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2024.09.07

『ダ・ヴィンチ・コード』にも登場したマグダラのマリアは、なぜ“罪の女”とされたのか

キリスト教の「聖人」たちについて知れば、歴史だけでなく、教義や宗派の秘密までも読み解くことができる。『キリスト教の100聖人』から一部を抜粋してお届けします。

マグダラのマリア 自らの罪深さを自覚し、信仰を得たキリスト教信者のモデル

イエスとかかわりのある女性としてもっとも著名で、さまざまな形で注目されてきたのがマグダラのマリアである。イエスが活動したのは、現在のイスラエル北部にあるガリラヤ湖周辺であるわけだが、マグダラはその北西岸にある街の名である。

イエスは、数々の奇跡を行ったとされ、奇跡の事例の一つがあくりようを追い出すことである。「ルカ」では、イエスが女性たちから悪霊を追い出したとされ、マグダラのマリアもその一人である。そうした女たちは、イエスと12人の使徒たちが各地をまわって宣教して歩くのについてまわったとされる。

マドレーヌ寺院のマグダラのマリア像(パリ8区)

マグダラのマリアがとくに重要な女性とされるのは、イエスが十字架にかけられて殺されるのを見守り、墓に埋葬されるのを目撃したからである。「ヨハネ」においては、3日目に墓からよみがえったイエスは彼女の前に現れたとされる。マリアにむかってイエスは、「私にすがりつくのはよしなさい」と言い、自分の兄弟たちのところへ行って、これから自分は神のいる方へのぼると伝えよと命じる。

また、ユダヤ教の主流派であるファリサイ派の人間に求められてイエスが食事をともにしていたときにこうの入ったせつこうつぼを持って現れ、イエスの足にせつぷんして香油を塗った「罪の女」はマグダラのマリアであるという伝承がある。彼女はイエスと出会うことで、自らの罪深さを自覚し、信仰を得たということで、あるべきキリスト教信者のモデルともなっている。

女性の罪深さを強調するのは、古代の社会に広く見られたことで、仏教の世界でも女性はそのままではじようぶつできないという見方があった。それは現代では問題視される事柄でもあるが、『黄金伝説』になると、マグダラのマリアは富とぼうの持ち主で、快楽に溺れていたのをイエスに出会うことで悔い改めたと語られ、その面がいっそう強調されている。

こうした女性として伝えられているために、マグダラのマリアはキリスト教美術の格好のテーマとして多くの絵画に描かれてきた。さらに現代になると、彼女をイエスの恋人、あるいは妻として扱った物語も作られるようになり、その代表が『ダ・ヴィンチ・コード』(ダン・ブラウン著、越前敏弥訳、角川文庫)だが、彼女とイエスの関係の深さが、そうした創作を生み出したものと考えられる。

この記事は幻冬舎plusからの転載です。
連載:キリスト教の100聖人
島田裕巳

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