GOURMET

2023.02.04

経堂 にし岡|熟成、乾燥や塩当てを駆使する穴場鮨店

断言しよう。今、自分のレストランリストに入れておくべきはカウンターの店だ。なかでも次世代を担う若手職人による店は絶対に行きつけにしておきたい。今から通って応援したい、10年、20年後の名店になる可能性大の鮨店から、今回は世田谷区の「経堂 にし岡」を紹介する。

「経堂 にし岡」の店内

暗めの照明に照らされた、砂紋をイメージした壁が美しい。シンプルななかにモダンな雰囲気が。

“鮨ネタを育てる”熟成技が光る

私鉄沿線の穴場、というには、すでにその域を大きく超えていると鮨好きの注目を集めている『経堂 にし岡』。

魚好きが高じて、西岡洋介氏が自身の店を構えたのが26歳の時。当初から“好きこそものの上手なれ”を、地で行く魚の熟成技には目を見張るものがあったが、訪れるたびに、まるで違う店に来たかのような錯覚に陥るのは、店主の「日々進化」の思いが鮨に表れているからだろう。

同じ魚種でも“個体”として手当てをするのが、一番のモットー。魚の酵素を利用しての熟成、乾燥や塩当てといった方法を駆使しながら「鮨ネタを育てる」のが西岡氏の仕事のベースにあるが、今はネタが勝ちすぎないように、シャリとの一体感をより意識するようになったと話す。

つまみからスタートするコースは1万6500円。「何よりも魚が好きでたまらない」という気持ちは、玄人好みなネタのラインナップにも見て取れる。

「経堂 にし岡」の鰆

鰆(写真は ¥16,500の夜のおまかせの一例)。 「答志島(とうしじま)トロさわら」の2枚づけ。脂のとろけ具合に驚く。

「経堂 にし岡」のメカジキ

メカジキ。昨今の鮨店ではほぼ見ないが、西岡氏は「自分のなかでナンバー1の魚」と心酔。2ヵ月間、長期 熟成させたメカジキは噛みごたえがあり、桁違いに旨みが濃い。

「経堂 にし岡」の香箱ガニご飯

香箱ガニご飯。外子と内子を混ぜた酢飯、カニのほぐし身、カニ爪の3層で楽しませる。

例えば、最近の鮨ではあまり見かけることのなくなったメカジキ。真空状態で水分を取り、表面に冷風を当てて2ヵ月寝かせた身には脂がしっかり回り、その旨みの凝縮感に言葉を失う。昭和の頃の鮨店では、メカジキが鮪と人気を二分する魚であったと聞けば、その魅力に着目し、美味しさを引きだす手腕に唸るというものだ。

定期的に米と酢の種類、配合を見直すシャリは、しっかりした甘みがありながら粘り気が少なく「仕込みに時間がかかる小魚ほど腕が鳴る」と話すネタとの相性も抜群。

高速で進化する才能には、今時の鮨の“潮流”さえも変える圧倒的なパワーがある。

鮨を握る「経堂 にし岡」の西岡洋介氏

店を始めた当初は魚の熟成をメインテーマにしていたが、今はネタが勝ちすぎないようにシャリとの一体感を重視。

経堂 にし岡/Kyodo Nishioka
住所:東京都世田谷区経堂1-12-1 インナーコート経堂B1
TEL:050-3091-0909
営業時間:12:30〜、18:30〜(一斉スタート)
定休日:不定休
座席数:カウンター6席
料金:昼のおまかせ ¥11,000、夜のおまかせ ¥16,500

TEXT=小寺慶子

PHOTOGRAPH=上田佳代子

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