2016年から福岡のリゾートホテル「ザ・ルイガンズ.スパ&リゾート」を舞台に年1度開催されてきた食のコラボレーションイベント「ドリームダスク(DREAM DUSK)」。2022年最終回を迎えたはずのこのイベントが、2023年6月10日、11日にアンコール開催された。プロデューサーの本田直之氏が、この食の祭典への思いを語った。
利益などなくていい、すべては料理人たちの未来のために
「この日、この場所でしかあり得ない、夢のような夜を過ごしてもらおうと、2016年から始めたのが、『ドリームダスク』です。これは僕の大好きなシェフ5名に集まってもらいひとつのコースを作り上げてもらうイベント。
5人のレストランを一気にハシゴすることは通常できませんが、この夜だけは5人が作り出してくれる料理がひとつの流れになるんです。それはまるで夢のような瞬間ですよ」
このイベントのプロデューサーである本田直之氏が、そうコンセプトを説明するように、2日間にわたって開催されたのがこの「ドリームダスク」。
福岡のリゾートホテル「ザ・ルイガンズ.スパ&リゾート」を舞台に、昼は人気店が集うアウトドアランチが、夜は気鋭のシェフ5名によるコラボレーションディナーが来場者たちに振る舞われた。
毎年、採算度外視で豪華な食材が供され、さらにあり得ない豪華シェフの共演に、ディナーチケットは入手困難になるイベントだ。今年はさらにドン ペリニヨン100本が開けられるなど、贅を極める体験となった。
「採算を取ろうとすると、人々の記憶に残るようなイベントにはならない。それよりも来場者の記憶に強烈に残ることをやって、料理人たちのブランディングをしていくほうが、日本の料理人たちの未来のために大事です。
会場であるルイガンズも日本中からこの日のためにスタッフを集めて、キッチンのサポートをしてくれました。この2日間のためにすべての力を注ぎ、そして本当に記憶に残るイベントになったと思います」
超有名寿司職人が奇跡的に揃った夜
今回集まった5人のシェフは、福岡「天寿し」天野功氏、2023年パリに出店予定の「Blanc」佐藤伸一氏、目黒「鳥しき」池川義輝氏、恵比寿「TACUBO」田窪大祐氏、京都「肉料理 かなえ」北口亮祐氏、北口かなえ氏。さらにソムリエの大越基裕氏も招集された。
「『天寿し』は普段お酒を出さない寿司屋です。しかしこのイベントにはお酒が出ますので、天野さんは普段通りではダメだと、シャリからお酒に合うものをこの日のために開発してくださいました。そのために半年以上かかったと伺っています。その情熱には本当に頭が下がる思いです」
さらに大量のサマートリュフが用意され、本田氏自らも贅沢にトリュフを削って、2日間で合計330名に振る舞った。
そもそもこのイベントは「シェフが輝ける場を」という想いで、本田氏が始めたもの。その願い通り、ゲストにも多くのシェフたちが訪れた。
そして会場がもっとも盛り上がったのは、「天寿し」の天野氏が率いたチームの登場だ。
「『鮨 唐島』の唐島裕さん、『鮨 よし田』吉田健司さん、『寿司つばさ』の黄丹翼さんと、福岡の名店でチームを組んでいらしていただいたんです。さらに天野さんの息子さんの大輔さんもあわせて寿司職人5名の競演を見ることができた。こんなことは普段だったら絶対起こりませんよね。
そしてさらに、驚くことに『すし匠』中澤圭二さんもいらっしゃっていて、突然握り始めたんです。中澤さんはすしの世界のアイドルのような方。もう会場中が大盛り上がりでした」
さらに2日目のディナーでは福岡の「近松」の坂西信浩氏も登場、連日の大御所の出演サプライズに会場中が沸いた。
日中のランチでは、大阪の「焼鳥市松」「鳥しき」など焼き鳥の名店が集まった「焼き鳥達人の会」を含む、6店舗が出店。
普段ハシゴすることのできない店々をホッピングできる贅沢に、約1500名のゲストが酔いしれた。
夢のように咲いて消えていった、そんなイベントになった
2016年からコロナ禍を挟んで続いたこのイベント。本田氏は2022年の開催をもって最終回と決めていた。けれど2022年はまだ、飲食業界はパンデミックのダメージを引きずっていた。もっと派手に散ることができたのでは、と2023年の「アンコール」開催を決めたという。
「毎年、それこそ採算度外視で最高峰のものを作り上げてきたつもりです。正直もうこれ以上はない、というところまで。だからもう本当にこれで『ドリームダスク』は終わりにします。それこそ夢のように咲いて消えていった、そんなイベントになりました」
とはいえ、来年以降もランチの部は「HASHIGO : Restaurant Crawl」と名前を変えて開催予定。さらに規模を拡大していくというから、2024年以降も、福岡での食の祭典に期待したい。