小康状態になったとはいえ、まだまだ油断ならない新型コロナウイルス。自宅でゆったり過ごす人もいれば、ホームパーティに赴く人もいるはず。そんな時にぜひお供にしたいワインを、レアモノや高級銘柄など、一流の味を知るワインジャーナリスト・柳忠之氏が厳選! 今旬のテーマ別にセレクトしたワインを3日間にわたりお届けする。今回は【1万円以下のピノ編】。
ブルゴーニュ党も納得の1万円以下ピノ・ノワール
GOETHE本誌ワイン特集でも明らかなように、ワイン通の行き着く先はブルゴーニュ。しか~し、世界中のお金持ちがブルゴーニュワインに目覚めた結果、その高騰ぶりに歯止めがかからない。でも心配ご無用。世界にはこんなに素晴らしくお値打ちのピノ・ノワールがあるのだ。
①ヴァリ ワイタキ ピノ・ノワール 2012
ニュージーランドでは珍しい石灰質土壌
ニューワールドにおけるピノ・ノワールの銘醸地として最も注目を集める国はニュージーランド。なかでもノース・オタゴのワイタキは最も冷涼でブルゴーニュ地方と同じ石灰質土壌。伸びのある酸となめらかなテクスチャーのワインが生み出される。ヴァリは敏腕ワインメーカーのグラント・テイラーが、2006年に立ち上げたワイナリーだ。
②ストーム・ワインズ リッジ・ピノ・ノワール 2018
南アフリカのニューウェーヴ
アパルトヘイト撤廃後の'90年代後半からワインの質が大きく向上した南アフリカ。今またこの国に大きな波が押し寄せている。南アの中でもピノ・ノワールの産地として名高いエリアが、冷たいベンゲラ海流の影響を受けるウォーカー・ベイ。このワイン、ブラインド(目隠し)試飲しようものなら、ソムリエでさえもブルゴーニュと間違える。
③フリーマン ピノ・ノワール ソノマ・コースト 2017
日本人女性醸造家のセイヴァリーなピノ
日本人女性醸造家のアキコ・フリーマンが、カリフォルニアのソノマ・コーストで造るピノ・ノワール。ソノマ・コーストは同地におけるピノ・ノワールの銘醸地とされているが、その範囲は広く、より涼しい沿岸エリアを新たにウエスト・ソノマ・コーストと呼ぶべく運動中。セイヴァリー(滋味深い)という表現がぴったりのおいしさ。
④レゾナンス ウィラメット・ヴァレー ピノ・ノワール 2016
ブルゴーニュの大御所がオレゴンに
カリフォルニアの北にあるオレゴン州のウィラメット・ヴァレーに、デヴィッド・レットが初めてピノ・ノワールを植えたのは1966年。うまく行くわけないという周囲の疑念も完全に払拭され、今やピノ・ノワールの銘醸地だ。レゾナンスはブルゴーニュの大御所ルイ・ジャド社が設立したワイナリー。やはりフレンチテイスト。
⑤フォン・ウィニング ピノ・ノワール ロワイヤル 2016
もう薄くて酸っぱいなんて言わせない
薄くて酸っぱいピノ・ノワールも今は昔。地球温暖化の影響で、ドイツ南部のバーデンやファルツでも高品質なピノ・ノワールが続々生まれている。フォン・ウィニングのこのワインは、「本当にドイツ?」と疑うほどの凝縮感。ドイツ語のシェペートブルグンダーではなく、あえてピノ・ノワールと謳うところに自信が見て取れる。
Tadayuki Yanagi
GOETHE本誌でもお馴染みのワインジャーナリスト。1000円未満のデイリーワインから、100万円以上のグランヴァンまでを網羅する。先日、モエ・エ・シャンドンに招かれ渡仏。1921年までの18ヴィンテージを試飲し「100年前のモエは身悶えするほど美味しかった」のだとか。