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2024.06.30
ヒラリー・クリントンという偉大すぎる姉をもった「不肖の弟たち」
きょうだい(兄弟・姉妹)といつも比較されて育った。嫉妬や怒り、憧れをおぼえる。特別扱いされていると感じる。きょうだいのために我慢してきた……。少しでも当てはまると思ったあなたは、「きょうだいコンプレックス」を抱えているかもしれません! 精神科医、岡田尊司氏の『きょうだいコンプレックス』の一部を抜粋してご紹介します。
ヒラリー・クリントンのファザー・コンプレックス
国務長官としても活躍し、アメリカ最初の女性大統領の期待もかかるヒラリー・クリントン(旧姓ローダム)は、三人きょうだいの一番上に生まれた。
父親のヒュー・ローダムは、フットボールの特待生として大学を出たものの、大恐慌で就職に苦労し、カーテン屋の仕事にありついて、やっと安定した暮らしを手に入れた。カーテンの販売だけでなく、裁断や取り付けまで一人で行っていたという。母親はもっと苦労した人で、八歳のときに両親が離婚したため、父方の祖父母のもとに預けられ、十四歳になると、住み込みの女中として働かねばならなかった。当然、学歴などない。

だが、そんな逆境をはねのけようと、二人は強い向上心をもって生きていた。特に父親のヒューは元フットボール選手だったこともあり、弱音を吐くことを、自分にも家族にも許さなかった。一時は職がないため、炭坑夫として働いたこともあったが、努力とガッツによって貧しい暮らしから抜け出し、華々しいものではないにしても、それなりの成功を手に入れてきたという自負があった。少し背伸びをしてシカゴの高級住宅地に自宅を購入したのも、強い上昇志向の表れだった。
ヒラリーが同一化し、目標としたのは、母親ではなく、父親だった。父親から強い意志の力と政治への関心も受け継いだ。その分、ヒラリーは女性的な部分を犠牲にせざるを得なかった。ヒラリーという、もともとは男の子に使われる名前にふさわしく、男勝りで、負けん気の強い人格を育んでいったのである。
ヒラリーのファザー・コンプレックスは、自らが強い父親のような存在になろうとするという形でも現れたが、同時に、強く、野心的で、政治に関心があり、筋肉質な肉体をもつ男性に惹かれやすいという恋愛での嗜好となっても現れた。ヒラリーの理想の男性は、「アメリカ大統領になる」と豪語し、それを本気で実現するような人物でなければならなかった。
偉大すぎる姉をもった悲劇
ヒラリーには、三歳と七歳離れた二人の弟がいる(編集部注:弟トニーは2019年6月に死去)。弟の誕生は、姉にとっては両親の愛情や関心を奪われるという点で脅威であり、幼い頃から強烈だったヒラリーの自己アピールをいっそう強化するのに一役買っただろう。
だが、鋼の意志と頭の回転の速さを備えた姉に比べると、弟たちの能力は凡庸であった。中でも問題が多かったのは、末の弟トニーである。姉とは無論、兄と比べても、学業面でもスポーツでも、ぱっとしなかったトニーは、心のバランスをとるのが難しかったに違いない。
姉は、ハーバード・ロースクールを蹴って、イェール・ロースクールに進み、その後も弁護士として第一線で活躍しながら、ファースト・レディの座に上り詰めていく。そんな姉のまぶしすぎる活躍の一方で、トニーは仕事を転々とし、その経歴にはいかがわしさが付きまとった。兄とともに私立探偵の仕事をしていたこともある。
義兄がホワイトハウスの主となると、おこぼれにあずかって、それらしい地位に就くが、だらしない性格が急に変わるはずもなく、結局、名前が出てくるときと言えば、姉や義兄の顔に泥を塗るような、スキャンダルまがいの金銭問題や暴力沙汰に絡んでだった。ヒラリーにとっては、まったく情けない不肖の弟だったと言えるだろうが、本人からすると、偉大すぎる姉をもった悲劇と言えなくもない。
しかし、もともとの原因は、姉のせいでも弟たちのせいでもなく、父親の偏った価値観に、その根本原因があったとも言えるだろう。
父親の強いコンプレックスと成功願望に応えようとした姉と、応えきれなかった弟たち。父親が一面的な価値観を押し付ければ押し付けるほど、明暗がくっきりと分かれてしまうのは必然的な結果だったと言えるだろう。
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