かつて「ルンバ」で家庭の掃除を変えた男が、再び世界を変えようとしている。iRobot創業者であり、家庭用ロボティクスのパイオニアとして、約30年以上この分野を牽引してきたコリン・アングル氏は、CEO退任後、新たなスタートアップ「Familiar Machines & Magic」(以下、FM&M)を設立した。

Familiar Machines & Magic。CEO&共同創業者。ロボット掃除機「ルンバ」の生みの親。2024年に新会社を創業。従来のような「タスクをこなすロボット」ではなく、感情知性(EQ)を備え、人に寄り添う”相棒的な機械”の開発を進めている。
人の気持ちを理解し、記憶し、応答できる”ファミリアなマシン”
彼が次に目指すのは単なるロボットの進化ではない。”人と感情的なつながりを持ち、長期的な関係を築ける新しい存在=Familiar”を世に送りだすことだ。
コリン氏が掲げるキーワードは「フィジカルAI」と「感情知性(EQ)」。従来のAIが情報処理に特化していたのに対し、FM&Mが開発するのは実体を持ち、人の気持ちを理解し、記憶し、応答できる機械。つまり「道具」ではなく「仲間」のような存在だ。重要なのは形ではなくタスク。人型にこだわらず、目的に最適なデザインを選ぶ思想はルンバ開発当時から変わらない。例えば家庭では、家そのものがFamiliar的な”パートナー”として振る舞う未来も想定されている。
その実現を支えるのが、AIと再構成可能なハードウェアの融合である。FM&Mではアクチュエーターやセンサーを組み合わせて自在に形を変えるモジュール構造を採用し、実環境とシミュレーションのギャップを埋める独自の設計基盤を開発。来年にはプロトタイプを公開する見込みだという。
また、コリン氏は「ロボット」という言葉にも違和感を抱く。語源は「強制労働」。だからこそ、彼は人に寄り添い、ともに暮らす存在として「Familiar」という新たな概念を提示する。利便性ではなく共感、作業の効率化ではなく”心に触れる体験”へ。日本市場はこうしたテクノロジーを受け入れてくれるはずだ、と彼は語る。
テクノロジーが人間の”感情”と結びつき、生活そのものを変える──。コリン氏の新たな挑戦はロボットの時代を超えた、人と心を通わせる”ファミリアなマシン”を作ること。テクノロジーが「人のパートナー」へと進化する未来を本気で切り拓こうとしている。






