MAGAZINE &
SALON MEMBERMAGAZINE &
SALON MEMBER
仕事が楽しければ
人生も愉しい

AND MORE

2024.06.27

アンコールで誰も手を叩かなかったらどうなる? 元・日本一有名なニートが面倒臭いと思う“社会人のルール”

定職に就かず、家族を持たず、シェアハウス暮らし。社会的評価よりも自由に生きることを大事にしてきたphaさん。かつて「日本一有名なニート」ともいわれたphaさんは、どんな生き方を実践してきたのか? 著書『がんばらない練習』よりご紹介します。

アンコールで誰も手を叩かなかったらどうなるんだろう

昔からアンコールを待つ時間が苦手だ。あの、ライブで一通りの演奏が終わって演者たちが退場したあと、会場にあふれていた拍手の音がそのうち自然と揃ってきてリズムを取るようになり、バッ、バッ、バッ、バッ、バッ、とアンコールが始まるまで手を叩き続けるというやつだ。

何が苦手かというと、アンコールに何をやるかは最初から用意されているにもかかわらず、「本当はここで演奏は終わりなのだけど、観客の皆さんが盛り上がってくれたからリクエストに応えて特別に何かおまけをやりますね」という形式を取っているところだ。あらかじめ結果が決まっているのに形式的なやりとりをしなきゃいけないということに何か恥ずかしさと無駄さを感じてしまう。

(写真:iStock.com/kanzilyou)

アンコールを用意していたのに観客が誰も手を叩かなかったらどうなるんだろう、とか想像してしまうのだけど、一度もそんな風になったことはない。結局、一人だけ手を叩いてないのも落ち着かないし、自分もアンコールを見たい気持ちはあるので、自分も手を叩いてしまうのだけど。手が痛くならない程度に柔らかく。

社会の中では、同じような苦手さを感じることがたくさんある。結論は決まっているのに何か形式的な手続きを取らないといけないというシチュエーションが。例えば店で食事をしたときに、ここは多分相手がお金を出してくれる感じなのがわかっているのだけど、自分でも一応財布を出して払う素振りを見せたほうがいいのか、とか。

ときどき、ひょっとしてこれは、あれをやらないといけないのか、と思って戦慄してしまう。レジの前で伝票を奪い合いながら「ここは私が」「いやここは私が」「いやいや」「いやいやいや」「まあまあまあ」「まあまあまあまあ」という茶番を。社会は恐ろしい

居酒屋でどの席に座ったらよいのかがわからない

そうした形式的なやりとりが何かを緩和しているのだということはわからなくはない。その形式を身につけている人にとっては、形式があったほうがないよりも人付き合いがやりやすいというのがあるのだろう。だけどその形式にうまく乗れない人間にとっては、こいつの振る舞いは変だと嘲笑されないだろうか、という恐怖がのしかかってくる。

他には、居酒屋でどの席に座ったらよいのかもよくわからない。上座とか下座とかを気にするべきなのか、それともざっくばらんな席でそんなことを気にする方が変なのか。

(写真:iStock.com/taa22)

居酒屋では料理を取り分けるべきなのかどうかも難しい問題だ。基本的には各自勝手に食べたい人が取ればいいと思うのだけど、そう思って何もしないでぼーっとしていると、気が利く女子とかが取り分け始めて、何もせずに座っている自分が女性にばかりそういうのをやらせる差別主義者みたいになってしまうから、いっそのこと率先して自分が取り分けたほうがいいのかと思ったりもするけれど、でもそれも面倒臭い。

居酒屋で瓶ビールを頼んだとき、お酌をし合うというのをやったほうがいいのかどうかもわからなくなってつらいから、生ビールのほうがいい。ていうかそもそも瓶ビールと生ビールの味の違いもよくわかっていない。なんで瓶と生と両方あるんだろう。面倒臭い。なんか居酒屋の話ばっかりだな。居酒屋が全部悪い気がしてきた。居酒屋を全部潰せば解決するのではないだろうか。

ちゃんとした社会人はみんな、居酒屋での席の座り方とか、お酌をするタイミングとか、お酌をするときはラベルを上に向けるとかどうするとか、瓶ビールと生ビールの味の違いとか、日本酒の醸造方法による味の違いとか、そういうのを全部わかっているのだろうか。僕はよくわからないのでずっと公園で缶ビールを飲んでいたい……。

この記事は幻冬舎plusからの転載です。
連載:がんばらない練習
pha

PICK UP

STORY 連載

MAGAZINE 最新号

2024年10月号

人生を変える最強レッスン

GOETHE2024年10月号カバー

最新号を見る

定期購読はこちら

バックナンバー一覧

MAGAZINE 最新号

2024年10月号

人生を変える最強レッスン

仕事に遊びに一切妥協できない男たちが、人生を謳歌するためのライフスタイル誌『ゲーテ10月号』が2024年8月23日に発売となる。今回の特集は“人生を変える最強レッスン”。日常を鮮やかに彩る“大人の手習い”を紹介。表紙を飾るのは稲葉浩志。20Pにわたるボリュームで、彼が作りあげる作品の魅力に迫る。

最新号を購入する

電子版も発売中!

バックナンバー一覧

SALON MEMBER ゲーテサロン

会員登録をすると、エクスクルーシブなイベントの数々や、スペシャルなプレゼント情報へアクセスが可能に。会員の皆様に、非日常な体験ができる機会をご提供します。

SALON MEMBERになる