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2024.05.01
初の春開催! F1日本グランプリ、コロナ禍の無念乗り越えた主催者の想い|ホンダF1 復活した最速のDNA
自動車レースの最高峰、F1(フォーミュラ1)の日本グランプリが2024年4月5日、三重県鈴鹿市の鈴鹿サーキットで開幕した。例年秋に開催されていた日本グランプリだが、今年は初の春開催。2023年はのべ22万人もの観客が詰めかけ大きな盛り上がりを見せたが、2021年のコロナ禍では開催を模索したものの、最終的には断念することに。困難な状況下で日本でのF1開催を目指して奔走した、グランプリ関係者の思いを、ホンダF1「第4期」の活動を追ったドキュメンタリー『ホンダF1 復活した最速のDNA』から紹介する。
幻の日本GP
2021年10月8日。
本来であれば、この日から3日間は三重県の鈴鹿サーキットで第16戦の日本GPが開催される予定だった。しかし、新型コロナの影響で、すんなりと事は進まなかった。
その前に、日本では2021年7月23日から8月8日の日程で、1年延期となった東京オリンピック2020が開催された。
関係省庁と協議を重ね……
選手を含めた大会関係者の人数は約4万1000人。外部と隔離する「バブル方式」を採用することで感染拡大を防ぐ、という名目のもと開催された。
だが、実際はさまざまな場面で破綻が起こり、バブル方式は徹底されなかった。それでも、オリンピック後に爆発的な感染拡大は起こらなかった。
日本GPの運営責任者であるモビリティランド社長の田中薫は、オリンピック開催が議論され、新型コロナの感染が拡大していた頃から、F1関係者約1500人の入国を実現するため、関係省庁などと調整を重ねていた。
1500人の内訳は、各チームのドライバー、スタッフが100人╳10チーム。
そこにシリーズの主催者であるFIAなどの関係者やスタッフ、海外のメディアなどが含まれる。とはいえ、オリンピックの27 分の1の規模である。
「管轄官庁の方々からもいろいろとアドバイスやご支援をいただいたのですが……」
オリンピック同様、開催するにはバブル方式の確立が最低条件だった。
入国からレースを行って帰国するまでの道筋を、完全なバブルのなかで確立する必要があった。鈴鹿の立地からすると、中部国際空港セントレアと関西空港が現実的な入国ルートになった。
「みなさんの協力を得ながら、移動手段の手配は済んでいました」
そこには、シリーズを運営するF1側の多大な協力もあったと田中は語る。
アジアで最も伝統のある日本GP
「日本GPはアジアのなかでもっとも歴史と伝統がありますし、F1側もなんとか今年はやりたいと言ってくれました。鈴鹿はホンダの本拠地でもあり、角田裕毅くんという日本人ドライバーも久しぶりに出てきたこともあって、いろいろな対策に関して、準備、検討、協力を一緒に進めてきました」
田中はそう言う。そのうえで開催するためには、外国から日本にやって来る1500人のF1関係者ひとりひとりの入国ビザを取得する必要があった。
「鈴鹿でレースをお見せしたかった」
しかし、開催日から逆算し、さまざまな物資を輸送するのに必要な期日までに、1500人の入国が確実な状況にはならなかった。
「もちろんF1側と協議を重ねましたが、最終的にはグランプリを主催するサーキットが開催するかどうかの判断をすることになっていました。2020年は残念ながらコロナ禍で見送ったので、2021年はなんとしても、鈴鹿でレースお見せしたかった。みんなで絶対に開催しようとギリギリまで粘ったのですが、これは日本GPだけのことでなく、すべてのF1カレンダーに影響するため、そこで判断せざるを得ませんでした」
日本GPは、2年連続で中止が決定した。この事態を、マネージングディレクターの山本雅史は非常に残念がった。
「個人的な意見になりますが、オリンピックよりF1の集団のほうがプロフェッショナルですよ。F1は非常に厳しく管理してやっていたので、ここまで徹底すれば感染拡大しないでイベントを開催できるというベンチマークにもなったと思うのですが……」
「ホンダと組んでいるから、鈴鹿に行くのを楽しみにしていた」
ドライバーのフェルスタッペンはこう語る。
「鈴鹿に行くのを楽しみにしていたんだよ。ホンダと組んでいるから、それはなおさらのことだ」
しかし、その思いは叶わなかった。開催を心待ちにしていたホンダのファンも、中止の決定を受けてこう話す。
「今年はラストイヤーで絶対に見たかったので、本当にショックです」2年連続での日本GPの中止に、田中は悔しい思いを吐露した。
「申し訳ないのと、残念だなというのと、悲しいなというのと、悔しいなという気持ちが全部……そういう感じですね」
(文中敬称略。企業名、肩書きは当時のもの)
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