ドイツの名門時計ブランド「A.ランゲ&ゾーネ」。そのアイコンモデルとして揺るぎなき人気を誇るのが「ランゲ1」コレクションだ。同社の歴史や伝統、独自性を尊ぶ姿勢など、すべての魅力が、ここに集約されている。
デザインコードを変えずに広がる「ランゲ1」の世界
1845年に創業したA.ランゲ&ゾーネだが、東西冷戦下に国営化され、復興したのは1990年になってから。そして1994年の復興第一弾モデルのひとつとして誕生したのが「ランゲ1」だ。
その独創的なアシンメトリックなデザインと手仕事から生まれるムーブメントの美しさが評価され、あっという間にアイコンモデルとなったランゲ1だが、このデザインコードを活かしたまま、シンプル機構からハイコンプリケーションまで幅広くラインナップを増やしているのも特徴である。
厳格なルールのなかでバリエーションを増やしていくためには、卓越した技術力も求められる。それゆえ「ランゲ1」コレクションは、A.ランゲ&ゾーネの技術力がすべて詰まっているといえるだろう。
また多様なバリエーションがあるため、あらゆる職種や社会的立場、趣味趣向にあったモデルが存在する。まさに次の1本を探しているビジネスパーソンに注目してほしい時計たちだ。
「ランゲ1」コレクション9選
1.マスターピース「ランゲ1」
現代のA.ランゲ&ゾーネのアイコンモデルで、1994年にデビュー。黄金比によって導き出されたオフセンター配置のダイヤルレイアウトが特徴で、アウトサイズデイトやパワーリザーブなど、ダイヤル上の表示が重ならないため視認性にも優れる。
ケースは端正なラウンド型だが、ラグを立体的にデザインすることでアクセントを加えている。
2015年には搭載ムーブメントをCal.L121.1に変更して、ケース厚を9.8mmへと薄型化。時計哲学を継承しつつ、着実に進化するマスターピースだ。
2.こだわりが詰まった「グランド・ランゲ1」
「ランゲ1」の大型バージョンとして、2012年にデビューした「グランド・ランゲ1」。
ケース径は41mmなので、ランゲ1よりも2.5mm大きい。しかし単にケースを拡大したのではなく、ムーブメントも新設計しており、黄金比で導き出されたダイヤルレイアウトも大型ケースに合わせてバランスを最適化している。
またムーブメントの直径を大きく設計してパーツ配置を効率化し、薄型化に成功。さらに2022年にはダイヤルと風防回りの設計を見直すことでさらに薄型化。8.2mmのケース厚を実現した。
3.巨大な月も超高精度に動く「グランド・ランゲ1・ムーンフェイズ」
2014年にデビューした「グランド・ランゲ1・ムーンフェイズ」は、時刻表示の下に配置した大きなムーンフェイズ表示が特徴。ゴールド製の月が輝くディスクには数々の星も描かれており、ロマンティックに月の満ち欠けを表現する。
搭載するムーブメントはCal.L095.3で、ムーンフェイズの表示が122.6年で1日分しか誤差が生じないという高精度仕様となる。
機構が加わったためケース厚は増えたが、それでも9.5mmしかないため、ドレスシャツの袖口にもすっと馴染む。華やかな遊び心のある1本だ。
4.小ぶりで可憐な「リトル・ランゲ1」
「ランゲ1」の人気を受けて、1998年にひと回り小さな36.8mmケースの小径モデルが誕生。
当時のモデルのダイヤル装飾はシンプルだったが、2018年からは限定モデルのみに使用していたギヨーシェ装飾のダイヤルがレギュラー化。時刻表示、スモールセコンド、ダイヤルの3ヵ所にフランケ模様を彫り込んでおり、華やかな雰囲気に。
ちなみにアウトサイズデイトの修正は、ケースの10時位置横にあるプッシャーで行うため、ケースのフォルムがすっきりしている。
5.美しいロマンを封じ込めた「リトル・ランゲ1・ムーンフェイズ」
スモールセコンドの下にムーンフェイズ表示を組み込む技術は、2002年デビューの「ランゲ1・ムーンフェイズ」にて確立。その手法をレディスウォッチにも取り入れたのが、2009年にデビューした「リトル・ランゲ1・ムーンフェイズ」だ。
デビュー当時はマザー・オブ・パールのダイヤルを用いた華やかな時計だったが、2017年にリニューアルした際にリトル・ランゲ1と同様に、フランケ模様のギヨーシェ彫りダイヤルへと変更された。
また2021年には星空を思わせるダイヤルのモデルも登場。ダークブルーのゴールドストーンによって小さな星々の輝きを表現している。
