連載「ヴィンテージウォッチ再考」の第21回は、「アフタ」の店主・牧野弘生氏がセレクトしたIWC「マーク ⅩII」 の日本限定モデルを取り上げる。
“ポストヴィンテージウォッチ”の魅力
“オールドインター”と時計愛好家で呼ばれるIWCのヴィンテージウォッチ。耐磁時計「インヂュニア」を始め、36mm径の軍用パイロットウォッチ「マーク ⅩI」などの人気時計が多数ある。
1994年のバーゼルワールドで発表された「マーク ⅩII」は、「マーク ⅩI」が軍に納入(一部例外もある)していたことに対して、こちらは完全に民生用のモデルとして開発されている。
細かなディテール含め、「マーク ⅩI」を彷彿させる質実剛健なデザイン。ムーブメントに関しては自社製の手巻きムーブメントCal.89から、ジャガー・ルクルト製の自動巻きムーブメントCal.884へと変更されている。ケース径が36mmであることも1990年代らしい。
このモデルはバーゼルワールドの発表よりもいち早く、1993年から日本の市場で限定発売された逸品。限定モデルの特徴に挙がるのが、文字盤の6時位置にブランドネームと同じ明朝体で「AUTOMATIC」と表記されている点である。
IWCに限らず、高級時計の世界で日本限定モデルが展開されていたのは、当時の市場が大きく関係している。1980年代から機械式時計の復権を掲げたスイスにとって、日本は世界第2位のマーケットであり、無視できない存在だった。それゆえ、販売側の意見が非常に通りやすかったと聞いている。
まだヴィンテージと呼ぶには若い1990年代の“ポストヴィンテージウォッチ”と呼ばれる機械式時計は、スイスおよび日本にとって、変動の時代であったことを語りかける。このほかにも面白いプロダクトが眠っているのでチェックしてみてはいかがだろうか。
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アフタ http://after.llc/
■連載「ヴィンテージウォッチ再考」とは
インターネットやSNSの普及からあらゆる時代の時計が簡単に入手できるようになった。そうはいったところで、パーツの整合性や真贋の問題が問われるヴィンテージウォッチの品定めは一筋縄ではいかない。本連載では、ヴィンテージの魅力を再考しながら、さまざまな角度から評価すべきポイントを解説していく。