PERSON

2025.06.12

「目指したのは、みんなが憧れるスーパーリーダー」氣志團・綾小路 翔、ピンチを乗り越えた”ヤンキー思考”とは

アスリート、文化人、経営者など各界のトップランナーによる、人生の特別講義を提供するイベント「Climbers(クライマーズ)」。その第8弾が、2025年5月8日、9日の2日間にわたって開催され、ビジネスパーソンを大いに熱狂させた。今回、氣志團 團長の綾小路 翔さんによる特別講義を一部抜粋して掲載。

「木更津ヤンキー文化」の中で決意した「今日から俺たちは…」

小学生の頃は成績も良く、スポーツも出来る方で、さらに児童会長も務めていました。先生たちからも好かれていたと思います。目指したのは、みんなが憧れるスーパーリーダー。

しかし、(学区域の小学校から集まった)中学校に進むと、その地位はリセットされて、またイチから、自分のキャラと人間関係を再構築していくことになるわけです。

というのも、僕の地元、木更津エリアは、昭和から平成に変わる時代でしたけど、「縦社会」という言葉だけでは説明できない「ヤンキー文化」が濃厚な土地で、同学年の「強者たち」の噂は耳にしてましたし、実際怖い思いもしたんです。そして進学した中学校は、周辺の小学校から、特に「モンスター」のような奴らが集結していて、スポーツはもちろん、殴り合いの実戦をしたら敵わない相手ばかり。

しかも同級生だけでも大変なのに、その上にはさらにおっかない先輩たちもいて、壮絶な中学校生活を送ることになったんです。なんとか頑張ってはいくんですけども、この状況下で自分という存在はどのジャンルで勝てるかを考えて、音楽を中心としたファッションとかカルチャーの世界に憧れを抱いて、その道を目指しました。

高校に進学しても、全国的には最盛期を過ぎていたにもかかわらず、僕らのエリアはまだ壮絶なヤンキー文化で、彼らとはうまく関係を築きつつ、自分はひたすら誰にも負けないものを見つけたい一心で、バンドをやることにしたんです。ただバンドをやるんじゃなくて、ミニコミ誌を作ったり、イベントを立ち上げたりして、世の中的にはバンドブームは収束していましたが、夢中になって精力的に活動してました。

学園祭で演奏したら最高に気持ちがよくて、デモテープやバンドのTシャツまで作って、そんなインディーズレーベル「ごっこ」が楽しかったんです。ケンカでは勝てないけど、小学校の頃の自己肯定感がバンド活動で戻ってきました。

そんな生まれ育った木更津から、音楽の世界に夢を抱いて、東京へ出て、とりあえず就職しました。距離的には電車で2時間くらいなんですけど、バンド活動していた自信と決意を胸に勇んで上京したら、地元と東京の文化格差は異世界レベルで、東京には俺らのようなスタイル、社会は皆無だったんです。ガチガチに固めたリーゼントではなく、時代は無造作ヘア。学生服も学ランにボンタンではなくブレザー。

必死になって東京のカルチャーを追いかけたんですけど、いざ「自分のバンド」を始めるにあたって、逆に「学ラン」「リーゼント」で「ヤンキー」を打ち出したんです。それが逆に受けて「お前ら面白いね」って言ってくれるようになって、ライブを見に来てくれる人も増えていったんです。

初期の氣志團は、学ランにリーゼント姿で、歌なしのインストバンド。でも「ヤンキーがやらないことをやる」というコンセプトに、「キャロル」「クールス」「横浜銀蠅」と受け継がれて、大先輩たちが作り上げてきた、名曲揃いの3コードのロックンロールではなく、4つ打ちのディスコビートで、しかもツイストじゃなくて「パラパラ」で踊れる曲を作ろうと思って、できたのが初めての歌入り楽曲「One Night Carnival」です。

ネオヤンキースタイルを確立したいと思ったんですが、最初はメンバーに不評で…しかし予想以上に流行って、長きにわたる代表曲になりました。

綾小路 翔「時代をサバイブする令和のヤンキー論」

「ヤンキー」って聞くと、当然悪いイメージを抱く人も多いと思うんです。世間のルールを無視して、暴力的な行為をする人という。でも多くのヤンキーは、実は言うほど無法者ではなくて、ルールをちょっとはみ出すのが好きなかわいいヤツなんです。

学校が大好き、きちんと出席する。だって本物のアウトローだったら学校なんか行かない。制服だって、ちょっと改造、カスタマイズするけど、基本は着る。悪態もつくけど、上下関係を大切にし、先輩の命令には「イエス」or「はい」で答える。

同級生同士では負けじと気合いを入れて凌ぎを削り合う。「天下」を取るために仲間同士で団結して、あ、僕らにとっての当時の「天下」は、近隣4市(千葉県木更津市、君津市、富津市、袖ヶ浦市)なんですけどね…各々の役割分担、必要な立ち位置を自覚して挑む、僕は武闘派ではなく、決戦前日の電話交渉とか、相手の士気を下げて、丸く収める担当。だからヤンキーという組織は意外と交渉上手で、落とし所を作っていくのもうまいんです。そういう経験が今に生きているかなって思う時があります。

人生はトラブルとピンチの連続です。氣志團をやっていく中で、「もうダメかもな」と思った瞬間は何度もあります。ヤンキーはそういう「ヤバいぞ」という時を、ユーモアで乗り越えます。ピンチにくっだらないことを言い出して、仲間で大笑いするんです。ヤバくなった時こそユーモアを。そして誰もやったことがないことをやってみる。その気持ちで氣志團を、今も続けています。

綾小路 翔/Show Ayanocozey
氣志團は1997年千葉県・木更津のカリスマヤンキー、綾小路“セロニアス”翔を中心に結成されたヤンクロックバンド。ヤンキー文化とパンクロックをミクスチャーした、唯一無比のロックスタイル“ヤンクロック”を掲げ、その大胆かつ破廉恥な風貌とパフォーマンスでライブハウスシーンを席巻し2001年メイジャーデビュー。2025年1月17日より全18公演のホールGIGツアー「シン・氣志團現象」を開催。また、23年ぶりに野音ワンマンGIG「氣志團現象2025 夏の陣 日比谷狂乱"俺らがいちばん熱い夏"」を2025年8月17日に行う。そして、2025年11月15日、16日に「サントリー オールフリー presents 氣志團万博2025 ~関東爆音パビリオン~ powered by Epson」を幕張メッセにて開催決定!

TEXT=川岸徹

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