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2023.05.16

“偉大なる女性”に捧ぐ、ヴーヴ・クリコの最高峰シャンパーニュ「ラ・グランダム 2015」

シャンパーニュ メゾンのヴーヴ・クリコが最高級シャンパーニュ「ラ・グランダム 2015」をリリースした。「偉大なる女性」に捧げられたそのシャンパーニュとは?

ヴーヴ・クリコ ラ・グランダム 2015

マダム・クリコの偉業

イエローのラベルでおなじみのシャンパーニュ メゾン「ヴーヴ・クリコ」。その最高級シャンパーニュが「ラ・グランダム」だ。ラ・グランダム、すなわち“偉大なる女性”とは、メゾンのビジネスを成功に導き、シャンパーニュの発展にも多大な功績を残した女性、マダム・クリコのこと。その尊顔はヴーヴ・クリコのシャンパーニュを開けるたび、ミュズレ(コルク栓を押さえている金属板)の上に拝むことができる。

というわけで、ラ・グランダムを知るには、まずマダム・クリコについて理解しておく必要がある。

バルブ・ニコル・ポンサルダン(後のマダム・クリコ)が、1772年創業のシャンパーニュ メゾンに嫁いだのは1798年。ところがわずか7年後の1805年に夫のフランソワ・クリコが急逝し、哀れ、27歳の若さで未亡人に。しかし、マダム・クリコは亡き夫が育てたメゾンを引き継ぐことを決意。当時のヨーロッパでは珍しい、ビジネスウーマンの先駆けとなった。現在のメゾン名、ヴーヴ・クリコの“ヴーヴ”とは、フランス語で“未亡人”という意味である。

さて、時はまさにナポレオン戦争の真っ只中。大陸封鎖の影響でメゾンは大ピンチ。ところが、ナポレオンの失脚と王政復古を予見したマダムは着々と準備を進め、大陸封鎖が解かれるやいなや諸外国への出荷を再開。ビジネスを大成功に導いたのだ。

マダム・クリコの偉大さはビジネスの功績にとどまらず、シャンパーニュ造りの歴史にもその足跡を残している。ひとつが、白ワインに少量の赤ワインをブレンドして造るロゼ・シャンパーニュの発明。もうひとつが、瓶の中に溜まる澱を除く際に必要となる動瓶台「ピュピートル」の開発だ。

そして、メゾンが創業200周年を迎えた1972年、マダム・クリコへのオマージュとして登場したのが「ラ・グランダム」。メゾンゆかりの8つのグラン・クリュ(特級畑)のブドウのみを用い、丹念に醸造される。

ヴーヴ・クリコ ラ・グランダム 2015

ヴーヴ・クリコ「ラ・グランダム 2015」
メゾンの歴史的な8つのグラン・クリュで収穫された、ピノ・ノワール90%、シャルドネ10%をブレンド。最低6年の熟成。ドザージュ6g/l。¥29,370(750ml/ギフトボックス入り)

ピノ・ノワールからストラクチャーを最大限引き出す

ヴーヴ・クリコはもともと、黒ブドウのピノ・ノワールを前面に押し出したシャンパーニュ造りで知られるメゾンだが、2008年ヴィンテージ以降、ラ・グランダムには、実に90%にもおよぶ比率でピノ・ノワールが使われている。一般にピノ・ノワール主体のシャンパーニュというと肉感的でまろやか。ところがラ・グランダムはこれらとは異なり、洗練されたエレガントなスタイルを貫いている。

「ヴーヴ・クリコではストラクチャーとテクスチャーという言語を用います」と語るのは、シェフ・ド・カーヴのディディエ・マリオッティ氏。

「ストラクチャーとはワインの背骨を指し、垂直性やテンション。テクスチャーとは肉付きであり、水平性、つまりまろやかさです。ピノ・ノワールから、ストラクチャーを最大限に引き出したシャンパーニュがラ・グランダムです」

ヴーヴ・クリコのシェフ・ド・カーヴ。

ディディ・マリオッティ/Didier Mariotti
ヴーヴ・クリコのシェフ・ド・カーヴ。モエ・エ・シャンドン、ニコラ・フィアットを経て、マムのシェフ・ド・カーヴに就任。2019年から現職。

