元プロ野球選手の光山英和は、楽天イーグルスの一軍バッテリー兼守備作戦コーチ。現役時代は野茂英雄の相棒として、近鉄バファローズのキャッチャーとして活躍。引退後は、西武ライオンズ、横浜DeNAベイスターズなどのバッテリーコーチとして指導する。その一方、常日頃から全国の旨い店を巡る美食家としての顔も持つ。そう、野球関係者の誰もが口を揃えて言う「球界一のグルメ」なのだ。そんな光山コーチが、全国の知る人ぞ知る名店をガイドする。
球界のレジェンドは純粋、まっすぐ、一徹
新年おめでとうございます!
2021年がスタートしました。楽天イーグルスは昨シーズンの4位から、逆襲のシーズンとなる年にしたいと思っています。
今オフは新型コロナウイルスの影響で、おとなしく自宅にいる機会が多かったのですが、その中でも3世代にわたるプロ野球界のレジェンドの方達と食事をする機会がありました。
まずは、権藤 博さん。近鉄バファローズ時代にお世話になったピッチングコーチですが、御年82歳で超元気! 公式少年野球大会「野茂カップ」での食事会だったのですが、飲むわ、語るわが止まらなかったです。話の内容も昔話ばかりでなく、今の球界でも通用するようなことばかり。「4隅を狙うな」「ド真ん中にチェンジアップ」「攻めて緩急」「困ったら行け!」……一見抽象的に感じますが、本当の現場はこんなものです。
私は基本データ大好きで数字ありきなんですが、ここ一番、感性が数字を上まわることがあります。そのタイミングを逃さないでアドバイスするのがコーチの役目なのかなと思っています。権藤さんとゆっくりお話しするのは30年ぶりだったのですが、自分の野球の原点を思い出させていただきました。
次は野茂英雄君。毎年何度となく食事に行きますが、いつもその感性に驚かされます。あー見えてワイン通だし、歌は上手いし、超おしゃべり。ほんとの野茂英雄を皆さんに知ってほしいです(笑)。
近頃はメジャーリーグに行く投手が、国際大会でマウンドの硬さや、ボールの違いを口にすることが多いですが、野茂君はメジャーに行ったときに「気が付かへんかった」らしいです(笑)。メジャーで野球ができる嬉しさで、それどころじゃなかったと……。
すごいですよね。でも、考えていたら野球が楽しくてしかなかった少年野球時代、グラウンドやボールの違いなんてまったく気にしなかったですもん。
野茂君はその感覚でプレーしてたんでしょう。権藤さんと気が合うのがよく分かります。
そして現在メジャーリーガーの筒香嘉智君。私の教え子達が筒香君の自主トレに参加させてもらっていますが、その姿はまるで少年野球。
人っ子一人いない奈良の山奥の広場のようなグラウンドで練習してる姿は、誰もそこに筒香がいるとは思わないでしょう。グラウンド以外の練習や取り組みを大事にしてるのを、教え子達に見てほしくて参加させてもらってるのですが、皆感銘を受けています。
私もメジャーのキャッチャーについての話を聞きましたが、今メジャーはフレーミングが全盛のようです。フレーミングとは、キャッチング時にミットを動かす動作のこと。ピッチャーが投げるストライクかボールかギリギリのところを、いかにストライクにとってもらえるようにするかも技術なんです。2011年に初めて西武ライオンズにコーチ就任した時から、当時の銀二朗(現ジャイアンツ・炭谷)達にもフレーミングをやろうと指導してたので、ようやく時代が私に追い付いて来ました(笑)。
この3世代にわたるレジェンドの人達に共通するのは、「純粋」とか「真っすぐ」とか「一徹」とかの言葉。2020年のシーズンはいろいろ考え過ぎて、大事なことを忘れそうになっていました。今は良いオフシーズンを過ごせています。石井一久新監督のもと、最高のシーズンを迎えられる準備はできています。
さてさて、美食のコーナーに入ります。
今回ご紹介するお店は今時食べログにも載せない・連絡先非公開・完全予約制の紹介者なしでは入れない・当然グルメサイトへの投稿NGですが、ずっと予約でいっぱいのお店『さくらの都』です。
「行かれへんかったら意味ないやん」という声が聞こえてきそうですが、何とかして行ってみて下さい(笑)。
まず一階は、サクッとオーガニックワインや日本酒が立ち飲みできる「sakusaku」。写真のような感じで気軽に飲める場所になっています。
さてここからが隠れ家『さくらの都』の本領発揮なんですが、まずはインターホンでピンポン。
この階段を上がるとそこは別世界。竹園劇場です。
料理は写真を見てのとおり、ひと手間もふた手間も入っています。お客さんの要望で「河豚やって」とか「クジラやって」とか「クエできる?」とかもありですし、「お任せ」もありです。
ちなみに僕が野茂君と行った時は「クジラ」を希望しました。
なかなか辿り着けないお店ですが、苦労して行く価値のあるお店です。あまり好きな言葉ではないですが、コスパもよいです。なにより店主・竹園君の食材への思いや取り組み方に感激すると思います。
料理も野球も人やねんなぁ~
さくらの都
住所:非公開
TEL:非公開
営業時間:非公開
※完全予約制
Hidekazu Mitsuyama
1965年大阪府出身。大阪・上宮高校卒業後、’84年に近鉄に入団。正捕手として野茂英雄の女房役として活躍。中日、巨人、横浜、韓国・ロッテを経て2003年に現役引退。’11年から’13年まで西武で、’16から’18年まで横浜で、そして’19年シーズンからは楽天でバッテリコーチを務める。また、「球界一のグルメ」としても有名。兄・英俊は大阪で『和洋酒菜 ひで』を、弟・英明はあの『肉山』の創業者。