限界を知らない男、モノ、コト――過剰なモノを愛し続けたゲーテ編集部が贈る特集「最上級事典2023」。妥協を知らないゲーテ流の最上級とは何か。今回は、新宿・四谷の名店、すし匠の「おはぎ」を紹介する。【特集 最上級事典2023】
美味しいを締め括る、究極の「おはぎ」
たとえ寿司通であっても、一貫の握りを見てそれがどこの店の寿司なのかを、瞬時に判断することは存外難しい。しかしこの「おはぎ」を見れば、誰もが「すし匠」の名前を思い浮かべることができる。まさにスペシャリテと呼ぶべき一貫だ。
すし匠はつまみと握りを交互にテンポよく提供するおまかせスタイルの嚆矢(こうし)だが、実はこの「おはぎ」、基本的におまかせのなかには入ってこない握りだ。ひと通りのおまかせが出た後に、お好みのタイミングで注文することで、初めて口にすることができる一貫。
「どんなお客様にも満足していただける、うちのお寿司のなかでも絶対的安心感のある一貫。だからこそ、ここぞという時にお出しします。必殺技というものは、たいてい最後に出すものです」と笑うのは、親方の中澤圭二氏から店を任されている、二代目親方の勝又啓太氏。
上質な鮪の中落ちや赤身と皮ぎしなどを、食感が楽しいネギとたくあんと合わせ、まさに「おはぎ」のように酢飯を包む、すし匠発祥の握り。指のあとが付かないように優しく美しく握りながらも、鮪と酢飯を見事に調和させる。「すし匠」の美味しいを締め括る、究極の必殺技だ。