりにも(マーケットが)小さい。GDPとかに比して、これは寂しい数字だと。それを見たとき、愕然としてしまいましたね。

桶田聖子(以下、聖子) 日本ってコレクターさんが少ないのかしら、とか、日本ではアートはあまり売れてないのかしら、と感じたんです。

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背景にあるのは、ロッカクアヤコの立体作品と平面作品。

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ビューイングルームの一角には陶芸作品を飾っている。

俊二 そのデータからすると、現代アートの50%以上はアメリカで売れていて、次は中国で30%に近い20%台。

聖子 円グラフだったんですけど、日本は鉛筆みたいに細かったですね。

俊二 日本の経済規模からしたら、これはないよねって。アートが売れたり、コレクターが増えたりしなければ、現代アートシーンが盛り上がらない。自分たちのコレクションを見てもらって、興味を持ってもらって、アートのコレクションっていいかも、コレクターになりたいっていう人が少しでも増えればいいなと思ったんです。

しかも、スパイラルガーデンでは入場無料で見せている。コレクターがマーケットの拡大にまで貢献している。あの場所を借り切るだけでも費用がかかるし、美術専門の運送業者に運んでもらい、設置費用やら保険、受付スタッフの人件費など、全部、自前だ。

俊二 あそこ、入場料の取りようがないんですよね。2階にあるショップに行く人でエレベーターを使わない人にとっては通り道なんです。それでは入場料を取るわけにはいかない。でも、ああいう皆さんが行きやすい場所でやらなければたくさんの人に見てもらえない。見ていただかないと意味がないですからね。今でこそ、回を重ねましたけど、最初はうちなんてネームバリューがないから、やるからにはそういうところでやるべきだと思ったんです。

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取材中。
左作品/Backside works. 《ゴーストバスターズ red》 中作品/山口歴《REVISUALIZE No. 38》

同じ場所で規模も変えず、繰り返し、やり続けてきて、桶田コレクションの名もしだいに定着してきた。そして、今度は寺田倉庫が運営する、作家やコレクターから預かった貴重なアート作品を公開するミュージアム「WHAT MUSEUM」での展示である。WHAT MUSEUMではこれまでも、高橋龍太郎コレクション、大林コレクションなど、有名な個人コレクションの展示を行ってきた。

桶田コレクションの展覧会は「Mariage −骨董から現代アート−」展と題し、初出展となる作品や作家の新作を含む約40点を「身体」「モノクローム」「カラー」の3テーマに分けて展示する。もともと桶田夫妻のコレクションは現代アートを収集する以前、骨董の収集から始まった。李朝の陶磁器から、北大路魯山人、河井寛次郎、岡部嶺男など日本を代表する陶芸家の優品を数多く有している。それらと対比、対面する形で現代アートの名和晃平やKAWS(カウズ)、TIDE(タイド)、ダニエル・アーシャムらの作品を合わせて展示をする。

それぞれの作品が作られた国や時代、素材や手法も異なるさまざまな作品。共通点は桶田夫妻が自分の足と目を使い、好みで選んだということだけ。そういうものを何ものにもとらわれずに自由に組み合わせて展示するというのもコレクターが作る展覧会の楽しみなのである。タイトルは「Mariage」つまり結婚。骨董と現代アートの出会いだ。そんな組み合わせの妙を見せてくれる展覧会。ぜひ見てみたい。

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名和晃平《PixCell-Deer#48》©Kohei Nawa | Sandwich Photo: Nobutada OMOTE|Sandwich

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TIDE(タイド)《COMPO:L》©TIDE / ©HENKYO

曜変天目茶碗

桶谷寧《曜変天目茶碗》(Photo by Keizo KIOKU)

北大路魯山人

北大路魯山人《椿鉢》(Photo by Keizo KIOKU)

OKETA COLLECTION「Mariage −骨董から現代アート−」展
会期:2022年4月28日(木)〜7月3日(日)
会場:WHAT MUSEUM 2階
住所:東京都品川区東品川2-6-10 寺田倉庫G号
開館時間:11:00~18:00(最終入場17:00)
休館日:月曜(祝日の場合、翌火曜)
入場料:一般¥1,200、大学生/専門学生¥700、高校生以下無料
※桶田コレクションの展示は前後期に分けられ、テーマも展示も全面的に変わる。後期「YES YOU CAN −アートからみる生きる力−」展の詳細の展示については、後日、WHAT MUSEUMのWebサイトで発表される。

Shunji&Asako Oketa
長年、ファッションビジネスに携わってきたのち、骨董の収集からスタート。2010年、草間彌生の作品との出合いをきっかけに、コンテンポラリーアートの本格的なコレクションへと大きく踏み出す。日本の作家は草間彌生、村上隆、奈良美智、名和晃平といったトップ・アーティストたちからごく若い世代まで幅広く、また海外の作家の作品は、ゲルハルト・リヒター、ヴォルフガング・ティルマンス、ジョージ・コンドなど巨匠の逸品から、ファッション、ストリート・カルチャーとアートをまたいで活躍するヴァージル・アブロー、カウズといった作家たちの作品までがそろう。

Yoshio Suzuki
編集者/美術ジャーナリスト。雑誌、書籍、ウェブへの美術関連記事の執筆や編集、展覧会の企画や広報を手がける。また、美術を軸にした企業戦略のコンサルティングなども。前職はマガジンハウスにて、ポパイ、アンアン、リラックス編集部勤務ののち、ブルータス副編集長を10年間務めた。国内外、多くの美術館を取材。アーティストインタビュー多数。明治学院大学、愛知県立芸術大学非常勤講師。東京都庭園美術館外部評価委員。

TEXT=鈴木芳雄

PHOTOGRAPH=鮫島亜希子

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