スポ-ツ選手の使命が試合で勝つことなら、ビジネスパーソンのそれは、仕事で成果を上げること。そんな「ビジネス・アスリート」に必要な、機敏に動ける体づくりのメソッドをEXILEフィジカルコーチにして名だたる経営者たちのトレーニングも担う吉田輝幸さんが紹介する本連載。人の体の動きの根源(コア)である「赤ちゃんの動きのトレーニング」×「筋トレ」×「機能的なムーブメント」の組み合わせで、最短で最大の効果を生む最先端トレーニングを紹介する。まずはすべての肉体活動の基本となる「呼吸の改革」から。
正しい呼吸が疲れない身体を作る!「ブリージング(仰向け)」
「ヨガが流行ったり、マインドフルネスをする人が増えたりして、最近は『呼吸』についての意識が高まっていると思います」
ビジネスアスリートのための最先端トレーニング、トレーナーの吉田輝幸さんが指南する実践初回は、正しい呼吸法。それを「取り戻す」と言ったほうがふさわしい。というのも、「人間は本来、誰に教わることなく自然な呼吸ができるようになっています。でも、多くの人が日頃から『自然ではない呼吸』をしてしまっているのが現状です」(吉田さん)
では、自然な呼吸、自然でない呼吸とは何か。前回、まだ筋肉の少ない赤ちゃんが寝返りやハイハイ、二足歩行などさまざまな動きをスムーズに行えるのは、体のコア(体幹)をうまく使えているからだと述べた。また、コア(体幹)とは腹筋など体の特定の筋肉のみを指すのではなく、呼吸や、立つ、歩くといった人間の体の基本的な動きも含めたベースメントを広く意味するものだという、国内外のトレーニングの最新動向を熟知する吉田さんならではの情報も紹介した。
吉田さんによると、理にかなった正しい呼吸とは「肋骨の内側にあるインナーマッスルである横隔膜を使って行う呼気と吸気」。息を吸うと横隔膜が収縮して腹の下側に下がり、胸郭(肋骨)が開いて肺に空気が入る。つまり始めにお腹が膨らみ、次に胸に空気が入って膨らみ、さらには肺にたっぷり空気が入るので背中の上部まで膨らむ感覚だ。
「これも赤ちゃんの呼吸を見ればわかるでしょう。お腹も胸も大きく動いて、深い呼吸をしています」
言うまでもなく呼吸とは、すべての身体活動の基本となり、深く大きな呼吸ができれば、効率的に酸素をたっぷりと体内に取り込むことができ、あらゆる運動や活動の効率がアップする。
けれども成長するにつれ体のバランスがくずれたり、筋肉や臓器の衰え、ストレスによって呼吸が浅くなり、多くの人が胸郭や横隔膜を十分に使わずに呼吸するようになってしまう。
「これを改め、赤ちゃんにならって人間本来の呼吸を取り戻そうというのが、今回行うトレーニングです。横隔膜を正しく使えるようになると、胸郭の動きもよくなってして胸や背中の位置を正しい位置に保てるので、姿勢がよくなり筋肉のバランスも改善。その働きもアップします」
正しい姿勢で立つだけでも全身の筋肉を使うところ、ここで行うのは赤ちゃんに倣ったトレーニング。寝そべって行うため重力に抗う必要がなく、ラクに実践できるはずだ。
▼ブリージング(仰向け)
目的:横隔膜を稼働させ、インナーマッスルを起動する
部位:横隔膜、胸郭、腹部全全体
〈回数の目安〉5回/1~2分
▼動画レッスンはこちら
Teruyuki Yoshida
EXILEのフィジカルコーチとしてEXILEのパフォーマンスアップに従事し、自らのパーソナルトレーニングジム「PCP」においてパフォーマンスコーチ&ディレクターも務める。正しい身体の使い方、正しい動きによって最高のパフォーマンスを引き出す「吉田コアパフォーマンスメソッド」を提唱。