6.秀逸な時差表示機能をもつ「ランゲ1・タイムゾーン」
デビューは2005年。グランド・ランゲ1よりも大きな41.9mmのケースを用い、時刻表示などの外側に24都市リングを備えることで、世界中の時刻を表示できるようにした。
操作は簡単で、8時位置のプッシュボタンを押すと24都市リングが1つジャンプし、同時に4時位置の小さな時分表示も1時間分ジャンプ。ここが第二時間帯表示となっており、4時位置の三角マーカーが指し示す都市の時間を示す。
下の写真の場合はニューヨークが7時52分ということだ。メイン時刻表示内にスモールセコンドを収めるなど、かなり高度な時計となっている。
7.空の様子を描き出す「ランゲ1・ムーンフェイズ」
2002年にデビューした「ランゲ1・ムーンフェイズ」は、2017年にリニューアル。デザインコードは踏襲しつつ、スモールセコンドの下にあるムーン表示が大きく進化。
ベース部は「天空ディスク」と呼ばれるナイト&デイ表示となっており、その上にゴールド製のムーンディスクが備わるという二重構造。
天空ディスクは朝から夕方、そして夜へと徐々にブルーが深くなっていき、それにつれてゴールドの月が存在感を増していく。つまり天空で行われている現象を、小さな時計で表現しているのだ。
8.実用性も意識した「ランゲ1・パーペチュアルカレンダー」
「ランゲ1」では伝統的に手巻き式ムーブメントを搭載するが、2010年に自動巻きムーブメントモデルも発表。ダイヤルのレイアウトを左右逆転させることで、手巻きモデルとの違いをつくった。
2021年にデビューした「ランゲ1・パーペチュアルカレンダー」も自動巻きムーブメントを使用しており、手巻きモデルではパワーリザーブ表示だったレトログラード針が曜日表示になる。
またダイヤル外周部の月表示や6時位置の小さな閏年表示など、ランゲ1のデザインコードを活かしながら機能的にカレンダー表示を組み込んでいる。
9.さり気ない気品がある「ランゲ1・トゥールビヨン・パーペチュアルカレンダー」
2012年にデビューした「ランゲ1・トゥールビヨン・パーペチュアルカレンダー」は、A.ランゲ&ゾーネの慎み深さが表れたハイコンプリケーションだ。
前述の「ランゲ1・パーペチュアルカレンダー」とのデザインの違いは、ムーンフェイズ表示の位置と時刻表示内のナイト&デイ表示のみ。
高度な技術を要するトゥールビヨン機構は、あえてダイヤル側には見せず、ケースバックからのみ鑑賞できるようにしている。これ見よがしではない本当の品格を表現したいなら、こういう時計を選ぶべきだろう。
「ランゲ1」は、決して立ち止まらない。
A.ランゲ&ゾーネは、1モデルに対して1ムーブメントを開発しており、ムーブメントの使いまわしはしない。その信念は「ランゲ1」に強く表れている。
そもそもアシンメトリックのデザインは、ケースサイズを変更するだけでもバランスが崩れるため、デザインやムーブメントの開発を、1からやり直す必要がある。
つまり「ランゲ1」の豊かなバリエーションは、デザインや機構に対してあえて厳しいルールを課し、乗り越えていこうと研鑽を重ねた技術者たちの足跡でもあるのだ。
A.ランゲ&ゾーネのポリシーは「Never stand still(決して立ち止まらない)」。そして「ランゲ1」とそのコレクションこそが、その具現者なのである。
問い合わせ
A.ランゲ&ゾーネ TEL:0120-23-1845
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A.ランゲ&ゾーネの真髄に触れる「Lange Haus 2023」
ドイツ語で「ランゲの家」を意味するLange Haus(ランゲ・ハウス)。
A.ランゲ&ゾーネの歴史やイノベーションなど、ブランドへの理解が深まる場となる本イベントは2023年で3年目。今年は、日頃ブティックではなかなかお目にかかれない貴重なモデルや10月末に発表された新作を用意。さらにA.ランゲ&ゾーネで長年商品開発ディレクターを務める、アントニー・ デ・ハス氏がイベントのために来日し、開発秘話とともに新作を紹介した。
会場では他にも、自社開発・製造したムーブメントや、ドイツ本国より取り寄せた過去のアーカイブを含めた約30本に及ぶタイムピースを展示。またエングレーバーも来日し、エングレービングの実演を行った。特別に招かれたゲストたちはA.ランゲ&ゾーネの真髄に触れる時を過ごした。