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ART

2021.05.03

未来を創る、オフィスの新しいカタチ【森田恭通】

デザイナー森田恭通の連載「経営とは美の集積である」Vo.13。リモートワークが浸透し、ビジネスを取り囲む環境が大きく変化するなか、オフィスは働く機能のみの場ではない。「今までの概念を崩す、オフィスが誕生する、いや僕が創りたい!」と語る森田氏にとって、未来のオフィスとは?

森田恭通さん

変化しつづける“仕事の場”

今、これからのオフィスのあり方に少しずつ変化が生まれています。

オンライン会議や在宅勤務が当たり前になりつつありますが、働き方は変わっても根本的なものは変わらないと思うのです。集う人数は少なくなっても、実際に対面してアイコンタクトをしながらミーティングできる環境は必要ですし、なによりオフィスはビジネスのための重要な基地です。オフィスに来ることで全員の仕事に対するモチベーションが上がるべきだし、経営者側も社員のモチベーションを上げるオフィス環境を整えることが大切です。その要素としては、福利厚生として社員食堂の導入や社内コミュニケーション、空間デザインや展示するアートなどが挙げられます。僕自身は、オフィスデザインの依頼があると、社風やコンセプトを鑑みながら、働くスタッフのモチベーションが上がるデザインをまず考え、働くスタッフが胸を張ってお客様を迎えられるような場所を造りたいと常に考えます。

16年前にデザインを手がけたメガバンクでは銀行員がお客様のところに出向くのが当たり前だった銀行に、お客様に来ていただけるような最上のラウンジスペースを新たにご提案しました。内装に加えて、その空間を満たす音楽をDJの沖野修也氏が担当。その結果、移動に費やしていた時間を実務に使え、生産性が高まる。つまりいいオフィスだと“時間も買える”ということに気がついた瞬間でした。

これからの時代は、世界的にも都心に広いスペースのオフィスを借りる需要が減っていく可能性があります。それは見方を変えれば、好きな環境で働ける可能性も出てきたということ。たとえば県外の広い倉庫を借り、空間を味わいながら仕事をする。そんな選択肢も生まれるのです。先日GMO宮崎hinataのオフィスをデザインさせていただきましたが、地元を代表する肥沃杉(ひよくすぎ)や綾欅(あやけやき)などをふんだんに使い、他の都市のスタッフが羨むぐらいの環境を造ったと自負しています。仕事前後にサーフィンやトレランに行くスタッフがいると聞き、都心とは時間の使い方が違うなと、改めて魅力を感じました。

熊谷正寿氏のオフィス

GMOインターネットグループ代表・熊谷正寿氏の地域に根ざした企業をという思いを組み入れたオフィス。

一方で二拠点生活も注目され、別荘需要が非常に増えています。例えば別荘地のパブリックスペースにワークステーションを造る。昼間はカフェ、夜はバーとして営業し、自由に仕事ができるワークスペースがあれば、そこを拠点として働く人が増えていき、地域の活性化につながるかもしれません。僕らもそういう提案をする機会が増えていくでしょうし、積極的に牽引する必要があると思うのです。

都市以外に新しいカタチのオフィスを造る。非常に興味深いですし、絶対に面白いと思います。オフィスを都心に造る予算に、+αでショップや宿泊施設が造れるかもしれません。そこにこれまでの概念を超えたオフィスが生まれるのではないかという期待を持つと同時に、働く場所だけをオフィスに求めるのは、少なくなるのではないかと感じています。

ビジネスを取り囲む環境が大きく変化し、不確実で予測できない今。今までとは違う未来を描く、シフトチェンジのきっかけになるのではないでしょうか? 物事の見方や考え方しだいで可能性は無限に広がります。

 

Yasumichi Morita
1967年生まれ。デザイナー、グラマラス代表。国内外で活躍し、2019年オープンの「東急プラザ渋谷」の商環境デザインを手がける。その傍ら、’15年よりパリでの写真展を継続して開催するなど、アーティストとしても活動。オンラインサロン「森田商考会議所」はこちら

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連載
森田恭通/経営とは美の集積である。

デザイナーとして、多くの経営者の経営展望や理念、彼らの求める機能やニーズに応えてきた森田恭通氏。そのなかに見えたのは、経営者こそが持つ、オリジナリティ溢れるセンスと美学だという。「経営」と「美」の関係性、その先にあるものとは。

TEXT=今井 恵

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