今回新たにリリースされたラ・グランダムは2015年ヴィンテージ。「暑く、日照量に恵まれた太陽の年」だという。ブドウが収穫される8つのグラン・クリュのなかでも鍵を握るのは、モンターニュ・ド・ランス北部に位置するヴェルジーとヴェルズネのピノ・ノワールだ。

ところで、90%などと中途半端なことはいわず、100%ピノ・ノワールのブラン・ド・ノワールにしてしまえばいいのに……と考えるのは素人のあさはかさ。マリオッティ氏はこう説明する。

「モンターニュ・ド・ランス北部のピノ・ノワールは苦味を伴います。その苦味を和らげ調和させるには、甘味か酸味が必要。しかし、ドザージュ(糖分添加)は最小限にしたいので、酸味で補うしかありません。そのために白ブドウのシャルドネが不可欠なのです」

そのシャルドネのセレクトも考え抜かれたもの。ラ・グランダムにはミネラリーで長期熟成のポテンシャルを高めるメニルのシャルドネを必ずブレンドすることが決まっている。そしてピノ・ノワールとメニルのシャルドネの橋渡し役として、比較的まろやかなオジェのシャルドネをブレンドするのだという。

さて、かように練り上げられたフィロソフィーのもと生み出されるラ・グランダム。その2015年ヴィンテージは、ラ・グランダムならではのテンション、エレガンスに、太陽の年がもたらす寛容さや雄大さが加わり、素晴らしい調和を見せてくれる。爽やかな柑橘系のアロマに加え、白桃や洋梨などストーンフルーツのニュアンスも。そこに6年以上の熟成から得られるブリオッシュやトーストの香ばしさ。アフターにはミネラル、ヨード、塩味が現れ、ガストロノミックなシーンでの活躍がおおいに期待される味わいだ。

ラ・グランダム2015のお披露目が行われた軽井沢のししいわハウス。

「ラ・グランダム 2015」のお披露目が行われた軽井沢のししいわハウス。料理は2022年「アジアのベストレストラン50」で初登場ながら14位に輝いた、和歌山「ヴィラ アイーダ」の小林寛司シェフが担当。ヴーヴ・クリコの各シャンパーニュと、ローカルな食材を使ったガーデン・ガストロノミーとのペアリングが楽しまれた。

ラ・グランダム 2015に合わせた「ホワイトアスパラ/ビーツ/タマネギ/マスタード」の前菜。

「ラ・グランダム 2015」に合わせた「ホワイトアスパラ/ビーツ/タマネギ/マスタード」の前菜。

パッケージデザインはイタリア人現代アーティスト

そして、ひと言申し上げなければならないのがそのラベル。草間彌生とコラボレーションした2012年ヴィンテージの水玉ラベルも記憶に新しいが、2015年はイタリア人現代アーティストで、色彩の巨匠といわれるパオラ・パロネットがデザインした。

「パオラのデザインで私たちが主張したいのは、メゾンの精神にも通じるオプティミズムです」と、ヴーヴ・クリコCEOのジャン=マルク・ギャロ氏。

「今回、パオラにはラベルだけでなく、6色の色彩豊かなギフトボックスも手がけてもらいました。色使いがハッピーで、メゾンのポジティヴなメッセージを伝えられるでしょう」

ヴーヴ・クリコ社長。

ジャン=マルク・ギャロ/Jean-Marc Gallot
ヴーヴ・クリコCEO。カルティエやクリストフルなどラグジュアリー・ブランドのマーケティングを手がけ、ルイ・ヴィトンの北米支社長、欧州支社長などを歴任。2014年から現職。

このギフトボックスは、パオラの代表的作品で段ボールをモチーフとしたペーパークレイ"Cartoccio"シリーズと同じアプローチ。100%リサイクル可能な素材を用い、フランス国内で生産した、環境にもやさしい容器となっている。

最愛の妻、敬愛する母、そしていつもお世話になっている上司に。ラ・グランダムは「偉大なる女性」へ贈るのに、最もふさわしいシャンパーニュだ。

ラ・グランダム2015のラベルやギフトボックスを手掛けた、イタリア人女性アーティストのパオラ・パロネット。

「ラ・グランダム2015」のラベルやギフトボックスを手掛けた、イタリア人現代アーティストのパオラ・パロネット。鮮やかな色使いで、メゾンの哲学であるオプティミズムを表現する。

TEXT=柳忠之

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