GOURMET

2024.12.06

獺祭と、モナコ公国の宮廷料理のペアリングはいかに?

旭酒造に残る15年前に撮った1枚の写真。それは当時の社長であった桜井会長がモナコ公国のアルベール2世大公を表敬訪問し、獺祭を手渡したときのものだ。その時、アルベール2世大公と宮廷料理人のクリスチャン・ガルシア氏はこう言ったという。「獺祭だ。この酒は知っている。そして好きなお酒だ」と。そして15年後、その友好関係が岩国の地で花開くことになった。獺祭本社蔵の眼下に広がる川辺のテラスで、モナコと日本の文化交流を目的にした、獺祭のペアリングディナー会が開催。獺祭ラバーが見届けたのは、岩国に一日限りのモナコの海辺が出現した美しい一夜だ。

獺祭とモナコ公国との友好関係

世界に羽ばたくSAKE、獺祭だが、そのきっかけのひとつとなったのは、世界で最も多くミシュランの星を持つ伝説のシェフ、故ジョエル・ロブション氏とのつながりだ。

日本で獺祭と出合ったジョエル・ロブション氏はその美味しさに感動し、和食よりフランス料理のほうが獺祭に合うのではないか、という想いから2018年、獺祭とパリ8区に「Dassaï Joël Robuchon」を開く。フランスにおける日本文化への興味の高まりもあり、この試みはパリの食通達に歓迎をもって受け入れられた。

パリからの影響が強いモナコでも獺祭はその存在感を強めていく。モナコ内の名だたるレストランでは獺祭がワインリストにオンリスト。桜井会長が表敬訪問をした際には、すでにその名は知られる存在であった。

当時からモナコの宮廷料理人を務め、今回のディナーを担当したシェフのクリスチャン・ガルシア氏は、獺祭の味わいはもちろん、桜井会長との出会いが獺祭を特別なものにしたと語る。

「獺祭は私にとって特別な日本酒でしたが、今回、この岩国の風景や蔵をみて、獺祭の美味しさの理由を確認できました。桜井さんや獺祭を愛するみなさんに料理を提供できたことは、自分にとっても夢が叶った思いです」

モナコ宮廷料理人とのペアリングディナー

ガルシアシェフのもうひとつの顔は、宮廷料理人の団体「クラブ・ド・シェフ・ド・シェフ」の代表としての側面だ。この団体は、世界各国の国家元首・皇室/王室の専属シェフらによるもので、世界のトップの舞台裏の需要人物であるシェフに、新たな機会を創造し、各国の食を通じた文化交流の機会を促進するものだ。その一端として、世界の災害や貧困への支援も行い、日本では、東日本大震災や熊本地震の際、料理提供もサポートも行った。

「クラブ・ド・シェフ・ド・シェフ」創設者のジル・ブラガー氏は語る。

「宮廷料理人は大使をはじめ、関係者の健康を守るという大切な使命があります。災害支援もその延長として行っているものです。そして、もうひとつの使命は、その国の伝統料理を守っていくということ。フュージョン料理の流行はありますが、伝統料理は誰かが守っていかなければならないものだと思っています」

「クラブ・ド・シェフ・ド・シェフ」創設者のブラガ―氏。

今回のペアリングに関しても、日本を意識したというペアリングではない。あくまでも、ガルシアシェフの考えるモナコ最高の料理を獺祭と合わせるという意欲的なペアリングだ。料理は実際に公邸で提供されるメニューを再現したものだという。

日本酒だから叶う、寄り添うペアリング

乾杯酒として提供されたのは、桜井会長が旭酒造の最高の酒を出したいという想いから提供された「獺祭 磨きその先へ」。合わせるのは、コクと旨味が濃縮された宮崎産の熟成キャビア。最高の精米技術で引き出された獺祭の華やかな香りと柔らかさが、ウォッカなど他の蒸留酒とは違う、包みこむようなペアリングを実現している。

エレガントさと洗練されたクリアな味わいのある「磨き二割三分 遠心分離」には、旨味の強い雲丹と卵を、フラッグシップ銘柄である「磨き二割三分」には、伊勢エビから作られたムースを使ったマカロニのグルマルディ風を合わせた。それぞれの旨味に、獺祭のほのかな甘みと洗練された吟醸香が寄り添う、包み込むようなペアリングだ。

通常、日本酒では弱さを感じる牛肉に対しての興味深い組み合わせだったのが、アメリカ・アーカンソー産山田錦と現地の水で造ったアメリカ産の獺祭「DASSAI BLUE Type 35」。存在感ある米の風味がありながら、硬水によるキレを感じる「DASSAI BLUE Type 35」は、肉食文化があるアメリカにおける新たな可能性を感じさせるものだった。

デザートはモナコ産の柑橘リキュールを使用したモナコ皇室のシグネチャーデザートである「ザ・レモン」。純米大吟醸をベースにした「獺祭 梅酒」との組み合わせは、誰もがベストマリアージュとうなるものだった。

「獺祭がこれだけ幅の広い料理と合うのは、獺祭のお酒の根底にある“真に美味しい酒は、誰が飲んでも美味しいものである”という信念があるからだと思います」

そう語るのは、今回のディナー会に参加したマンダリン オリエンタル東京でシェフソムリエを務める加茂文彦氏。洗練されたエレガントな味わいは、誰しもに愛されるものであると力強く語る。

日本酒=和食の固定観念が強く残るなか、獺祭はその枠を超えるべく挑戦を続ける。この貴重な一夜の写真がまた数十年、新たな時代を開拓した記録として特別なものになることは間違いないだろう。

桜井会長
ブラガー氏から表彰を受けた旭酒造・桜井博志会長とガルシアシェフ。

TEXT=児島麻理子

PHOTOGRAPH=中野敬久

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