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2024.07.02

オバマ元大統領を社会貢献活動へと導いた、知られざる“妹コンプレックス”

きょうだい(兄弟・姉妹)といつも比較されて育った。嫉妬や怒り、憧れをおぼえる。特別扱いされていると感じる。きょうだいのために我慢してきた……。少しでも当てはまると思ったあなたは、「きょうだいコンプレックス」を抱えているかもしれません! 精神科医、岡田尊司氏の『きょうだいコンプレックス』の一部を抜粋してご紹介します。

長子の心理学

フロイトによれば、若い母親の第一子として生まれた子どもは、万能感に満ちた自信を育みやすいという。若い母親は、膨らんだ期待や願望を、ありったけの愛情とともに、わが子という特別な存在に注ぎ込むからである。フロイト自身、父親の二番目の妻として迎えられた若い母親の第一子で、溺愛されて育った。

子どもにおやつを食べさせる若い母親の写真

後年、フロイトが世の厳しい批判にあいながらも、揺るぎない自信をもって未踏の領域を切り開いていくことができたのも、幼い頃、母親から無条件に肯定された体験が核となっているのだろう。

とはいえ、フロイトは、家族の中では長子ではなかった。異母兄がすでに二人いたからである。生まれた順位よりも、愛情の順位の方が影響が大きいということだろうか。

何番目に生まれようと、長男に生まれることは、しばしば特別扱いを生み、長子と同じような傾向を帯びやすい。長年待望されていた場合など、その傾向が強まる。

一番であろうとするため、大きな夢や野心を抱き、大きな成功を手にすることもある一方で、幼い頃ちやほやされた名残で、見通しが甘く、地に足がつかないところがあり、非現実的な夢物語で終わってしまったり、せっかくの成功を調子に乗って台無しにしてしまったりする。

もう一つ、長子に特徴的な性格は、優しさや面倒見の良さである。特に弟や妹の面倒をよく見たという人は、世話好きで思いやりがあり、愛情豊かな性格になりやすい。良い模範となり、下のきょうだいを指導する機会が多かった場合には、リーダーシップや指導力を身に付けやすい。反面、世話を焼きすぎたり、仕切りすぎたり、支配的になったり、過干渉になりやすいところもある。

9歳で母親が再婚、妹が生まれたバラク・オバマ

アメリカ大統領バラク・オバマは長子で、彼には、9歳下に妹のマヤがいる。マヤ(・ストロ)は、母親がバラクの父親と離婚した後、インドネシア人のビジネスマンと再婚してできた子どもで、バラクにとって異父妹ということになる。バラクにとって、母親の再婚は大きな試練だった。育ったハワイから遠く離れたインドネシアに渡って、まったく言葉もわからない土地での暮らしを余儀なくされたのだ。

しかも、それまで独占していた母親との間に新しい父親が割り込んできて、しかも妹まで生まれたのだ。幸いだったのは、彼がもう9歳という年齢に達していたことだろう。

バラク・オバマ元アメリカ大統領

バラクは、ある時期まで一人っ子のように母親の愛情を独占することができた。インドネシアに行っても、母親は毎朝早起きして、息子に付きっきりで英語を教えた。非常に教育熱心で、経済的にあまり余裕がない中で、息子には最高の教育を受けさせている。

バラクには、母親に愛されたという思いと同時に、母親に見捨てられたという思いがあったに違いない。

だが、そのことが、見捨てられた人々への関心や関与へと彼を駆り立てていくことになる。

バラクの自伝を特徴づけているのは、母親や父親について、非常に多くが語られているのに対して、妹に関しては、ごくわずかしか触れられていないことである。妹の誕生した時期は、バラクにとって人生でもっとも苦難の時期といってもいいはずであり、表面的にはともかく、その深層心理にはアンビバレントな思いが底流していただろう。

自分を見捨て、自分から愛情を奪っていった存在を憎むことなく、愛するために、彼はエリートの弁護士ではなく、弱者を支援するソーシャル・オーガナイザーという仕事を選ぶ必要があったのだろうか。

この記事は幻冬舎plusからの転載です。
連載:きょうだいコンプレックス
岡田尊司

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