断言しよう。今、自分のレストランリストに入れておくべきはカウンターの店だ。なかでもクリエイティヴなカクテルを提供するバーは絶対に行きつけにしておきたい。通えば通うほどパワーチャージできる、唯一無二のカクテルバーから、今回は群馬・前橋の「SHIROIYA THE BAR 真茶亭」を紹介する。
現代アートの巨匠による空間で、至高の一杯を五感で味わう
群馬・前橋。老舗旅館をリノベーションし、アートホテルとして再生され、世界で注目を集める白井屋ホテル。アートと建築が融合する空間のなかでも異色を放つ、小高い丘の建物にあるのが『真茶亭』だ。
現代美術作家の杉本博司と建築家の榊田倫之(さかきだともゆき)が手がけた空間は、柔らかく光を通す積層ガラスのファサードや水の流れを思わせる木目のスギ材のカウンターなど、素材の美しさが際立つ。
そして、この空間でグラスに細かな光を放ったり、鮮やかなひと筋の液体を流しこんだりと、アートピースのようなカクテルを提供しているのが、世界を舞台に活躍してきたバーテンダーの木村堅(つよし)氏。国内外で多数の受賞歴を誇り、欧州最大級のバーと酒飲料の見本市で「今、最も注目すべきアジアのバー文化の担い手」として紹介された木村氏が、一客一亭の精神をもって挑み、週末に6席だけもてなす。
この『真茶亭』のために木村氏がそろえたのは、自身が海外でも提供していたクラシックカクテルのアレンジ。素材に上質な銘柄を使うのは、現代における最高のクラシックを生みだしたいという想いからだ。“Revived Classics(リバイブド・クラシック)”をコンセプトに、現代に蘇った一杯は目をひく華やかさや味覚の発見がある。
「100年以上の歴史があるクラシックカクテルは味のバランスが優れています。一方で、現代にはミクソロジーの技術もあれば、各国で生まれているクラフトジンなどのスピリッツ、またかつては手に入らなかったフレッシュな材料などもある。それらをベースに、当時のバーテンダーが実現できなかった最高峰のクラシックカクテルを作ることを目指しています」
最上のバランスと提供スピードを考え、カクテルは一杯分ずつプレミックスして材料を十分になじませる。山中漆器、西陣織HOSOOのバーマット、石巻工房の木工細工のタオルトレイなど、客人に用意するものは自ら足を運び、生産背景を理解して取り入れる。その姿は茶人が客をもてなす様を見るようだ。
「バーの敷居は低くしなくてもいいと思うんです。その分こちらに来た方にはおひとりおひとり真摯に向き合って、この空間とカクテルによる最上級のおもてなしを体験していただけたらと思っています」
バーが開くのは金・土曜のみ。芸術が感性を開花させるように、カクテルがもたらすインスピレーションを味わってほしい。
白井屋 ザ・バー 真茶亭/SHIROIYA THE BAR Matcha-tei
住所:群馬県前橋市本町2-2-15 白井屋ホテル1F
TEL:027-231-4618
営業時間:金・土曜19:00〜
定休日:月〜木、日曜
座席数:カウンター6席
料金:カクテル ¥3,000〜、サービスチャージ10%