GOURMET

2023.02.05

鼓|「驚きの鮨屋がある」と瞬く間に評判になった武蔵小山の注目店

断言しよう。今、自分のレストランリストに入れておくべきはカウンターの店だ。なかでも次世代を担う若手職人による店は絶対に行きつけにしておきたい。今から通って応援したい、10年、20年後の名店になる可能性大の鮨店から、今回は東京・武蔵小山の「鼓」を紹介する。

武蔵小山「鼓」の店内

扇形のカウンターの要が谷本氏の定位置。

滋味を追求した破格の20品のコース

2022年4月に開店して以来、「驚きの鮨屋がある」と瞬く間に評判になった店が、この『鼓』だ。

「私の店では旬魚&旬野菜が主役。鮨屋は、野菜が摂れない。そんな思いこみを覆したい」と語る店主の谷本竜也氏。世田谷・経堂の老舗鮨店『寿矢(としや)』で、16年間研鑽を積み2021年に独立。さまざまな店で経験を重ねた先輩職人から教わった技術が、自分のスタイルに影響していると語る。

この店で、まず誰もが驚くのはコースの品数の多さだ。例えば2万2000円のコースに登場する皿は、料理と鮨を合わせて20品以上。「最初はすり流しなど胃に優しいものを。次に和え物や酢物が登場。揚げ物にはアメリケーヌソースを合わせてみたり。変わったところで、最近は蟹のTKGも人気」と言う。

コースには一品料理が8品ほど登場するが、魚の骨や甲殻類のガラと野菜を使い、いずれも滋味深い味に仕上げるのが身上。

武蔵小山「鼓」の中トロ

中トロ(写真は ¥13,200のコースの一例)。細かい隠し包丁が美味しさの秘密。

武蔵小山「鼓」の小肌

小肌。酸味を利かせたさっぱりした後味に。

武蔵小山「鼓」のメカジキのフライ

メカジキのフライアメリケーヌソース。甲殻類&野菜で作ったソースとメカジキの脂が好相性。

メインの鮨は旬魚を丁寧に血抜きし、最低でも5日は寝かして旨みをしっかり醸しだす。

「肝心なのはネタとシャリの一体感。だから鮨はひと口で食べやすいよう細長に。細かく隠し包丁も入れます」と旨みを追求。青魚、ウニ、穴子、貝類と続き、〆の小肌へ。けれど誰もがさらに2、3貫追加する。それほど食べ飽きない鮨ということだ。

精悍な顔立ちと真摯な仕事ぶりが光る35歳。店はひとりでも回せるようにとカウンターを扇形に設計し、定位置で握りも天婦羅も鉄板焼きもこなすマルチぶり。その試みはユニークだけれど、供される料理は実に端正。谷本氏のコースを味わえば、その誠実さを誰もが五臓六腑で実感できるはずだ。

武蔵小山「鼓」の炙りしめ鯖

炙りのしめ鯖は脂ののりが抜群。シャリとガリと一緒に海苔で包んで豪快に頰張るべし。

鼓/Tsuzumi
住所:東京都品川区小山4-2-3 ザ・シティ武蔵小山3F
TEL:03-6426-9015
営業時間:17:00〜L.O.22:00
定休日:月曜
座席数:カウンター7席、個室1室(6席)
料金:コース ¥13,200〜

TEXT=山田貴美子

PHOTOGRAPH=青木加代子

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