2021年も高級ウォッチブランドから続々と届く新作情報。その中から、新鮮な驚きや価格以上の満足感が味わえる”活きのいい”モデルを厳選! 連載第90回は、パテック フィリップ《アドバンストリサーチ》フォルティッシモ 5750Pを取り上げる。
従来のミニット・リピーターの限界を突破した世界15本の限定モデル
先日、誰もが予想だにしなかったノーチラス Ref.5711/1Aのフィナーレを飾る、ティファニーとのWネームモデルの発表で世界中に衝撃を与えたパテック フィリップ。2021年は少数精鋭という言葉に当てはまる話題作の発表が続く中、最後の最後で超絶なチャイムウォッチがヴェールを脱いだ。
数ある複雑機構の中でも最も設計の難易度が高い分野のひとつがチャイム機構であり、パテック フィリップは業界随一だと言っても過言でないミニット・リピーター搭載モデルの多彩なバリエーションを擁するブランドとして名を馳せている。
長い沈黙を破り、1989年からパテック フィリップは腕時計式のミニット・リピーターの製作を再開したのだが、その核になったのが、自動巻きムーブメントCal.R 27であった。この機構で新たに開発したシステムは、優れた音質と可能な限り小さなサイズを維持したまま、チャイムの音響を増幅する方法であり、振動膜の代わりに厚さ0.2 mmのサファイヤクリスタル製のウェーハーを振動させるというアイデアを編み出した。さらにウェーハーの中央に、ステンレススチール製のフレキシブルな懸架式サウンドレバーを取り付けることで大きな音響を発生させることを可能にした。
パテック フィリップ《アドバンストリサーチ》フォルティッシモ 5750Pは、その上を行くチャイム機構を搭載した世界15本限定での発売となるスペシャルエディション。
2005年に設立されたパテック フィリップ《アドバンストリサーチ》とは、スペシャリストを集め、最新の技術リソースを完備し、時計製造における高度な研究を行う部門であり、同社の技術革新を担っている。彼らがこの限定モデルに導入した《ƒƒ》(フォルティッシモ)モジュールとは、従来のミニット・リピーターと異なり、ケースの素材に関わらず、同じ音質と大きな音量を保つことができる最新鋭の音響システムである。それを実証するために、ケースには密度が高いことから最も音がこもりやすく、ミニットリピーターのケース素材としては難易度の高いプラチナを採用している。
このモデルならではの放射線状のモチーフを採用した文字盤はヴィンテージカーのスポークホイールから着想を得ている。同一のデザインで統一した6時位置のスモールセコンドは、小さなマーカーが秒針の役割を果たすディスクによって構成されており、ダイナミックな視覚表現を楽しむことができる。
サファイアクリスタルのシースルーバックを覗くと、このモデルのために特別にアレンジされたCal.R 27 PSのプラチナ製のハンマーや偏心マイクロローター、音叉型のサウンドレバーなどが見受けられる。
製造本数が極端に少ないことも含め、世界中の時計愛好家から羨望を集める究極のコレクターズピースがまたひとつ加わった。
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パテック フィリップ ジャパン・インフォメーションセンター TEL:03-3255-8109