時代の変化に伴い、アートにまつわる仕事は実に多様化している。業界に一石を投じるベンチャー企業や話題の新興ギャラリー、管理倉庫の舞台裏まで、アートの仕事の最前線に迫った。大特集「アートのお仕事」が掲載されるゲーテ2月号のご購入はこちら!
革新的なアイデアで日本のアート界を牽引
著名アーティストの作品に対して小口会員権を発行し、販売する。これまでありそうでなかったサービスを提供し、その革新的なビジネスでアート業界に衝撃を与えたのがアンドアートだ。その代表を務める松園詩織さんは話す。
「少額から作品のオーナーになれる会員権プラットフォームを、2019年にスタートさせました。業界でもまったく新しい試みだったので、受け入れられるかどうか読めませんでしたが、幸い、たくさんの方にユーザーになっていただけました」
現在、ユーザー数は7500人を突破。超有名作品のオーナーになれるほか、鑑賞イベントの特別優待、デジタル上や展示時の名前掲載、会員権売買による利益が得られることもあるなどのメリットが受けられ、気軽に本格アートコレクションを始められる新しいサービスとして、人気を博している。
取り扱い作品も着々と増えており、そのラインナップは五木田智央、バンクシー、アンディー・ウォーホル、バスキア、KAWSなど、現代アート史を彩る大物がずらりと揃う。
時として、数千万円もの価格がつくこともあるこうした著名アーティストの作品を、個人で購入できる機会は限られる。それがアートを「自分と縁遠い存在」と感じさせる要因になっていたのだが、アンドアートはそうしたアートの「敷居」を低くすることにひと役買っている。
「価格にかかわらず、経済的な関与が生じると人はその対象を『自分ごと化』しますよね。作品のオーナーになることは、アートを『自分ごと化』して、より身近なものと感じてもらうための第一歩として最適だと思っています」
話題の展覧会に足を運ぶ「アート好き」は昨今増えている。しかし、そこで終わってしまっている人が多いのもまた事実。
「もう一歩踏みこんでアートを愉しむには、見るだけでなく、“買う”のが一番です。鑑賞に留まらず、アートが購入対象として見られるようになると、その面白さは倍増します。好きな作品を自分が手に入れた時の興奮は何にも代え難いですし、アートとの向き合い方も確実に変わります。そのアーティストの活躍のニュースを目にすれば嬉しくなるし、さらに好きになる。
定期的に作品を眺めれば、最初気づいていなかった細かなテクスチャーを感じたり、作品からいくつものストーリーが想像できたり、受け取り方も変わっていくかもしれません。私たちはデジタル×新たなビジネスモデルで敷居を下げながら、“アートと個人の継続的な関係性”を提供することを目指しています」
アンドアート立ち上げ以前、松園さんはベンチャー企業2社で新規事業開拓に携わっていた。アートに関するキャリアはほぼ皆無だったが、敢えてこの業界で起業したのには、かねてから強い想いがあったからだ。
「一生付き合っていけることを仕事にしたい。そう思って、今の事業の立ち上げを決意しました。それに、イノベーションが起きづらい業界だからこそ、異業種が顧客視点でチャレンジする余白があるとも感じました。アートはこれから、人の暮らしになくてはならないものになっていくと確信しています」
アンドアートは今年、注目の若手アーティストの作品の実物を、10万円以下から購入できるアートEC「YOU ANDART」の運営も開始した。
「コロナ禍で室内にいることが多くなったり、リモートワークなどでプライベートスペースが人目に触れる機会も増えました。こんなご時世だからこそ、お気に入りのアートを手元に置いて、手軽に楽しんでもらえたらと思っています」
Policy of アンドアート
1.世界的な評価を受ける作品の小口会員権サービス
2.高額・大型作品でも少額からのデジタルシェアを実現する
3.オーナーになることでアートを自分ごと化させる
五木田智央、ジュリアン・オピーなど有名アートのオーナーに1万円からなれる!
Shiori Matsuzono
東京都生まれ。2013年にサイバーエージェントに入社し、新規事業責任者としてデジタルマーケティングに従事。’18年にANDART(アンドアート)を設立した。
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