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2024.08.04

運送業界の革命児が「社員教育は、技術よりもマナーを優先すべき」と断言する理由

「日本一、丁寧な仕事をする会社」をモットーに運送業界トップクラスの売り上げを誇る、池田ピアノ運送。常識を覆す施策を次々に取り入れ業界のイメージを一新してきた同社社長・池田輝男氏が、どんな業界でも通用するビジネスの絶対法則を紹介。書籍『「丁寧」なのに仕事が速い人の習慣』より、一部を抜粋してお届けします。

最初に教えるべきは技能よりもマナー

人材育成には順番があります。新たに人を採用したとき、あるいは人材育成をこれから始めるというとき、絶対に守ってもらいたい順番は、「技能よりも先にビジネスマナーを教える」ということです。

私たちの会社では専門のコンサルタントを呼んで指導してもらっていますが、必ずしも講師などを呼んで研修する必要はないでしょう。ただ、ビジネスをする上で、常識として知っておくべきことを学ぶ必要はあります。我が社では新人のみならず、引退して顧問になっている人間も含め、全社員が研修を受けています。

基本は会社の中でルールとされていることでいいのです。その多くはどこの世界でも通用するもので、社会人として技能よりも先に身につけるべきものです。

その理由は3つあり、まず「マウント合戦になるのを避ける」ということ。

ある種の技能が必要なとき、多くの職場で先に必要な技能を教えようとするのですが、すると新人同士で「技能ありきの競争」が起こってしまうことがあります。

たとえば飲食店などは典型的ですが、よくあるのはメニューやレシピを暗記させるようなことです。それだけならいいのですが、「俺はこれができるからエラい」とか、「これがやれるからお前よりも俺のほうが上だ」などと、優位性の争いがすぐに社員同士で起こってしまいます。

とくに売上がほしい現場だと、技能性をとかく競わせるようなことがありますから、皆が自分のことばかりで、お客さまを見て仕事をする人がいなくなってしまいます

ビジネスマナーを優先させるべき2つ目の理由は、「あとからマナーを教えるのはとても労力がかかる」ということです。

これは1つ目の「マウント合戦になるのを避ける」ということにも関わっていて、人は技能がある程度身につくと、初歩的な基本に立ち返るのを嫌がるのです。

「自分はすでにスキルを身につけた。だからマナーのような初歩的なことは、もういい」と考えるわけですね。

こうしてマナーの習得をせずに実践に踏み出してしまった人は、致命的な欠如を背負ってしまう可能性があります。プライドを捨てる決意をしない限り、成長が止まってしまって、次の段階に進めなくなってしまうでしょう。

専門的なスキルは社内でしか評価されない

仕事のスキルより、先に教えるべきはビジネスマナーである。

その最後の理由は、「そもそもお客さまは、スキルなど見ていない」ということです。

いや、スキルがあるかどうかは、仕事のパフォーマンスを定めるのに重要なことでしょう?……そう、あなたは思うかもしれませんが、実際に自分が誰かに、何らかの仕事を頼んだ場合を考えてみればすぐわかります。

お辞儀をする男女の写真

たとえば、冷蔵庫の修理を依頼した場合を考えてみましょう。修理業者がやってきて、1時間ほどかけて修理が完了し、業者は帰っていきました。冷蔵庫は元通りに修理され、また使えるようになりました。

確かに、これは嬉しいことです。

でも、心を震わせるくらいの感動があるかといえば、それほどではありませんよね。

なぜなら、修理を依頼して相手がやってきたのだから、最後に冷蔵庫が直っているのは当然のことだからです。

でも、実際はここに、ものすごい修理の裏ワザがあったかもしれない。他の人なら2時間とか3時間かかるところを、たまたまこの修理業者だったから、優れたスキルによって1時間で済んだのかもしれない。あるいは同業者だったら一目でわかるほど、その修理の仕上がりは、美しいものだったのかもしれません。

しかしほとんどの人は、その価値など判断できないのです。せいぜい機械好きの人が感心するだけ。

もちろん社内では尊敬を集めるかもしれませんが、専門的なスキルなど、結局は社内でしか評価されないものなのです。

ところが「マナー」の領域なら、どうでしょうか?

たとえば修理のために冷蔵庫を移動させたとき、設置場所の埃まみれの壁や床を、ピカピカになるまで掃除してくれた。あるいは古い冷蔵庫を特別な洗剤で拭き、長年取れなかった汚れを全部、落としてくれた……。

このときは「そんなことまでしてくれるの?」と、感動してしまいますね。

修理してもらった事実よりも、こうしたサービスには心を動かされます。

(写真:iStock.com/Chainarong Prasertthai)

つまり、お客さまが喜ぶのは技術でなく、立ち居振る舞いや所作など、マナーや意識に属する行為なのです。お客さまはそれを注視していないかもしれませんが、仕事後の印象には明確に残ります。

「いい修理屋さんだったね」と印象に強く残るのは、腕のいい修理屋さんでなく、明らかにマナーのいい修理屋さん。それは、自社のビジネスを「サービス業」としてデザインし、社員に教育しているところにしかできないことです。

だから優先すべきは、技術よりもマナーになるのです。私はよく「技能の差は僅差。人の差は大差」と言っているのですが、即戦力がほしい会社ほど、余裕をもってスタッフの教育を考えるべきです。

この記事は幻冬舎plusからの転載です。
連載:「丁寧」なのに仕事が速い人の習慣
池田輝男

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